ファンの支持を強くする3つのアプローチとは【ファンベースセミナー取材・第3回】

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記事の情報は2019-03-06時点のものです。

1月30日、現代経営技術研究所セミナーにおいて、コミュニケーション・デザイナーの佐藤尚之(さとなお)氏が講演を行った。佐藤氏は、企業やブランド・商品が大切にしている価値を支持してくれる人を「ファン」と呼び、ファンをベースに考えるフレームワーク「ファンベース」を提唱している。佐藤氏の講演内容、全3回の最終回は「ファンの支持を強くするアプローチ」について紹介する。
ファンの支持を強くする3つのアプローチとは【ファンベースセミナー取材・第3回】

第1回第2回と「ファンベース」の基本的な考え方と、今の時代にファンベースが必要な理由について、まとめてきました。そして最終回は、ファンたちへの効果的なアプローチについて、佐藤氏の講演内容を紹介していきます。

全員に好かれようとして、全員を失う

佐藤氏 よく勘違いされるのは、ファンベースはファンを増やそうとするもの、今ファンじゃない人をファンにすることだと、思われることです。しかし、そうではありません。

「今いるファンを大切にしていく」のがファンベースです。全員に好きになってもらおうとすると、全員を失います。例として、バーの話をしましょう。

【あるバーの失敗】

昭和の雰囲気が残るシックなバーで、客層は大人・シニア世代など。売上の80%を20%の常連さんが支えている店です。店主は、このままでは顧客の高齢化で、店が続けられなくなるのではと考えます。そこで、若者や女性にも来てもらえる店にしようと、重厚な扉を明るくし、照明も変え、女性向けのお酒も置くなど変えていきます。

そうするとどうなるか。常連たちは「この店、なんか変わったよね」と、少しずつ離れてしまいます。そして変えたことで一瞬増えた若者や女性客も、もっとおしゃれな、もっと自分に合う店があれば、そちらへ行き、来なくなります。そうして、店は潰れてしまうのです。

常連さんが支持してくれているポイントを大事にしなかったことが、この店の失敗です。逆にそこを大事にしていれば、常連さんの満足度は上がっていきます。

そして常連さんは、自分の後輩など、店の価値を認めてくれる人を連れてきてくれます。そこからまた常連さん候補が生まれ、数パーセントは本当の常連さんになってくれるのです。

常連さんが支持する価値をぶらさずに、広告やメディア露出を行うことで、新しい顧客にもアプローチしていく。

この相乗効果が、ファンをベースにしていくマーケティングです。では、どうやったら常連さんに愛され、足を運び続けてもらえるのでしょうか。

常連さんの支持を強くする3つのアプローチ

佐藤氏 1つ目は、常連さんが支持している価値自体をアップさせること。そうすることで、常連さんの満足度は上がっていき、もっともっと店を好きになってもらえます。

そして2つ目はその価値を他に代えがたいものにすること。昭和の雰囲気の店は他にもたくさんある中で、「俺はこの店じゃなくちゃダメなんだ」という価値を作っていかなくてはなりません。

3つ目は価値の提供元の評価・評判を、アップさせること。提供元というのは、商品で言えば企業ですね。企業がSDGsや震災支援などの社会貢献活動を行うなど、世間で評価・評判が上がっていくと、もちろん常連さんは喜びます。

ただ、ここで注意したいのは、これらの価値をUSP(機能価値)だと思ってしまう人が多いということです。つまり機能価値こそが「他に代えがたい価値だろう」と思ってしまう。しかし、機能価値は必ず陳腐化します。大事なのは情緒価値、感情を喚起することです。

そこで、この3つのアプローチをそれぞれ感情の言葉で置き換えてみます。それが「共感」「愛着」「信頼」です。