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すべての仕事には「プロジェクトマネジメント」が必要だ
情報技術が加速度的に進化し、ネットワークとコンピュータが担う領域は広がり続けている。次々とイノベーションが生まれ、考えられないようなスピードで既存ビジネスが廃れていく。
運良くヒット商品を生み出したとしても、あっという間に競合者が登場する。製品・サービスのライフサイクルはますます短い。
そんな現代社会において、ルーティン・ワークではない仕事「プロジェクト」を進める人材が求められている。
書籍『予定通り進まないプロジェクトの進め方』は、さまざまな分野で日々「プロジェクト」に取り組む方々に向けて執筆されたものだ。
今日の社会は、一億総プロジェクト社会、とでも称すべき状況にあります――。そんな一文から本書は始まる。
「プロジェクトマネジメント」という言葉を聞くと、どうしてもSI開発プロジェクトのような大規模な情報システム開発を思い浮かべる方も多いだろう。実際、こうした開発プロジェクトに関しては「PMBOK」に代表される各種方法論が確立され、普及している。
しかし、いまや理系出身者やプロジェクトの専門家でなくとも、ある日突然、プロジェクト的な仕事に従事せざるを得なくなる、ということも珍しくない。
PMBOKのような重厚長大なプロジェクトマネジメント手法よりも、もっと取り扱いやすい実務的なノウハウを体系化できないかと考え、筆者らは「プロジェクト工学」と、それを応用した「プロジェクトの編集」のというコンセプトを考案、提唱してきた。
あらゆることが予定どおりに進まないプロジェクトを遂行するためには「そもそもプロジェクトとは何か、なぜプロジェクトは失敗するのか」ということについて、また「プロジェクトは、いかなる過程や要因によって困難になるのか」の洞察が必須である。
これは、世にあるさまざまなプロジェクト管理のためのフレームワークやツールのどこに問題があるのか、という問題に直結する。いや、正確にいうならば、ツールに問題があるのではなく、ツールの選び方や使い方が、問題なのである。
ChatWorkにBacklogをはじめとしてWBSを作成して遂行していくためのツール/SaaSは世の中に山ほどある。ツールをどう使えばいいのかということに頭を悩ませたことのある人も、多いのではないだろうか。
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プロジェクトは「三つの基本原則」で整理できる
本書では、プロジェクトを困難なものにする要因を「三つの基本法則」の形で整理することによって、プロジェクトというものが、「そもそもうまくいかないようにできているものなのだ」ということから出発する。
第一法則:やったことのない仕事の勝利条件は、事前に決められない
第二法則:プロジェクトにおいては、こうあれかしと考えて立案した施策が、想定を超えた結果をもたらす
第三法則:プロジェクトの過程における諸施策の結果もたらす状況は、即座に次の局面における制約条件となり、ときにプロジェクトの勝利条件そのものの変更すらも要求する
プロジェクトの現場にいる人にとっては、深くうなずける洞察ではないだろうか?
ここから得られる帰結は、極めてシンプルである。すなわち、プロジェクトとはやってみないとわからないということだ。
身も蓋もない話だが、もちろんそこでは終わらない。やってみないとわからないプロジェクトを「失敗」という結論をもたらさないためにどうするか。