スマートシティとは|IoT時代に広がりを見せる次世代都市

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今後世界人口の70%が都市部に集中すると予測されており、交通網やエネルギー不足などが問題となってくる。そんな中、あらゆる課題解決を目的としてスマートシティに注目が集まっている。各国でどんなスマートシティがあるのか事例とともに見ていく。
スマートシティとは|IoT時代に広がりを見せる次世代都市

世界各地で進む都市のスマート化

近年世界中で人口の都市部への集中が進んでおり、2050年には世界人口の約70%が都市に集中すると予測されている。そこで懸念されるのが、環境問題や電力・エネルギー不足への対策である。こうした中、各国の都市ではIoTを活用し交通網やエネルギーの最適化を行うことで課題解決を目指す「スマートシティ」が増え始めている。

交通渋滞が問題となる都市では、交通量・事故などを検出し信号の切り替えなどを行うことで渋滞を緩和させる仕組みが存在する。また、電力不足や再生可能エネルギー大量導入の対策として、あらゆるセンサーにより収集された情報から、電力の無駄をなくし高効率に供給する方法もある。日本でも経済産業省主導にもと、横浜市豊田市けいはんな市北九州市の4か所それぞれでスマートシティの実証実験が行われ、2018年11月に開催された次世代エネルギー・社会システム協議会(第18回)にてその成果が最終報告された。

スマートシティとは

現在スマートシティとは以下ように定義されています。

スマートシティとは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の先端技術を用いて、基礎インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら、人々の生活の質を高め、継続的な経済発展を目的とした新しい都市。
引用:IoTニュース

あらゆる「スマート」の集合体を示しており、都市ごとに特徴も異なる。スマートシティの類義語に「スマートコミュニティ」や「スマートタウン」などがあり規模に違いが見られることがあるが、概念的に違いはほとんどない。これに対して「スマートグリッド」は次世代送電網と呼ばれ、電力が最適化する仕組みを指すことが多い。

スマートシティ拡大の背景

スマートシティが世界で拡大する背景には、社会インフラの老朽化問題・エネルギー不足・高齢化社会などさまざまな要因があげられる。また、IoTやセンサー、ビッグデータによるリアルタイムでのデータ収集・分析が可能となったことも、スマートシティの実現可能性を押し上げる背景だといえるだろう。

新興国と先進国どちらにおいても、スマートシティの形成を進めるべき社会的背景がある。新興国では、インフラの整備が追いつかず、人口増加に対して電力供給が不足しているといった側面がある。新たな都市形成の方針としてスマートシティが検討されるケースが増えている。

これに対して先進国では、すでに整備されたインフラの老朽化や高齢化社会の対策として導入されている側面もある。既存の資源や再生可能エネルギーを用いて、増加する電力需要を無駄なく効率的に生み出すことが課題となっているのだ。

スマートシティの仕組み

スマートシティの仕組みは大まかには、上記のようにエリアごとにさまざまな技術が導入され複雑につながりあっている。全体を支えるネットワークとして「電力網」と「通信網」の2つがあり、相互のデータをもとに最適なスマートシティ構成される。解決が期待できる問題は多岐に渡り、エネルギー不足解消・CO2削減・人手不足解消・交通渋滞緩和・経済の活性化・災害対策などがあげられる。

世界でリードする欧米諸国や中国

スマートシティの拡大については欧州や米国・カナダなどを中心に進められており、アジアでは中国やインドが発達し急激に拡大している。スマートシティが解決する課題も国の社会情勢に応じて大きく異なってくる。

高速通信と情報発信を実現した事例:ニューヨーク

ニューヨークではスマートシティに関するあらゆるプロジェクトが進んでおり、その中でも特に「LinkNYC」は最も高く評価されている。市内の公衆電話ボックスを高速Wi-Fiの基地にすることで、市内のいたる場所でギガビット通信が可能となるという。また公共施設にスマートスクリーンを設置し、ローカル情報がリアルタイムに配信される仕組みも備わり、市民と観光客ともに必要な情報が得られる街に進化している。

スマートエネルギー開発の事例:アムステルダム

アムステルダムでは省エネルギーの実現のために、市民のエネルギー消費行動を変化させる取り組みなどが行われている。スマートメーターの導入により電力の「見える化」を実現しているほか、再生可能エネルギーや電気自動車の導入も進んでいる。

エネルギーの効率化と国民生活の質向上を両立できるスマートシティ形成には、エネルギーの作り方から使われ方までの徹底した改革が不可欠であると考えさせられる。

人工知能で交通監視を実現した事例:杭州市

杭州市では交通渋滞・違反・事故を減らす監視システムの開発を進める。従来から設置された監視カメラの性能を上げ、アリババが研究を進める画像認識技術などによる画像データ解析と組み合わせることでリアルタイムな監視が実現しようとしている。これが実現すれば交通網の最適化だけでなく、違反の取り締まり強化にもつながり事故の防止にも大きく貢献できる。

日本国内のスマートシティの例

経済産業省が進めている「次世代エネルギー・社会システム実証事業」に選ばれた都市は、神奈川県横浜市、愛知県豊田市、京都府けいはんな学研都市、福岡県北九州市の4都市である。民間主導のプロジェクトもあり実証研究でCO2削減などの成果をあげている。

横浜スマートプロジェクト

東芝によって企業や家庭などの単位ごとの電力供給に対して節電を促され、ピーク電力量の削減や電力の安定供給を実現した。暑い時期や寒い時期など一時的に電力需要が増大すると、それだけ発電量を増やす必要があり電力需要は不安定になる。

そこで電力需要ピーク時に節電を促し、需要の集中を緩和させることに成功し安定的な供給を可能にした。また、これによりピーク時に高騰する電気代を減らすことにもつながり、ユーザーとしても節電と節約が可能となった。

超小型EVシェアリングサービス「Ha:mo」

出典:Ha:mo RIDE 豊田

トヨタ自動車の本社があることで有名な愛知県豊田市では、超小型EVシェアリングサービス「Ha:mo」による実証実験が行われている。超小型EVが各ステーションにあり、ステーション間であれば乗り捨てできるというサービス。EV×シェアリングサービスで利便性とCO2削減を両立できている。現在では東京・沖縄やバンコクなどに実証エリアが拡大している。

柏の葉キャンパスシティプロジェクト

欧州と同じく不動産(三井不動産)主導のもと行われているプロジェクト。地球にやさしい「環境共生都市」、日本の新しい活力となる成長分野を育む「新産業創造都市」、すべての世代が健やかに、安心して暮らせる「健康長寿都市」を3つの指針として、「公・民・学」の連携をベースにしたプラットフォームの構築を目指している。

東京大学の高齢社会の研究拠点も柏の葉キャンパスに設置され、エネルギーだけのスマート化とは違ったアプローチもしている。また千葉大学の予防医学センターも置かれ健康長寿都市としての取り組みがなされている。

IoT接続によるセキュリティへの課題

スマートシティによりメリットや解決できる課題が多くある反面、インフラをIoTでつなげることよるセキュリティへの懸念も増す。スマート化が進めば進むほどシステムの中枢に情報や決定権が集中し、よりサイバーの攻撃の対象となりやすい。個人情報などもデータ化されるため悪用への懸念も大きい。

2018年には、IBMのセキュリティ部門のデータセキュリティ会社のThreatcareの調査チームにより、スマートシティに用いられるセンサーやデバイス・システムに広範囲で脆弱性がある事例が報告されたという報道もあった。システムの根本的な部分に脆弱性があれば致命的な攻撃を受けるリスクも大幅に上がってしまう。

「スマート化」を行うことは同時に「セキリュティ対策の強化」も必要となってくる。今後スマートシティでのシステム導入の前に多面的な視点でのセキュリティ診断が必要となる。

スマートシティの今後

IoT時代の到来により、スマートシティのような仕組みは必要不可欠だと考えられる。スマートシティの拡大にはまだまだ課題が多く、実証実験を行いながら進めていくフェーズだといえる。

しかし世界各地にあるスマートシティの多くの事例を参考にすることで、より有効で安定性のあるシステムを構築できる。環境問題・高齢化問題・セキュリティ問題などさまざまな課題を同時に解決できるようなスマートシティの発展を期待したい。