男性が育休取得して仕事と育児を両立するメリットは「マネジメント力向上」である

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記事の情報は2017-12-19時点のものです。

厚生労働省は2020年までに男性の育児休暇取得率13%の目標を掲げている。各界の著名人男性が育児休暇を取るニュースも増えたが男性の育休取得率は3.16%にとどまる。男性の育児休暇取得に「メリット」感がないのだろう。今回は「育児休暇の経験がビジネススキルを飛躍的に伸ばす」という事実に焦点を当てた。
男性が育休取得して仕事と育児を両立するメリットは「マネジメント力向上」である

男性が「育児休暇」を取得することのメリットとは

筆者はこの度、勤務する会社の半育休なる制度を活用し、現在進行形で「仕事と育児の両立」に取り組んでいる一人である。その経験から、ある確信を持つに至った。

それは「育児生活はプライベートなもの、育休を取るのは社会活動からの離脱を意味する、とのイメージがあるが、それは完全に間違っている」ということだ。

いやむしろ、ビジネス経験と育児経験には非常に深い共通点がある。このことを指摘することで、男性の育休・育児論に一石を投じたいと思い、筆を執った次第だ。

男性の育児休暇取得率の現状

男性の育児休暇取得率は3.16%、2017年5月には「過去最大」と報じられた。とはいえ女性の81.%に比べると、子を持った男性のうち育休を取得したのはほんの一握りだ。

育休を取得しなかった理由は「育児休暇制度の未整備」や「収入減少」という企業側の体制の問題もさることながら、「職場が育児休暇を取得しづらい雰囲気だったから」「残業が多い、繁忙期だった」も上位にランクインする。

厚労省は2020年までに男性の育児休暇取得率13%の目標を掲げている。いまのペースでは「笛吹けども踊らず」の結果が目に見えているのだが、政府が目標を掲げた以上、企業側も完全無視とは行かないはずだ。

ならばビジネス経験と育児経験には非常に深い共通点があるという事実に焦点をあてて、男性の育児休暇が企業や休暇を取得する社員にとってどういうメリットがあるのか、論じてみるのも悪くなかろう。

男性が育児休暇を取得するとマネジメントスキルが向上する

育児はパートナーにお任せしていたという経営者や管理職の方は多いものだ。また「子どもは、いずれ…」という方が育休のイメージを持てないのは当たり前だ。

まず、育児というプロジェクトについて解説しよう。男性が育児に参加する際、最も優先すべきこと、達成するべき成果の内実とは、母子の健康維持である。

だがしかし、特に子供が夜泣きをする期間において、これほど困難なものはない。

大人は1日を24時間の単位で過ごし、覚醒と睡眠を1回ずつ繰り返すが、乳児は、3時間の周期で、睡眠、覚醒、授乳、排泄を繰り返す。

問題はこれが昼夜の区別がないということで、つまり24時間営業だ。

病院、警察、各種サービス業と、24時間営業のビジネスは存在するが、かならず早番、遅番等のシフトでこれを実現するものである。

単純にこれと比較しても、3時間のサイクルで母乳、オムツ替え、睡眠を24時間繰り返し続けるのは、超人的な話だと思わないだろうか?

それに加えて、生活の維持という観点で、自分を含めて家族の食事に風呂、洗濯と様々なタスクを遂行する必要がある。神ならぬ身の一人の人間のなすこととしては、あり得べからざるトゥー・マッチな業務量だ。

初めて育児を経験する男性は、とかくニューカマーである新生児のお世話にばかり目が行きがちだ。

しかし、家族で唯一”出産ダメージ”を受けていない存在である男性だからこそ注力できることがある。それは、「家庭生活全体」の安寧なるマネジメントをKGIと据え、「母子の健康維持」というKPIにコミットすることだ。

このような視点で取り組めば、男性の育児休暇は組織運営やプロジェクトにおける「マネジメント力強化」に最適な環境なのである。

「母性神話」という虚構

「母親になったのだから、大丈夫なはず」「母親なら、できるはず」

世間一般には「母性神話」のようなものがあって、ともすると、「母は子供を持てば、本能的に何の苦もなく育児を実行できる」というイメージがある。

しばしば、「外で働く男性と家で育児をする女性」のような定型的な構図のうえで、「男は外で辛い思いをして働いているのに、女は家で子供を見ているだけだ。炊事洗濯も含めて完璧にこなし、子育ても問題なく遂行できて当然。それが、家に帰ってみたら、食事の準備もされていない。妻の私への愛情は失われたのではないか」なんて話がある。

(正直に白状すると、私も、一人目の育児をした頃、主に食事の内容の激変ぶりに、同じように感じた経験がある。)

新生児・乳児保育の現場から遠い人間は、つい、そのように思い込みがちだ。筆者は過去一度、その認識を改めたはずだったが、長子が大きくなるにつれて忘れていった。そして今また、"現場"復帰することでこれを思い出している。