「無意識のバイアス」こそ、組織の多様性を高める鍵

「無意識のバイアス」は、グーグル、フェイスブック、マイクロソフトほか外資系戦略コンサルでもどんどん研修が義務化されている、多様性を高める鍵として注目の概念だ。日本でもメルカリで研修を導入しており、これから日系企業でもどんどん認識が高まっていくことが予測される。離職率が高い、チームワークが上手く機能していない、社員が自発的な努力をしてくれない…。 これら全ての会社の困りごとを解決する方法である「社内の多様性を高める」ために、必要不可欠となるのがこの「無意識のバイアス」についての理解なのである。

「無意識のバイアス」こそ、組織の多様性を高める鍵

多様性が企業にもたらす「経済効果」とは

企業内の多様性が重要、という話は、これまでも耳が痛いほど聞いている人も少なくないだろう。色々な考えや価値観を持つ人が集まることで、新しいアイディアが出ることは、何となく分かっていても、具体的にどれくらいの効果がどこに現れるのか、を聞いたことは少ないかもしれない。

性別や人種、年齢など属性の多様性を高め、多様な価値観を受け入れることによる経済効果は、さまざま調査において具体的な数値として明らかになっている。

たとえばCorporate Executive Board の2012年における調査1によると、多様性があり、様々な価値観を受け入れている企業は、そうでない企業に比べて、チームのコラボレーションは57%高く、チームへの貢献度も42%高い。また社員が自発的な努力をする傾向が12%高まり、離職率も19%低いという結果が出ている。

つまり、新しいものを生み出すだけではなく、社内のコミュニケーション不全によるムダ業務を削減し、生産性向上を測るためにも、多様性は重要であるということを示している。

役員における女性比率は、業績アップに直結する

多様性を高めるという文脈の中で、「女性が活躍できる職場の提供」が謳われるケースが多い。働き方改革の文脈の中では、「女性活躍イコール人手不足を解消するためのもの」と捉えられがちだ。

実際は、女性が社内に増え、女性の価値を社内で受け入れることができれば、それ以上のことが期待できるのだが、その事実は見逃されがちだ。女性が社内に増え、役員に女性が増えると、企業の業績が上がることがわかっている。

たとえば米国カタリストの調査2によると、Fortune500の企業において、役員における女性比率の高い企業では、低い企業を比較して、株主資本利益率では53%、売上高経常利益率では42%、投下資本利益率では66%高いことがわかっている。

さらに、この傾向は特定の業界ではなく、IT業界から消費財業界まで全ての企業に言える結果となっているのだ。

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多様性を高める鍵、「無意識のバイアス」とは

では、実際に多様性をどのように高めれば良いのだろうか。

私はコンサルタントとしてさまざまな企業と対峙する中で、「多様性のある企業にしたいけれど、優秀な女性は弊社を受けに来てれくれない」、「多様性は増やしたいけど、そんな人材はいない」という話をよく聞く。だが、これは本当に事実なのか、ということをまず聞きたい。

同じ経歴の人でも性別によって、好感度は大きく変わる

少し想像してみて欲しい。

あなたの会社で、経営企画のマネージャーを探しているとする。

東大を卒業し、外資系の戦略コンサルティングファームで7年経験を積んだ人がいるとする。7年の間、2年間は米国の一流大学でMBAを取得しており、いくつかの案件ではチームを率いたことある。こんなピカピカの経歴を持つ人が、あなたの会社の管理職に応募して来た。

この人について、あなたはどう感じるだろうか?

この人が男性だったら、きっと今すぐにでも雇いたいと思うだろう。

では、この人が女性だったら?

雇うかどうか、少しためらってしまうのではないだろうか。

この男女の候補者に対する好感度の差は、実際に行われた実験でも明らかになっている。能力といった面においては、男性も女性も同等に評価されるのだが、男性に対しては、「リーダーシップ力がありそう」とか「一緒に働きたい」と考えるのに対し、女性に対しては、「女性としてこのような経歴を持っているということは、ちょっと自我が強くて付き合いにくそう」とか「チームプレーができなさそう」と受け止めてしまうことが分かっている3。

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「無意識のバイアス」の正体

このように無意識のバイアスとは、人間がステレオタイプに沿って、無意識のうちに判断をしてしまうことを言う。

仕事で成功しているリーダーが男性であれば、それは男性のステレオタイプにぴったりと当てはまるので「一緒に働きたい」と思われるのだが、女性が仕事で成功していることは「女性らしさ」のステレオタイプに当てはまらないため、ネガティブな印象を与えるのだ。

無意識のバイアスは、性別だけではない。年齢、人種などに根ざしたものもある。例えば、会議で同じ内容を話していても、年配の方が話すと内容に説得力があるように感じるのに対し、若い人が話すと情報の内容を疑ってしまう。これも無意識のバイアスである。

本来、無意識のバイアスは誰しもが持っている。脳が大量の情報を処理しなければならず、全ての情報に意識的に判断をすることは不可能であるため、無意識に脳が判断をしている。動物の生存戦略として、危機的な状況を無意識のうちに感知・判断するための能力と言えるだろう。人間にとって必要不可欠なものであり、そのため、全てを取り除くのは難しい。

だが、このバイアスを職場に持ち込んでしまうと、非常に危険なのだ。他者に対して、ステレオタイプに沿った判断を無意識のうちにしてしまい、女性や異なる人種、異なる年齢の人に対して、正確な判断ができず、本当に優秀な人材を取り逃がしてしまう可能性が大きいからだ。

わずか「1%」のバイアスがもたらす多大なるリスク

そして、この無意識のバイアスが社内で「1%」でもあると、多様性のある企業になれないというリスクもある。

1%のバイアスがどのように企業に影響を与えるかを調査した研究によると、バイアスがない企業では全階級において男女の割合が50%ずつと仮定した際に、1%のバイアスは、トップ層の女性の人数を50%から35%まで減少させるということがわかっている。

つまり、1%でも企業内でバイアスを持って評価する人間がいると、女性が経営層に残る確率は非常に少なくなってしまうということを表しているのだ。

そこで「弊社には優秀な女性人材がいない」と言う企業は、もう一度考え直してみてもらいたい。それは本当なのか、と。