「日本人らしさ」を活かした個別最適化マネジメントで働き方改革を

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記事の情報は2017-11-24時点のものです。

リクルートで働き方変革プロジェクトに携わったのち家族で世界旅行中のライフシフター佐藤邦彦氏、コラム第2弾では「日本と欧州のメンタリティ」の違いにフォーカス。マネジメントを進化させれば"壁"多き働き方改革も成功できる、そのポイントを語っていただきました。

日本の特徴「同質性を好むこと」は、最大の強みになる

日本は欧州と比較して、異質なものとの対峙経験を得やすい環境か?と問われれば、答えは明らかにNoである。

ドイツ人と日本人のハーフのCさんはドイツの学校が休みの期間、日本の学校に通った。お昼ご飯の時間が12時からと決められている。授業中に席を立つと怒られる。これらにカルチャーショックを受けたそうだ。

だが、日本で育つ多くの人がそれを疑問に思うことは少ないだろう。何でも自分で決めるというよりは、決まったルールに自分を適応させるということに慣れて育つからだ。

では、日本のメンタリティの特徴とは何か。その1つは「同質性を好むこと」だ。

ある種の共通した概念やルールに則って、正解へ近づけようとする思考回路。みんながどうしているか?と周囲がやたらと気になることも、良し悪しでなく一つの特徴であると捉えたい。

なぜならそれは、日本が「個別最適化」のマネジメントへ進化するためのポイントになると考えるからだ。

日本が「個別最適化」のマネジメントへ進化するために

欧州と日本ではメンタリティが異なるのに、何でもかんでも欧州化を目指すのは愚の骨頂である。それこそ逆説的に「一律」の概念にハマって反発を招く。

欧州から学ぶこと、日本の特徴を活かすこと、その両面から進化のポイントを提言したい。

「暗黙のべき論」に気づくこと

日本には多くの「あたりまえ」が存在し、無意識的にそれを正解と捉えがちだ。ライフシフトの著者、リンダグラットン氏も「多くの物事はこれまでの社会が作ったルールや概念。それを再定義する必要がある。」と述べている。まずは、そこに気づく必要がある。

例えば、働き方改革ひとつ取っても「学び直しが必要だ」「リモートワークが必要だ」「副業が必要だ」と言われており、これらは手法として正しいことだと無意識的に捉えられがちだ。

しかしこれらは、企業における事業特性や、個人の置かれている状態によっては必ずしも必要とは限らない。選べる事(環境設定)は重要だが、状況や目的によって個別最適化することが大切だ

学び直しや副業をしたいと思っても時間の制約上できない人もいる。都内でひとり暮らしをしている人は、生活スペースとワークスペースを分けられない場合が多く、"平等に"一律リモートワーク制度を整備しても在宅勤務の方が業務効率が落ちる可能性だって高いのだ。

しかし、無意識的に「あたりまえ」「正しい」と認識している物事に対して「ホントにそうか?」を自問自答し続けるのは極めて難しい。ならば欧州の人達に学び、「まず、そのまま受容してみる」というのはどうだろうか。

例えば子育てで時短勤務のメンバーがいるとする。子育てしながら働いた経験のないマネージャーにとっては「異質なものとの対峙」である。マネージャー自身の母親が専業主婦だったという経験を持つなら、母親は仕事をしないで家にいるべきだという「無意識のあたりまえ」というヴェールをかけて、このメンバーを見ているかもしれない。

「異質なものとの対峙」や「無意識のあたりまえ」にそぐわない物事に対して、「同質性を好む」傾向にある日本人はとかく批判や否定的な態度を取りやすい。直接的な言動に現れていなくとも、無意識的に一線を置きがちだ。

しかしこの時に「彼女は大変なんだな」とまずは受容してみる。そうすると、どうだろうか。

「大変だろうけど、仕事はやりきってね」ではなく、「大変さが分からないから、教えてくれないかな?」という対話に変わる瞬間があるはずだ。

「となりの〇〇さん」の変化がウネリを起こす

「同質性を好むこと」は日本のダメなところとして指摘されやすい。前述のとおり、自分とは違う存在を「よそ者」「自分とは違う人」として排除しがちだからだ。

しかし、うまく活かせば変化を促す武器となる。

例えば多くの会社員にとって、社長が言っていることをイチ従業員が正しく理解することは難しい。ともすれば、遠い存在なので自分には関係ないと思ってしまうこともあるだろう。

一方で、自分のとなりで働く人の変化は気に留まる。身近な同僚と同質であることを好むためだ。マネージャーはこの力学をもっと認識して活かすべきだ。

時短でありながら工夫して仕事をこなした事例。リモートワークをやった時のちょっとした工夫。そんな小さなナレッジにスポットライトを当てると、となりの人には伝播する。そこに、またスポッットライトを当てる。それが、となりのグループに、部へと広がっていく。

その個別最適の変化の積み重ねが、ひいて見ると会社全体の働き方改革に繋がるのではないだろうか。

会社は、従業員が仕事にコミットしやすい環境を提供する。そしてマネージャーが「個別最適化」のマネジメントを実践する。このサイクルが稼働し始めると、働き方改革という大車輪はゆっくりとまわり始める。

そのためには、「違い」を受け入れる(受容する)という第一歩と、「同質性を好む」という日本人の特徴を活かすことだ。この二つが、日本のマネジメントの進化のポイントであると提言したい。

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