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MONETが本格始動、88社とコンソーシアム設立
3月28日、ソフトバンクとトヨタの共同出資会社であるMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ、以下MONET)がオープン・イノベーションを推進するための組織「MONETコンソーシアム」の設立を発表した。
参加するのは、JR東日本、東急、ANAなどの交通各社をはじめ、サントリー、三菱地所、JTB、ファーストリテイリング、みずほ銀行、UFJ銀行など幅広い業界の88社である。
MONETは企業や自治体と連携した実証実験を進めている。その中で多様な課題やニーズに応えるためには、さまざまな事業者がモビリティサービスを共創は不可欠だという。
業界・業種の垣根を超えて連携し、革新的なサービスやビジネスモデルを生み出す「オープン・イノベーション」に、注目が集まっている。
オープンイノベーション推進派は6割超
リクルートマネジメントソリューションズが4月8日に発表した調査データによれば、担当する新規開発事業でオープンイノベーションを推進している企業は6割を超えている。また、イノベーションの創出数と営業利益成長率は相関関係があることも明らかになった。
イノベーションと営業利益の相関関係
同調査によれば、イノベーション数(自社の有力製品・サービスを根本から変えるような新規事業、新技術、新商品・サービス)が多い企業ほど、高い営業利益成長率を維持していると回答している。
このデータから、イノベーションそのものが営業利益を押し上げているとは言い切れない。しかし、イノベーションを追い続ける姿勢を持った企業が競争力を維持できている、ということは言えるだろう。
そしてイノベーションを加速するためには、自社の資産だけでは限界がある。あらゆる枠組みを超え、さまざまな人材や組織が連携する「オープン・イノベーション」が必要なのだ。
オープン・イノベーション活動は64.6%が推進
担当する新規開発業務で「オープン化の方針があるか」の設問では、64.4%があると回答した。また「新規開発において社外連携による成果が見られたか」の設問では、3分の2の企業が成果を含んでいると回答している。
多くの回答者が、オープン・イノベーションを実際に活用し、成果をあげていることがわかった。また推進する派の多くは、「結果を出すスピードを速める」「新しい技術を取り入れる」「用途や市場の開拓」「技術的課題の解決」などが、オープン化のメリットと考えていることも明らかになった。
懸念は情報流出、それでも社外に求めたいもの
オープン化を推進しない理由として多かったのは、「自社の知識・技術の流出懸念」だという。
しかしオープン化を推進する人の多くは、市場の競争状態が非常に激しく、市場の成長率が高い中で、リスクをとってでもオープン化を図る価値はあると考えているようだ。
重点課題として多くあがったのはブランド創造、効果的なマーケティング・販売プロセスの開発、新規顧客基盤の開拓、デジタル技術の進展への対応だ。社内で補いきれないこうしたリソースを、社外から求めたいと考える担当者が多いようだ。
オープン・イノベーション成功の鍵は4つ
同社では、オープン・イノベーションを成功させる鍵を以下のように考察している。
【社外連携の探索活動の観点】
- リスクをとった探索活動
- 外部に開いた組織デザイン
【意思決定や人材マネジメントなど組織プロセスの観点】
- 戦略や自社の強みが明確であるから、自社や連携先企業の意思決定のスピードを速めることができる
- 現場に権限を渡しつつ責任は押し付けない
- 自社のオーナーシップと社内外の対等で自律した関係性により、成功するまでやりぬくことができる
-「協働や助け合い」「自由裁量」「競争」の風土 の4点【担当者が強化すべき行動や能力の観点】
- 発想力
- 論理的に思考・説明する能力
- 巻き込み力(出典:プレスリリース)
ゲームチェンジャーは生まれるか
リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所 所長 古野庸一氏は、大企業とベンチャーの事業提携が急増する背景は、技術の急速な発展や市場の不透明性があると指摘している。
また、こうした時代に必要なのは人事の積極的な関与だという。経営戦略を理解したうえで、イノベーターの発掘と採用、イノベーターを活躍させるための仕組みづくり、既存組織の見直しなどが必要だ。
オープン・イノベーションで、既存の概念や市場を覆す「ゲームチェンジャー」は生まれるか。日本を変える大きなイノベーションに期待したい。