今、ファンベースが必要な理由~4つの視点から紐解く【セミナー取材・第2回】

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記事の情報は2019-03-05時点のものです。

1月30日、現代経営技術研究所セミナーにおいて、コミュニケーション・デザイナーの佐藤尚之(さとなお)氏が講演を行った。佐藤氏は、企業やブランド・商品が大切にしている価値を支持してくれる人を「ファン」と呼び、ファンをベースに考えるフレームワーク「ファンベース」を提唱している。佐藤氏の講演内容から、第2回は「今、なぜファンベースが必要なのか」について紹介していく。

3.ファンが新規顧客を増やしてくれる

佐藤氏 二極化されている状況で、どちらにも届きそうな方法が1つあります。それが口コミです。友人からのおすすめなんです。

イノベーター理論の左の人たちは、ネットをよく使いますが、リアルでも友だちに会いますし、SNS上でもやりとりをします。右の人たちは、SNSはあまり使っていないですが、特に地方などはリアルな仲間意識や絆がもっと強いです。村社会ならばなおのこと、あっという間に情報はその中で広がります。

口コミの強さは、データでも出ています。エデルマンが日本で調査した結果、もっとも信頼できる情報源は家族や友人なのです。

なぜ家族や友人が、専門家や有名人、インフルエンサーに比べて圧倒的に信頼されるのかというと、家族や友人は価値観が近い人たちだからです。

インフルエンサーマーケティングがもてはやされている今ではありますが、露出を増やすという意味においては僕はとっくに終了していると思っています。この砂嵐のように情報が氾濫する中で、インフルエンサーから情報が回ってきてもほとんどスルーします。

それよりも自分と価値観が近い友人たちがもたらしてくれるものが自分に合う情報なのだと、みんなが本能的にわかっているからです。

類は友を呼ぶという言葉が昔からありますが、要するに友人は同類だということです。似たもの同士、価値観の近い仲間たちなんです。そして、価値観の近い同類が何らかの商品のファンで、それを周囲の仲間に熱意をもっておすすめする。

これが最強です。

ファンが、まわりの人にすすめると影響を受け、また自分のまわりの同類にすすめる、というふうに広がっていく。これが新規の顧客を増やしてくれます。コアファンが熱く語ってくれると、まわりの人の熱量が上がっていく。これまで嫌いだと言っていた人たちが、一気にファンになってくれることも起こります。

広告で興味関心がない人たちを口説くのは本当に大変です。でも、ファンはその情報を喜んで受け取ってくれる。そして、ファンは、新規の顧客を増やすだけでなく、新たなファンも増やしてくれるのです。

4.効きにくくなったキャンペーンの効果をアップさせる

佐藤氏 4つ目は広告などのキャンペーンもファンベースが効果を上げてくれる、ということです。キャンペーンは、広く知ってもらえる、売上が刺激されるなど、短期的に見れば効果があるのは僕も否定はしません。

しかし、これまで話をしたように、生活者に情報は非常に届きにくい状況がある。そして届いたとしてもあっという間に忘れられてしまう。いま、キャンペーンは一過性で瞬間風速的であり、とてももったいないことになっているんです。

たとえば、この図は、いろんな部署が努力してやっている単発の施策を表していますが、これらがそれぞれぶつ切りになって存在し、シナジーを生んでいません。

たとえば社長が記事で取り上げられると、一瞬バズが起きたとしても、すぐに忘れられてしまうので、0に戻ってしまいます。次の単発プロモーションも再び0からスタートし、一瞬で戻るという繰り返しです。この図のようなブツ切り状態では、せっかく予算をかけているのに、非常にもったいないですよね。

それよりも、各施策がそれぞれ「好意」という資産を積み重ね、それぞれの施策をつなげていくことが重要です。

この、積み重なる好意を「ベース」にしましょう、という考え方がファンベースです。20%のファンを大事にすることによって、売上の80%をキープしていく。ここで共感、愛着をどんどん増やすことによって、ファンのLTV(ライフタイムバリュー)が上がり、売上も少しずつ伸びていく。

それをベースにしながら、新規の顧客に対するキャンペーンを載せて、相乗効果を生み出すよう組み合わせていくことが大切です。一瞬興味を持った新規顧客をファンベース施策で巻き込んでいくことです。

単純にぶつ切りのキャンペーンをするのではなく、ベースをしっかり作ったうえでやった方が資産化できるし、つながります。これがファンベースの考え方です。

※続きは、連載第3回「ファンの支持を強くする3つのアプローチ」で紹介しています。

連載第1回「ファンベースとはなにか