シンギュラリティ(技術的特異点)は早まるのか?いつ起こるかと意味を解説

AI(人工知能)が人類の知性を超える段階といわれる「シンギュラリティ」について、いわゆる「2045年問題」の説明とともに、その背景を含めて基本的なところから解説していきます。

シンギュラリティ(技術的特異点)は早まるのか?いつ起こるかと意味を解説

近年は人工知能(AI)に関する技術の発展が目覚ましく、私たちの生活に密着した問題にもAIが関わってくるようになりました。そんななか、AIの研究に関して「シンギュラリティ」という言葉がよく使われるようになってきたのをご存じでしょうか?

これはいわゆる未来学上の概念のひとつですが、これを前提とした議論がさまざまなメディアで注目を浴びています。

そこで本記事では、シンギュラリティの言葉の意味や注目される背景、そしていわゆる2045年問題に関して、基本的なところを解説していきます。

シンギュラリティ(技術的特異点)とは

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人工知能(AI)が発達し、ついに人間の知性を超えることによって起こる私たちの生活上の変化を表した概念です。

もともとは「特異点」のことをいい、物理学や数学の世界で使われる言葉です。人工知能研究の権威であるレイ・カーツワイル博士が未来予測の一環として提唱したことで、テクノロジーの分野でも注目を集めるようになりました。

シンギュラリティ(技術的特異点)はいつ起きるのか

人工知能(AI)の研究は今まさに成長期。掃除ロボットや自動車の自動運転、コールセンターにおける業務サポート、そしてついには感情をもつロボットの登場…といった具合に、AIが私たち人間に近い思考や振る舞いをすることで、私たち自身の生活レベルの向上に役立つことは広く認知されつつあります。

しかし、このままAIの知性が向上し続ければ、ある時点で「地球上の全人類の知性を超える時点が訪れるのではないか?」という疑問が生まれてきます。

AI研究の第一人者であるカーツワイル博士は、この疑問に対して「2045年までにはシンギュラリティに到達するだろう」と述べており、その後は人類が予測できない域に達するだろうとしています。これがいわゆる2045年問題といわれる諸問題の発端となりました。

シンギュラリティはさらに2029年に早まった?

さらにカーツワイル博士は、昨年(2017年)のインタビューで「2029年にコンピューターは人間レベルの知性を獲得する」という趣旨の発言をしています。つまり、これまで2045年にやってくるとしていたシンギュラリティが16年も早まり、2029年問題となる可能性を示唆したわけです。

シンギュラリティがいつ到来し、それが具体的にどういうものであるかは諸説あり、カーツワイル博士以外の研究者もさまざまな提言をしています。しかし最近では多くの研究者が、当初の予定よりも早い段階で変化が起こることを示唆。AIが私たちの生活に大きな影響を与える段階は思いのほか早く到来するという見解も強まりつつあるのです。

シンギュラリティ(技術的特異点)の意味を詳しく解説

ここで、シンギュラリティ(技術的特異点)の意味について、もう少し詳しく触れておきましょう。

シンギュラリティを端的に説明すると「AIが人間の脳を超える段階」ということになりますが、同時に、その後に起こるであろう「AIが人間に変わって知的な生産活動を行うことになる段階」をも暗示し、それが私たち人類の生活を根本から変える可能性を含んでいます。

つまり、人類がこれまで行ってきた技術開発や研究などの知的生産活動を、より優れた知性をもつに至ったAIが担うようになるとともに、それまで考えられなかったスピードでAI自身も自己進化を繰り返し続けることを示唆しているのです。

シンギュラリティ(技術的特異点)が注目される背景

こういった驚くべき「特異点」が注目されるに至った背景には、人工知能の目覚しい発展があることはいうまでもありません。

人工知能の研究は1950年代から認知されはじめ、何度かその限界が指摘されるなど紆余曲折を経た後、2000年代から再び注目を集めるようになりました。特にインターネットの存在を背景としたディープラーニングの発明がAI研究を大きく発展させたといわれています。

ディープラーニングの登場とシンギュラリティ

ディープラーニングはAIが独自に特徴を抽出するディープニューラルネットワーク(DNN)を用いた学習のことであり、研究のためには膨大なデータを必要とします。インターネット技術の発展により研究に必要な大量のデータを活用できるようになったことが、AI技術を発展させる契機となったわけです。

現在では、いわゆるビッグデータの蓄積と、それをAIがディープラーニングによって解析した結果をビジネスに応用するといった試みや、IoTの活用もさまざまな産業で実証実験が行われており、その研究内容も高度化されています。

そういったAI研究の著しい発展の延長線上にシンギュラリティの可能性や脅威が予見されるようになりました。すでにシンギュラリティの担い手たる高度なAIの開発競争がスタートしているという指摘もあります。

シンギュラリティ(技術的特異点)到来後にもたらされる変化

実際にシンギュラリティが到来すると、どういった変化がもたらされるのでしょうか?

すでに説明したように、これに関してはさまざまな研究者が独自の提言を行っており、これまで必ずしも統一的な見解が存在するわけではありませんでした。しかしAIのビジネスへの応用が進むにつれて、特に私たちの「働き方」や雇用環境については、大きな変化が訪れるだろうといわれています。

雇用環境への影響

現在、ビジネスの分野ではさまざまなところでAIの活用が進んでおり、今後さらに幅広い分野でその技術が応用されることが予想されます。たとえば工場の生産ラインにAIが導入されたり、AIによる自動運転技術を利用したタクシーが登場したりするなどです。

そうなると、これまでその職種に就いていた人間は必要なくなる可能性があり、常に正確な仕事をしてくれる「疲れ知らず」のAIにとって代わられる可能性が出てきます。

差し当たっては、既存の定型業務はAIに代替される可能性が高いでしょう。単純労働がAIに置き換わるという説もありますが、機械化にかかる開発コストに見合うかどうかという議論や、人間のように臨機応変な対応や細かな手作業は機械化するにはまだ技術が追いついていないという議論もあります。

しかし、目覚ましいスピードで進化を遂げるテクノロジーを前に働く「人間」は、新しい価値を提供できるよう常にスキルをアップデートしていく努力が必要となる。それだけは断言できるでしょう。

世界のあり方の変化

カーツワイル博士は、その著書『The Singularity is Near』のなかで、シンギュラリティによって「テクノロジーの開発自体がAIにとって代わられる」という趣旨のことを述べています。

そうなると技術の進歩が爆発的に加速し、これまで人類が従事していた知的労働すらも必要なくなる可能性が出てきます。上述の「単純労働」だけではなく、「知的労働」もAIが担うようになるかもしれないわけです。
そうなると、世界の「在り方」そのものが変わるでしょう。一説には、人間が労働する必要性がなくなり、ベーシックインカムのような制度が導入されるのではないかという意見もあります。

人類のあり方の変化

シンギュラリティによって人類のあり方そのものも変化するだろうといわれています。

カーツワイル博士は、これまでSFの世界でしか語られることのなかった人間の「意識」のデータベースへのアップロードや、スマートフォンなどのデバイスなしで通信ができるようになる可能性を述べています。

極端なことをいえば、意識だけをデータベースにアップロードすれば、肉体としての身体は不要と考えることもできます。そうなると、人類の生き方や生命に対する考え方、捉え方が変わってくるでしょう。

当然、このあたりはSFの域を出ないだろうと考える人も多いですが、少なくとも、人間の記憶のデータ化などに関する研究はかなり進んでいるのが現状です。これまで空想の世界だけの話だったことが、目の前の実現となる世界もそう遠くはないのかもしれません。

シンギュラリティ(技術的特異点)に対するさまざまな意見を知ろう

近年、AI技術の進展とともに語られることの多い「シンギュラリティ(技術的特異点)」について説明してきました。

私たちの生活を根本から変える可能性を示唆しているだけに、シンギュラリティに対しては肯定的な意見もあれば、否定的なものもあります。特にSFの世界で見てきたようなことが実現するかもしれないと聞いて、眉を顰める人は少なくないでしょう。

しかし、AIは私たちの働き方や雇用環境には確実に影響を与えますから、そういった技術分野に関しては注視していく必要があります。

今後もさまざまな議論がされることは明らかですから、ぜひ定期的に情報を収集するようにしましょう。シンギュラリティを理解するために役立つ本や映画などもたくさんありますから、まずは自分の興味のある分野からチェックしてみることをおすすめします。