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進むWebページのリッチコンテンツ化
Webサイト稼働状況の監視サービスを提供しているピングダム(Pingdom)によると、Webページのサイズが年々増えている。引用されたHTTP Archiveのグラフは、世界上位100万サイト以上の平均ページサイズを集計したもので、PC向けサイトとスマホ向けサイトのいずれも増えていることが分かる。
より実感に則した最新状況を確認するため、ピングダムはアクセスランキングの1つである「Alexa Top Sites」から9月15日時点の上位1,000サイトを選び、同社の集計しているデータを分析した。それによると、平均データサイズは2.07MBとなった。中央値は1.4513875MBで、データサイズの大きなページが平均を引き上げていることも分かる。
また、上位50サイトに絞って平均値を求めたところ、データサイズは約1.2MBまで下がった。トップ10には「google.com」「youtube.com」「facebook.com」「baidu.com」「wikipedia.org」「yahoo.com」「twitter.com」などおなじみのサイトが並んでおり、良質なサイトは一般的に軽いためアクセスが増えるとピングダムは指摘した。
データが増える要因は、PCやスマートフォンの性能とネットワークの速度が向上した結果、よりリッチなコンテンツが求められたからでないだろうか。この仮説は、ピングダムの公開した別の調査レポートで裏付けられる。
2016年と2017年の状況を比較すると、Webアクセス時のHTTPリクエスト数は105回から110回へ5つ増えただけだが、データ転送サイズは0.9MBほども膨らんでいるのだ。データの内訳をみると、2016年から2017年にかけてビデオが300%以上増え、Webサイトのリッチコンテンツ化が確実に進んでいる。
ページ表示速度と直帰率の密接な関係
Webページの表現力が高まることは嬉しいものの、データサイズが膨大になって読み込み完了まで長く待たされるのは本末転倒だ。仕事の調べもので閲覧する必要性の高い状況なら辛抱強く待てるが、エンターテインメントや暇つぶしといった目的でアクセスするサイトの反応が悪ければ、ユーザーは見切りを付けて競合サービスへ移ってしまう。
この点は、ピングダムとグーグルが具体的な数値を示して指摘した。
ユーザーが待つのは2秒まで
Webページの読み込み完了までにかかった時間をピングダムが測ったところ、2017年の平均値は3.21秒だった。そして、各Webページの読み込み完了時間とページビュー(PV)数および直帰率との関係を調べると、興味深い事実が浮き彫りになる。読み込み時間が3秒を超えるとPVがガクンと下がり、直帰率が急増したのだ。
読み込みにかかる時間が2秒以内だと直帰率は9%だが、3秒から直帰率が大きく増え、5秒だと38%に達してしまった。このことから、Webサイトから離脱せず閲覧し続けてもらうには、ページの表示を2秒で完了させるというルールを守る必要があるだろう。
3秒を超えると半分以上が離脱
グーグルは、スマートフォン向けサイトを対象に同様の調査を実施した。それによると、モバイルサイト表示速度の改善は進んでいるものの、PC向けサイトに比べるとまだ時間がかかり、15秒という値だそうだ。
ショックなことに、読み込みに3秒以上かかるとアクセス者の53%が閲覧を止めてしまうという。直帰率は読み込み完了時間が長くなるほど高くなり、3秒だと1秒の32%増、5秒だと同90%増、6秒だと同106%増、10秒だと同123%増になる。
グーグルもモバイルサイトの表示速度を重視
ページ表示速度が検索順位を左右
Webページの読み込み完了時間がユーザーエクスペリエンスに大きく影響することは、こうした調査結果から一目瞭然だ。特に軽快に読み進めていきたいモバイル環境では、時間が短ければ短いほどよい。
スマートフォンからのWebアクセスが多くなった現在、グーグルもモバイルサイトの表示速度を重視する「スピードアップデート(Speed Update)」という姿勢を打ち出した。モバイル検索結果の表示順位を決める要素の一つにページ表示速度を採用する、としたのだ。
もちろん、検索クエリとの関連性が高いことが重視される状況に変化はなく、ページ読み込みに時間のかかるサイトでも上位に掲載されることがあるらしい。さらに、ペナルティの科されるサイトは極端に表示の遅い一部のサイトに限られるという。
なお、このスピードアップデートはすでに7月より適用されている。
ページを素早く表示するために
Webページの表示速度をあげる方法として、グーグルは画像とテキストの圧縮を推奨する。コンテンツに圧縮を施すことで、モバイル用Webページの25%はサイズが250KB以上も小さくなり、10%は1MBを超えるサイズ縮小が見込めるとしている。とりわけ、画像を多用することの多い通販、旅行、ヘルスケアといった分野のサイトに大きな効果があるという。
また、Webページでターゲットとするユーザーの居住地域に応じ、掲載コンテンツを切り替える手も考えられる。たとえば、高速な4Gネットワークが普及している日本ユーザー向けにはリッチなコンテンツを使い、そうでない地域へは圧縮を多用したり軽量なコンテンツを使ったり、といった具合だ。
モバイルユーザーに対するエクスペリエンス向上は、ますます重要度が高まっていく。モバイル検索での上位掲載も極めて大切だ。Webサイト運営時のSEO対策において、ページ表示速度への配慮を忘れてはならない。