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オマハの賢人とは
投資に興味のある人ならば、一度は「オマハの賢人」の名を聞いたことがあるでしょう。
これは世界一の投資家といわれるウォーレン・バフェットの敬称であり、彼がアメリカのネブラスカ州オマハを中心に生活を送っていることからそう呼ばれるようになったものです。
「オマハの賢人」という呼ばれ方は知らなくても、ウォーレン・バフェットの名前なら聞いたことがあるという人もいるのではないでしょうか。
彼の純資産は800億ドル以上といわれ、世界有数の大富豪です。投資会社バークシャー・ハサウェイの会長兼CEOであり、世界中から尊敬を集める積極的な慈善事業家でもあります。その投資に対する考え方は多くの人に影響を与えており、いまだに資産運用を学びたいという人が後を絶ちません。
バークシャー・ハサウェイの驚異的成長
バフェットが経営に参画したバークシャー・ハサウェイ社は、かつて紡績業を営んでいました。紡績業はその当時すでにアメリカでは斜陽産業。その生産ラインが閉鎖するごとに株価が上昇するという皮肉な現象が起こっていました。
そこに目をつけたバフェットでした。事業転換を図ったほうが株主へのリターンが大きくなることを見抜いていたのです。
同社を完全に買収して経営権を握ったあとは、紡績業から投資会社へと転換することで業績を伸ばし、その株価は1965年に彼が経営をはじめてから約50年に渡り、年間平均リターン(複利)約20%の実績を叩き出しているのです。
ウォーレン・バフェットのこれまで
ウォーレン・バフェットは1930年にアメリカのネブラスカ州オマハで生まれ、世界一の投資家と称されるようになってからも、地元オマハで生活しています。このため尊敬をもって「オマハの賢人」と呼ばれており、87歳になった現在も、その投資哲学は多くの人に影響を与えています。
父親は証券会社を営んでいたといいます。幼い頃から証券関係の者と関わる機会が多く、自身もさまざまな仕事を経験したようです。
はじめて株券を購入したのも11歳のときで、実際に投資を行って経験を積みながら、コロンビア大学のビジネススクールで投資について学んだのち、父親の会社に就職しています。
バフェットとベンジャミン・グレアム
バフェットを語るうえで欠かせないのが、彼の投資の師とも呼ばれるベンジャミン・グレアムの存在です。
グレアムはアメリカの経済学者・投資家で、いわゆる「バリュー投資」の理論を確立させた人物として知られています。1929年のウォール街の株価大暴落とそれに続く世界恐慌を経験したことで、健全な投資とはなにかを研究した結果、1934年に『証券分析』を出版しました。
コロンビア大学で彼の教え子となったバフェットは、グレアムを父親に次いで影響力のある人物として尊敬し、その一番弟子として彼の投資原則を受け継いだといわれています。グレアムの生み出した投資哲学をバフェットが引き継ぎ、その後さまざまな有名投資家が広めたことによって、グレアムはバフェットの育ての親として、またバリュー投資の父として称されています。
グレアムが1949年に発表した『賢明なる投資家』は、今でも投資のバイブルとして読み継がれています。
投資の秘訣
バフェットの生い立ちについて紹介したところで、彼の投資スタイルについて解説しておきましょう。
グレアムの投資哲学を引き継いだバフェットは、なによりも「堅実な投資」を旨としています。投資に関してはさまざまなテクニックが存在しますが、彼はそういった短期的な運用技術よりも、一貫した投資哲学のもとで高いリターンを実現してきた人物といえます。
彼の投資原則は、特に以下の2つのポイントに集約されるでしょう。
バリュー投資
バリュー投資とは、上述のグレアムが提唱しはじめた投資手法で、対象企業の現在の株価が割安なのか、それとも割高なのかを見極め、割安なら買うという方法です。
重要なのは、一時的な値動きではなく、あくまでも対象企業の価値そのものに注目するということです。
毎日の株価に右往左往するのではなく、その企業のそれまでの資産、利益率、配当をはじめ、基本となるビジネススタイルや経営者の質などから本質的な価値を見極め、それが現在の株価よりも安いと判断すれば購入します。
長期の保有
彼の旨とする「堅実な投資」では、上述のバリュー投資によって株を保有したら、原則として長期間保有します。株を長期にわたって持ち続けることで、その企業のもつ本当の価値を市場が正しく評価するようになるからです。
たとえ一時的に株価が低迷していても、そういった本質的なところで価値のある企業であれば、やがて市場がその価値を認め、自然と株価は上昇して投資家に高いリターンをもたらすことになります。
たとえば、上述のバークシャーの保有銘柄はアップルやウェルス・ファーゴ、バンクオブ・アメリカ、クラフト・ハインツ、そしてコカ・コーラといった有名企業であり、これらを長期に保有することにより、年平均で19.7%の高い運用成績を誇ります。
株式市場は短期的に見ると人気投票と変わらないともいえますが、長期的には企業の真の価値を図る計量器の役目を果たすのです。
バフェットの至言
これまでバフェットの投資方法をみてきましたが、ここではバフェットの名言を紹介していきます。投資の一助となる含蓄のある言葉が多くあります。
至言1:「1ドルのものを40セントで買う哲学を学んだ」
さまざまな複雑なテクニックが存在する投資の世界ですが、基本的には安く買って、高く売るだけといえます。その企業の本質を見極め、それが現在の株価より安ければ買い、高ければ手を出さないというバリュー投資の基本に通じる考え方です。
至言2:「株式投資の極意とは、いい銘柄を見つけて、いいタイミングで買い、いい会社で有る限りそれを持ち続けること」
バリュー投資の肝を述べた言葉であり、彼の信条である株式の長期保有について語ったものです。バフェットは常にこのスタイルで投資活動を行っています。
至言3:「簡単なことをやれ」
シンプルですが含蓄のある言葉です。自分にとって簡単に理解できること、つまり「自分が理解できるものにだけ投資せよ」ということです。より多くの成果を生み出そうと自分に合わないことや、難しいことに手を出すのではなく、限られた得意分野に集中せよということでもあります。
至言4:「株式でなく事業を買う」
これまで説明してきた投資原則を端的に述べたものといえます。実際に購入するのは株式ですが、それを発行している企業のビジネスそのものを評価せよということです。バフェットが購入した株式に対しての視座がよく読み取れる言葉です。
至言5:「時代遅れになるような原則は、原則ではない」
これまで紹介した彼の言葉のバックボーンとなる言葉といえます。いついかなる時にも通用するから「原則」なのであって、それは一時的な流行や経済状況に左右されるものではないという彼の考えがよく出ています。バフェットは自身の原則を忠実に数十年守り続け、莫大な資産を積み上げました。
投資以外のバフェットの行動から学ぶべきこと
続いて投資分野以外の彼の活動や特徴について触れておきましょう。彼は投資以外にも慈善活動家としても有名であり、大統領から勲章を受けるなど、多くの人に愛されています。
慈善活動
バフェットの行っている慈善活動のなかで、もっとも有名となったのが「ビルゲイツ財団への寄付」と「ランチオークション」でしょう。
ビルゲイツ財団への寄付
2017年、バフェットは保有する31億7000万ドル相当のバークシャー株式を、ビル・ゲイツとその妻メリンダの設立した財団をはじめ、4つの慈善団体に寄付したと報じられています。これは彼のほぼ全財産を寄付する計画の一環であり、2006年から継続的に寄付し続けてきたなかでも過去最高です。
ランチオークション
バフェットは、アメリカのオークションサイト「eBay(イーベイ)」を通じて、彼とランチをともにできる権利である「ランチオークション」を行っています。これは2000年から開催されているもので、開催されたはじめの2年の落札額は、それぞれ1万8,000ドル、2万5,000ドルでした。
しかし、ITバブル崩壊後に急激に落札価格が高まり、今では300万ドルを超える額にまで至っています。落札されたお金は慈善団体へと寄付されています。
賢人の私生活
最後に、世界中の投資家たちから尊敬を集めているバフェットの私生活や習慣を紹介しておきましょう。
莫大な資産を有するバフェットですが、基本的に倹約家で、その実生活は質素だといわれています。1956年に3万1500ドルで購入したオマハの家に50年以上も住み続けており、デスクにコンピューターはなく、一日の大半は読書をする生活を続けているといいます。
また、コーラが大好物らしく、350ml入りのチェリーコークを毎日5本も飲むのが日課だそう。ポテトチップスやファーストフードも好きなようで、健康を考えればけっしてよい選択とはいえないでしょうが、87歳になる今も世界一の投資家として元気に活動を続けています。
このあたりの庶民派ぶりも人気の秘訣ではないでしょうか?
オマハの賢人から投資を学ぶ
「オマハの賢人」ことウォーレン・バフェットの生い立ちや、その投資哲学について紹介してきました。投資対象の本質を見極め長期で保有するという考え方は、今も多くの投資家に影響を与えています。
彼の投資スタイルは一時的な流行や経済状況に左右されない「原則」といえるものですから、これから投資を始めようと考えている人は、ぜひこの原則をもとに堅実な投資家を目指しましょう。