男性が育休取得して仕事と育児を両立するメリットは「マネジメント力向上」である

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記事の情報は2017-12-19時点のものです。

厚生労働省は2020年までに男性の育児休暇取得率13%の目標を掲げている。各界の著名人男性が育児休暇を取るニュースも増えたが男性の育休取得率は3.16%にとどまる。男性の育児休暇取得に「メリット」感がないのだろう。今回は「育児休暇の経験がビジネススキルを飛躍的に伸ばす」という事実に焦点を当てた。

新生児育児生活におけるマネジメント「三要素」とは

男性の育児休暇における最重要KPIである「母子の健康維持」を達成するために、問題となるのは「新生児の睡眠覚醒の3時間サイクル」だ。これは大人の生活リズムとぜんぜん違うのである。

母親がこの3時間サイクルに合わせて授乳活動を問題なく展開できるようにするために、筆者は、その支援活動を3つの要素に分けて考えることにした。

(1)母と子の睡眠バイオリズムを把握した上での直接的支援活動
(2)その後方支援活動としての運用オペレーション
(3)それら全般についての企画立案、戦術策定とスケジュールマネジメント

(1)母と子の睡眠バイオリズムを把握した上での「直接的支援活動」

ひとつめの「直接的支援活動」とは具体的に以下のような内容だ。

・食事の供出
・沐浴及びオムツ替え、適宜抱っこ
・妻の睡眠時間の確保
・その他、肩凝り腰痛の解消のためのマッサージ等

これが私の活動の最前線である。この直接的支援活動なくして、十全な授乳は為し得ない。これは、当たり前の話であり、積極的かつ自発的な行動が求められる。

(2)「後方支援活動」としての運用オペレーション

「直接的支援活動」を滞りなく行うためには、日常生活にまつわる諸事、たとえば買い物、洗濯、掃除などをする必要がある。筆者はこれらを「後方支援活動」と位置付けた。

第二子以降の子育ての場合は、長子の送り迎えや面倒見も含まれる。しかも、適切なタイミングと品質であることが重要だ。

また「母親の許容できるクオリティでこれらの活動を展開する」という制約があるという点は要注意だ。

「私ならこうするのに」との感想を持たせてしまうと、それは無用の諍いのリスクを発生させる。まず計画的に品質を担保しているという努力する姿勢を見せ、結果を出し、プレゼンテーションする

生活観もスキルも違う人間なので、そこに追随するのは至難の業、苦難の道であり、コミュニケーション能力も問われることとなる。

子どもがいる生活に夢を抱いている方には、げんなりする話だろうか。だが筆者は育児にまつわるあれこれが、母子を支えるためのみならず、「自身のビジネススキルを磨く絶好のチャンス」だと気づいたとき、育児休暇を取得して本当に良かったと感じ入った。

直接支援と後方支援を下支えする「戦術マネジメント」とは

前述の(1)直接的支援活動と(2)後方支援活動について、最大限パフォーマンスを発揮するためには、たとえば下記が要諦となる。

・栄養バランス、健康状態や精神状態の状態把握
・生活としての楽しさの維持(=調理方法や食事メニューの研究開発)
・調理等の各種家事コスト、原価管理
・時間マネジメント

つまり企画立案、戦術策定スケジュールマネジメントであるが、新生児育児においてはこれが極めて難易度が高い。

子供の3時間サイクルは、文字通り定刻通りであればまだいいのだが、子どもの状態や機嫌は刻々と変わる。戦略を立てるにも常に状況を判断し適宜調整することが必要とされるのだ。

大人と大人の付き合いであるビジネスシーンでは、ここまでの調整は皆無であろう。

必要なときに、ジャスト・イン・タイムで食事を提供し、様子を見て風呂に入れ、母を寝かせる。母子ともに安楽な睡眠が得られている間にその他の家事を進捗させる。

直接的支援と後方支援は、それぞれのタスクによってリードタイムが違う。提供するタイミングはベストな頃合いを見計らいたい。

以上の要件を満たすために、プロジェクトマネジメントにおける進行管理的な機能が必要となる。

18:00 ご飯の給水開始
18:10 野菜の下ごしらえ開始
18:20 風呂の水を抜いておく準備
18:30 炊飯ボタンON
18:40 副菜と作りおき
18:50 メインおかずの作成開始
19:00 配膳開始
19:10 食事の開始
19:20 自身は先行して食べ終わり、洗い物の開始
19:30 家族全員食べ終わる
19:40 洗濯機のボタンをON
20:00 母、授乳
20:10 父と長子の風呂
20:20 洗濯物を干す
20:30 新生児の沐浴

…といった具合で、きちんと書くにはガント・チャートが必要となる。精度としてはおよそ10分単位でのタスク管理が求められるので、ガント・チャートを作成している間に計画修正に迫られるのだが。

ここで必要な食材が不足していたり、睡眠覚醒のタイミングがずれたりする、ときに炊飯ボタンの押し忘れがあって30分無駄にするとか、不測の事態の対処も多い。18時~21時は、少しの誤差が大きな被害を発生させる。毎日が炎上プロジェクトというときもある。

もちろん、毎日これでは精神的にもたないので、土日に食事の作り置き(=先行投資、設備投資、研究開発)をすることで平日の負荷を下げる、という工夫をする。

たまには手抜き(=品質基準の見直し、納期調整)をすることで負荷を下げる。出前を活用する(=外注)ことで楽をする。

このようにタスクを分解して重ね合わせてみると、育児と経営が、非常に類似したものに見えてこないだろうか?