在宅勤務の導入は目的意識と覚悟をもって
話をヤフーとIBMに戻すと、両社のケースはよく似ている。かつてはIT業界をけん引する存在だった会社が、シリコンバレーを中心とする新興企業の勢いに押され、元気がなくなってしまった。
その立て直しというミッションを負って外からやってきたトップ(ヤフーはCEOのマリッサ・メイヤー氏、IBMはCMOのミッチェル・ペルーソ氏)が、就任1年以内に「在宅勤務の廃止」を通達したのだ。
ここからは想像になるが、両社ともフル在宅勤務を認めるようになった当初はメリットが大きかっただろう。しかし先の3つの壁を放置し、せっかくの人材のやる気やモラルを低下させ、会社に貢献しない集団にしてしまったのではないか。
そうなってしまったものを立て直すには、彼らを一箇所に集めてコミュニケーションの量を増やすことで、チームとしての一体感やクリエイティビティを高めることが必要だと判断したのだろう。
フル在宅勤務の導入には覚悟が必要だ。「なんとなく良さそうだから」とか、「社員が強く希望したから」といった理由でそれを認めると、課題が見えてきたところでストップがかかってしまう。明確な目的があって始めても、時間とともに本来の意図やビジョンが忘れ去られてしまうと、ヤフーやIBMのような結果に陥る。
ここで紹介した3社がうまくいっているのは、フル在宅勤務というスタイルが自分達のビジョンの実現に不可欠だと考え、それを前提にうまくいくやり方を試行錯誤しているからだ。フル在宅勤務の社員がいる、あるいはこれから雇おうという会社は、そこまでの覚悟があるかを問うてみて欲しい。