AIはストレスのない未来を作れるか?メンタル管理の重要性とは

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従業員規模50人以上の事業場における「ストレスチェック義務化」から3年。ストレスの状況や働き方が変わったと実感している人は、どれほどいるだろう。成果が見えにくい「メンタルヘルス」は、企業にとって対策の難しさが指摘されている分野でもある。そこで今回は、企業が抱える課題やAIを活用した取り組みまで、メンタルヘルス企業lafoolの結城氏に話を伺った。

中小企業の対策は進んでいるのか?

労働者50人以上の事業場では、2017年6月時点(厚労省発表)で8割の実施が報告されているが、義務化の対象にならない中小企業はどうなっているのか。大企業と中小企業の差について、結城氏は次のように語っている。

「大企業のほうがマネジメントは大変ですが、組織化されている分、意思決定の伝達能力や推進力は強い。文化形成の途上にある中小ベンチャーでは、それが難しい場合もあるのです。中小企業で「うちみたいなちいさな会社は、営業マンを休ませず働かせないと売り上げが厳しいんだよ」という社長の話はよく聞きます。そこにメンタルヘルスの重要性を理解してもらうのは、簡単なことではありません。

だからこそ、データが重要になるのです。健康経営にかかるコストのリターンは3倍であるともいわれていますが、それも含めてデータの根拠を持てれば、中小企業経営者の意識を変えることができると私は考えています。」(結城氏)

データから

この人は何か月以内に何%の確立で離職する
       ↓
辞めた場合の新たな採用や教育にかかるコスト、売り上げの減少はこうだ
       ↓
だからこの人へのメンタルヘルス対策が重要だ

このように、根拠をもって提示できれば、経営者は対策を打たざるを得なくなるだろうと、結城氏はいう。

メンタルヘルス領域は専門性が高く、マネジメントする人材の育成も課題となっている。誰でも簡単に、自社に必要な対策を判断できれば、そのコストは大きく削減できる。

また、中小企業にもストレスチェックの義務化がかかるときは、間違いなく来るという。そしてその時が、メンタルヘルス業界にとっても、大きな変革のときになると結城氏はみている。


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データは本当に正しい答えを導けるのか?

ここで気になるのが、データは本当に正しい答えを導けるのか、という問題である。メンタルヘルスはAIの導入がもっとも難しい領域のひとつと言われているが、その理由もここにあるだろう。

結城氏はこう語っている。

「その課題を解決するために、立正大学や公立はこだて未来大学とも産学連携し、研究を進めています。カウンセリングにAIを導入するのは、まだまだ難しい段階です。人が持つ悩みは多岐にわたるため、それに対して適切な答えを導くためには、膨大なデータが必要なのです。」(結城氏)

またラフールのメンタルヘルスシステム「priskHR」は、勤怠管理システム「ジョブカン」と連携し、勤怠情報とストレスチェックの結果をあわせて判定している。これはストレスチェック・勤怠情報・本人のアンケートの3つの軸で構成されているが、そもそも本人が嘘の回答をした場合、正しい結果は導けないという課題からはじまったもの。AIによる離職リスク判定は他社にはないシステムで、現在特許出願中だという。

データ自体が正しかったとしても、それを正しい形で使えるかどうかはまた別の話である。使うのが人間ならば、そこに偏見や作為が入る可能性もある。しかし、医師や専門家でも難しい判断を助ける材料として、データ収集が重要であることは間違いないようだ。

プラットフォーム構築を目指すラフールの取り組み

ラフールでは、現在メンタルヘルスの領域のデータを集め、AI解析オープンプラットフォームを構築する構想を進めている。

取り組みのひとつとして、フィットビット・ジャパンが提供するウェアラブルデバイス「Fitbit」で生体データを収集する、メンタルヘルスケア専用アプリ「LAFOOL」を5月23日(水)に発表した。

「LAFOOL」は体質改善プログラム「medites™」を提供するメディロム社と共同で開発したもので、睡眠のデータを集めてメンタル状態を可視化するとともに、臨床心理士や心理カウンセラーがパーソナルコーチとして、健康指導を行ってくれるというメンタルヘルスケア専用アプリである。

出典:プレスリリース

これはラフールが取り組むスリープテック(SleepTech)事業の先駆けで、睡眠深度、中間覚醒頻度などを総合的に解析することで、個人のメンタルスコアが表示され、毎日の身体の健康状態を確認できるしくみだ。

※スリープテックとは、睡眠と情報技術を掛け合わせた言葉で、AI等のテクノロジーを用いて睡眠の質を向上させる技術やサービスの総称。

プレスリリース全文はこちら

「priskHR」と「LAFOOL」で収集する情報、健康診断、エンゲージメント、人事評価、遺伝子、適正検査など、さまざまな情報を掛け合わせて、オープンデータ化することで、今後も他業種ビジネスとのマッチングを図りたい考えだ。

「たとえば、プラットフォームで「環境」からのストレスが高いと判定された企業に対し、オフィス空間のデザインや設計をする会社と提携し、社員にとって働きやすい環境へと変えていくといった提案ができるようになる。さまざまな業種とのコラボレーションで、多方面からストレス対策を行うことができると思います。

大事なのは会社が満足する対策ではなく、従業員のストレスをなくすという本質であり、そこを追求することだと思います。」(結城氏)