2019年開始の5Gとは 超高速・超低遅延が劇的に生活を便利に、総務省も活用アイデア募る

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記事の情報は2018-10-10時点のものです。

日本で2019年、次世代移動通信方式の5Gに対応するサービスが始まる。LTEよりはるかに高速なうえ、超低遅延、多数同時接続のモバイル通信が可能となる。今までにない特徴を備える5Gは、遠隔手術やIoT、スマートシティなど、未来の生活を支える基盤技術だ。5Gはわたしたちの生活をどう変えるのだろうか。総務省も活用アイデアを募集している。
2019年開始の5Gとは 超高速・超低遅延が劇的に生活を便利に、総務省も活用アイデア募る

慌ただしくなった5Gの動き

日本での5G開始が1年前倒し、2019年に

次世代の移動通信方式である「5G」の周囲が、にわかに慌ただしくなった。日本では2020年開始の方向で動いてきたが、1年前倒しされ、2019年より順次サービスが始まる。

朝日新聞の報道によると、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手キャリア3社は、まず5G対応端末の貸与で限定的なサービスを開始し、2020年からユーザー所有のスマートフォンで使えるようにするという。具体的な取り組みとしては、2019年秋に開催されるラグビーのワールドカップ日本大会で、NTTドコモが5G端末の無料貸し出しを計画している。また、第4のキャリアとして名乗りを上げた楽天も、2020年に5Gサービスを開始する見通しだ。

2020年には、東京オリンピックの会場で5Gによる最先端のサービスが楽しめるかもしれない。

米国では10月1日にスタート済み

日本における5G開始は、世界的にみると決して早くない。米国の一部地域では、ベライゾン(Verizon)が10月1日に世界初の商用5Gサービス「Verizon 5G Home」をスタートさせている。モバイル対応でなく家庭向けブロードバンド・サービスであるものの、「通常時300Mbps、最高940Mbps」(米ZDNet)という光ファイバー並みの速度で通信できるとは驚く。

もちろん、ベライゾンはいずれモバイル向けサービスを始めるし、米国のほかのキャリアもサービスの準備を進めている。

そもそも5Gとは

標準仕様の策定完了でいよいよ実運用へ

5Gは、日本で現在普及している4G(LTEやLTE-Advanced)の後継技術であり、第5世代のモバイル通信方式に相当する。世界各国の標準化団体が参加する3GPP(3rd Generation Partnership Project)と呼ばれる活動を通じ、仕様が検討されていた。それが2018年6月に標準仕様「5G New Radio(NR)」としてまとまり、内容が確定したのだ。

日本で5Gサービス開始が前倒しされたのも、技術仕様が固まったことや、米国で早くもサービスが始まり、中国や韓国で2019年にも5G商用サービス開始が予定されていることなどに影響されたのだろうか。

特徴は超高速、超低遅延、多数同時接続

5Gは4Gを発展させた技術であるので、当然通信速度が速い。これは分かりやすい特徴だ。これまでも、アナログ方式の1Gに始まり、デジタル方式の2Gから3G、3Gから4Gへと移行する都度、通話音質が良くなったり、動画が美しくなったり、アプリのダウンロードが高速になって時間がかからなくなったり、という効果で高速化を体感できた。

モバイルユーザーが増えたことと、動画視聴など大容量データを扱うサービスの増加により、無線通信トラフィックは増大し続けている。これに対応するには、通信速度を高めなければならない。事実、モバイル通信方式の進化は、このような高速化と大容量化を軸に進んできた。

5Gには、この超高速に低遅延と同時接続という要件が加わる。総務省の資料によると、5Gの特徴は最高10Gbpsの「超高速」、1ミリ秒程度の「超低遅延」、1平方kmあたり100万台の「多数同時接続」らしい。単なる3Gや4Gの発展技術でなく、「新しい特徴を持つ次世代の移動通信システムであり、本格的なIoT時代のICT基盤」(総務省)なのだ。

出典:総務省 / 5G利活用アイデアコンテスト

低遅延と多数同時接続で得られるメリット

低遅延および多数同時接続という特徴により、これまでのモバイル通信だと不可能なサービスも5Gなら実現できる。ただし、高速化と違ってその恩恵は理解しにくいので、例を挙げて説明しよう。

超低遅延でPerfumeのダンスを同期

低遅延とは、データ伝送時に発生する時間的な遅れが少ないこと。5G通信による遅延は約1ミリ秒なので、人間はその遅れを認識できない。5Gの超低遅延性は、1年前にNTTドコモとPerfumeのコラボレーションで制作された映像「【docomo×Perfume】 FUTURE-EXPERIMENT VOL.01 距離をなくせ。」で確かめられる。

この映像は、Perfumeの3人が東京、ロンドン、ニューヨークに分かれてパフォーマンスする姿をリアルタイム合成し、あたかも同じステージで踊っているように生中継で見せたものだ。遠く離れた場所から送られてくる複数の映像を合成する際、遅延は命取りになる。NTTドコモは通信回線の一部に5Gを使って遅延を極力抑え、3人の動きをピッタリ合わせることに貢献した。

ゲームや遠隔医療にも貢献

5Gの超低遅延という特徴は、シビアなリアルタイム性が要求されるゲームの遠隔プレイも可能にする。地球の反対側にいる相手と格闘ゲームで対戦したり、世界各地に散らばる仲間と組んだパーティでVR(仮想現実)空間を共有したりしても、不自然な遅れを感じないだろう。

さらに、高速かつ大容量、低遅延な通信により、遠隔手術のような医療行為も可能になる。たとえば、手術室には患者と手術ロボットだけが入り、離れたところにいる医師が映像を見ながらロボットを遠隔操作して執刀する、といった具合だ。手術までしなくとも、4Kや8Kのように鮮明な映像を介してコミュニケーションできれば、患者をよく観察しながら遠隔問診することも無理なく行える。地域医療と先端医療を結ぶ、被災地や戦場にいる病人とけが人に遠くから医療を施すなど、いろいろな活用が考えられる。

多数同時接続はIoT時代に欠かせない

調査会社IDC Japanが調べたところ、5Gに対しては「IoTデバイスによる膨大なデータ取得/活用」「膨大な数のIoTデバイスの接続」を期待している企業が多かった。1平方kmあたり100万台ものデバイスを同時にモバイル接続させられるなら、確かにあらゆる物が通信するIoT(モノのインターネット)にも対応できる。

逆に、5GでIoTデバイスによる膨大な通信をさばけなければ、スマートメーターの普及や、それを前提にするスマートな都市「スマートシティ」など絵に描いた餅だ。しかも、遅延がなく高速なモバイル通信により、自動運転車やコネクテッドカーなどリアルタイム性を要求されるものも、スマートシティの構成要素として組み込みやすくなる。

高まる5Gへの期待

通信インフラ投資とスマホ市場にも恩恵

5Gへの期待は、新しいサービスに対するものだけでない。IDC Japanの調査によると、縮小傾向にあった通信事業者向けのネットワーク機器市場だが、2018年は前年比7.5%増となり、3年間続いた市場の低迷から抜け出す見込みという。LTEサービス向け投資の一巡で続いていた低迷が、5Gサービス向け投資の影響もあって上向くらしい。

出典:IDC Japan / 国内通信事業者向けネットワーク機器市場 支出額実績と予測、2008年~2022年

また、普及率が頭打ちになり、これ以上の性能や機能など必要ないとされて伸び悩んでいるスマートフォン市場も、5G移行で活気を取り戻す可能性がある。5Gで魅力的なサービスが登場すれば、5G対応スマートフォンへの買い替え需要が喚起されるだろう。

さらに、5Gサービス提供にともなって3Gサービスが終了になれば、フィーチャーフォンやガラケーなどと呼ばれる携帯電話を使っていた層の5Gスマートフォン移行が予想される。

総務省が5G活用アイデア募る

高速化と大容量化に加え、低遅延および同時接続という特徴により、従来だと実用性が低くモバイルでは不可能と思われていたサービスが、5Gによって可能になる。有線回線でないと不可能だったものが、無線化できたらどうなるだろう。今まで想像もしなかった領域がモバイル化される。

ちょうどよいタイミングで、総務省が「5G利活用アイデアコンテスト」を開催する。5Gの特徴をいかした、地域の課題解決、産業振興に役立つアイデアを募集するそうだ。企業だけでなく個人からのアイデアも募るので、5Gで実現される未来を思い描くブレインストーミングとして挑戦してはどうだろう。

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