3年で2,500%成長したSaaS企業とは? 日本の高成長テクノロジー企業2021年版
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コロナ禍でも成長著しいテック企業
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対策として、多くの人が外出自粛をしました。その影響で、人の移動に強く依存する飲食業界や観光業界は大打撃を受け、現在も厳しい状況におかれたままです。
その一方、クラウドサービスやSaaSなどの事業を手がける企業は、業績を伸ばしました。他者と会わずに仕事や交流をする必要性が高まり、社会が一気にデジタル化、オンライン化したためと考えられます。
成長著しい技術系企業を紹介するデロイト トーマツ グループの最新ランキング「2021年 日本テクノロジー Fast 50」(※1)にも、ソフトウェアや、SaaSとクラウドサービスを含む通信といった分野の企業が多く入りました。やはり、「AI、SaaS、プラットフォーム運営など、コロナの影響を受けにくいWeb領域の事業を展開する企業の受賞が目立っています」とのことです。
※1 デロイト トーマツ グループ『テクノロジー企業成長率ランキング「2021年 日本テクノロジー Fast 50」発表』,https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20211214.html
SaaS/クラウド企業が多数ランクイン
日本テクノロジー Fast 50は、技術/メディア/通信業界を対象として、過去3年間の売上高を調べ、成長率の高い企業50社を紹介しています。ここではまず、ランクインした企業のうち、BOXIL Magazineで触れることの多いSaaSとクラウドサービスに関係する企業を取り上げましょう。
1位:BEL AIR、3年で約2,500%も成長
SaaS型の人材派遣管理システム「jobs」を手がけ、3年間で2,525.70%成長した、BEL AIRが1位を獲得しました。
同社はそのほかに、AI、ライブ配信やプロジェクションマッピング、3Dサイネージといったエンターテインメント向け技術などを武器にSI/DXサービスを提供し、フィンテック分野にも事業展開しています。
9位:スタメン、前年は成長率1位
9位は、SaaS型の経営支援プラットフォーム「TUNAG」を提供しているスタメンでした。TUNAGは、「エンゲージメント経営」という考え方をベースにして、従業員が企業活動に積極参加する組織の構築を支援する、としています。
今回調査の成長率は449.20%でしたが、前年のランキングでは5,914.1%もの成長を達成し、1位に選ばれました。
16位:吉積ホールディングス、Google Cloud専業でコンサルなど
4位に入った企業は、子会社を通じ、「Google Workspace」「Google Cloud Platform」などの運用サービスやコンサルティングサービスを提供する吉積ホールディングスです。3年間の成長率は265.30%でした。
24位:トヨクモ、SaaSベースの安否確認など
24位のトヨクモは、SaaS型の企業向け安否確認サービスや、サイボウズのグループウェア「kintone」と連携する各種サービスを手がけています。3年間の成長率は、127.00%です。
前年は、成長率180.4%で14位に入りました。
30位:チームスピリット、クラウドで働き方を省力化
30位は、今回で6回目のランクインとなったチームスピリットです。勤怠管理、工数管理、経費精算、稟議(りんぎ)といった職場で必要とされる機能を、クラウドサービスで提供しています。
今回の成長率は98.40%、前年は135.5%で20位でした。
35位:Chatwork、中小企業向けビジネスチャット
35位は、ビジネスチャット「Chatwork」の開発運営を手がけるChatworkです。3回目の受賞で、成長率は86.20%。前年は87.5%で35位でした。
41位:テラスカイ、各種クラウド対応コンサル
41位は、「Salesforce」「AWS」などに対応したSIサービスやクラウドコンサルティングを手がけるテラスカイです。成長率は69.90%。
これまでに8回ランクインしており、前年は成長率91.2%で32位でした。
50位:ENECHANGE、脱炭素をSaaSで支援
50位には、脱炭素をDXやSaaSで支援するサービスのENECHANGEが入りました。
脱炭素SaaSは注目度が高まっていて、マイクロソフトや日立製作所、三菱重工業および日本アイ・ビー・エム(日本IBM)などの大企業も取り組んでいる分野です。CO2排出量の可視化SaaSプラットフォーム「zeroboard(ゼロボード)」を提供しているA.L.I.Technologies(A.L.I.)は、成長率1,014.6%で前年ランキングの3位になっています。
ENECHANGEの成長率は、今回が50.20%、前年が142.6%。前年は18位でした。
AIや注目領域の高成長企業は?
先行き不透明なコロナ禍でも、このように大きく成長している分野や企業は数多く存在します。現在なにが求められていて、将来どのような技術やサービスが必要とされるかを、常に意識し、備えておくことが大切です。
最後に、このところ好調なAI企業と、その他注目分野のランクイン企業を紹介します。
好調なAI企業
特にAIを事業内容として挙げていた主なランクイン企業は、以下のとおりです。
順位:企業 | 事業内容 | 成長率 | 前年の順位、成長率 |
---|---|---|---|
5位:AI inside | AIベースのOCRなど | 932.50% | 5位、469.5% |
14位:HACARUS | 少量データで構築できる 説明可能かつ軽量なAIモデル |
310.40% | ― |
21位:サイバーセキュリティクラウド | AI活用のWebセキュリティサービス | 144.30% | 9位、230.6% |
27位:ダイワ通信 | AIと顔認証技術によるソリューション | 106.80% | ― |
31位:ブレインズテクノロジー | エンタープライズ向けAIソフト事業 | 97.50% | 22位、123.7% |
ドローン、働き方、書類のデジタル化にも注目
順位:企業 | 事業内容 | 成長率 | 前年の順位、成長率 |
---|---|---|---|
11位:センシンロボティクス | 産業用ドローン活用の設備点検や災害対策といったサービス | 427.50% | ― |
13位:ACALL | オフィス管理や情報共有などの機能を提供する「WorkstyleOS」 | 331.60% | ― |
18位:BEARTAIL | 業務書類のデジタル化を支援する各種クラウドサービス | 182.80% | ― |