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再興するフードデリバリー
そこへUberEatsをはじめとしたフードデリバリーサービスが登場し、世界中の都市部を中心に盛り上がりを見せています。
日本国内でも東京や大阪、京都、横浜・川崎、神戸といった都市部を中心にフードデリバリーが可能になっており、従来の店舗からの配達システムから、外部サービスを利用した配達へと変化しています。一時期盛り下がったともいわれていたフードデリバリーですが、さまざまな要因で復活の兆しを見せているのです。
日本ではふるくからそばや弁当などの「出前」文化があり、近年はピザやファストフード、コンビニの宅配サービスも広く利用されてきました。新サービスが次々と登場し、多様化するフードデリバリー市場。本記事では、新たなフードデリバリーサービスの概要をまとめるとともに、今後のデリバリーサービスの展望について解説します。
フードデリバリーニーズが高まる4つの背景
まず、一時期下火になったといわれていたフードデリバリーサービスへのニーズが高まった背景について説明します。
1. テクノロジーの発展でいつでもどこでも注文が可能に
わが国には、昔から「出前」の文化は存在しており、店舗から料理を自宅などに届けてもらうサービスは古くからありました。それがスマートフォンなどのインターネット関連のテクノロジーの発展により、簡単にだれでも注文できるようになったことで、裾野が広がったと考えられます。
具体的なサービスについては後述しますが、日本にもともとあった出前文化に現代のテクノロジーが付加された多様なサービスが展開されはじめています。
2. ビジネスシーンでのニーズが多様化
元来、フードデリバリーは個人が自宅に料理を届けてもらうのが一般的でした。しかし、最近では個人が使うものだけではなくなっており、企業が社員のためにデリバリーを頼んだり、複数の社員がグループ単位でオフィスに料理を運んでもらったりするケースが増加しています。
その背景には、都心のオフィス街を中心に増える「ランチ難民」や、働き方の多様化による「ランチ会」の増加など、ライフスタイルやビジネススタイルの変化によって昼食にデリバリーを選ぶ企業が増えていることが挙げられます。
3. 共働きの世帯の増加
国内全体の傾向として、近年ますます共働き夫婦が増えていることによって、食事に対する時短ニーズが高まっている点もフードデリバリーサービスの利用増加の背景となっています。
独立行政法人である労働政策研究・研修機構が発表している統計情報によると、1980年代に約1,100万世帯以上あった専業主婦世帯は、2017年には約640万世帯にまで減少しており、逆に1980年代に約600万世帯ほどだった共働き世帯は、2017年までに約2倍の1,188万世帯ほどに増加しています。
約40年前には共働き世代の2倍あった専業主婦世帯ですが、近年は世帯数が逆転してしまい、共働き世帯が約2倍になっているわけです。これによって、特に各世帯の食事の用意における出前の利用が増加し、だれでも気軽に利用できるフードデリバリーサービスへのニーズが高まったと考えられます。
4. 細分化ニーズに応じる新サービスの登場
従来のデリバリーサービスは完成した食事を自宅やオフィスに届けてもらうのが一般的でした。
しかし近年は、顧客の細分化したニーズに応えるべく、完成した料理や出来合いのものだけではなく、食材を加工したものをデリバリーしたり、レシピ付きの食材を配達したりとさまざまな種類のサービスが登場していることも、フードデリバリーの利用の後押しをしています。
食材を組み合わて簡単に料理が作れるよう有機野菜の食材宅配を行っているOisixや、資本力と配送網を生かしたAmazonによる生鮮食料品の配達など、従来の出前やケータリングではみられなかったタイプのデリバリーサービスが続々登場しているのです。
スマホがデリバリー市場を動かした
このように、フードデリバリーサービスが増加した背景にはさまざまな理由があります。
しかし、もっとも大きな要因はやはりスマートフォン利用者が増えたことでしょう。いまや買い物や調べもの、ビジネスシーンで必要となる作業のほとんどがスマホで完結できるようになっています。デリバリーサービスもその例に漏れず、アプリから簡単に注文も決済もできることで利用が広がっています。
UberEatsが起爆剤に
スマホによるフードデリバリー利用の起爆剤となったのがUberEats(ウーバーイーツ)です。同サービスは従来の出前のように店舗やレストランのスタッフが出前を行うのではなく、一般人による“出前代行システム”を確立しています。
もともとUber(ウーバー)はハイヤー配車アプリを展開していましたが、そのコンセプトをフードデリバリーにも応用したことで話題になり、その結果、デリバリー市場自体の活性化につながりました。
自転車や原付バイクがあれば、基本的にだれでも配達パートナーになることが可能で、海外ではサービス開始当初から1,000人以上ものパートナーが登録されています。このシステムによって、人件費の問題で出前スタッフを雇えないラーメン店や、喫茶店などの個人店舗でもデリバリーサービスが可能になりました。
UberEatsが話題になったことで、日本国内でもデリバリー市場が再び隆盛の兆しを見せています。
LINEデリマがパワーを見せつけた
7,000万人以上の月間アクティブユーザー数を誇るLINEも、昨年、アプリ上から手軽に注文できるデリバリーサービス「LINEデリマ」を開始しました。人気アプリだけにこちらも話題となり、登録者はサービス開始から50日で150万を突破しています。
主要都市部を中心に展開されているUberEatsに比べ、LINEデリマは東京都以外の地方での利用が盛んといわれており、全体の7割以上を占めているようです。これは多大な知名度と、全国に満遍なく存在するユーザーを誇るLINEならではの特徴であり、UberEats同様に、今後のデリバリー市場をけん引する役割を担いそうです。
花見会場にもデリバリー
また、数年前から、スマホの位置サービスなどを利用して、具体的な住所のない所や、所在が曖昧な場所でも問題なく配達できるサービスが登場しています。これもフードデリバリーの新しい形態といえるでしょう。
今後はファストフードからすしなどの単価の高い料理まで、場所を選ばずにデリバリーしてくれるサービスが続々と登場するかもしれません。