BATH(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)によるハイテク都市深センの人材エコシステムとは

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記事の情報は2017-12-25時点のものです。

アジアのシリコンバレーともいわれる深センは中国の経済特区に指定されて以降、世界に類をみないスピードでハイテク都市へと変貌を遂げた。しかもその勢いは増すばかりだ。今回は、その爆速成長を支えるBATH(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)から派生する「BATH系人材エコシステム」について解説する。

BATH系人材エコシステムが、深センの「爆速成長」を支えている

新卒で一括採用して数年かけて育成するのが一般的な日本企業では考えられないような、本家BATHやBATH系が交じり合う多様な人材エコシステムこそ、いま深センの「爆速成長」を牽引している正体だ。

このような人材エコシステムが生まれた背景とはなんだろうか。

深センは、いまでこそ北京、上海、広州と並ぶ大都市だが、30年前には漁村に過ぎなかった。同じく創業都市である北京に比べ国有企業はほとんどなく、下請けの工場や民間企業が経済成長を牽引して急成長をとげてきたという歴史がある。

彼らは、「守り」より「攻め」、スピードを重視し、挑戦を続けることで競争力をつけてきたのだ。

その根底にある思想は深センが掲げる「10大スローガン」だ。

・时间就是金钱,效率就是生命(タイムイズマネー、効率は命。)
・鼓励创新,宽容失败(イノベーションを奨励し、失敗に寛容に)
・来了,就是深圳人(来たらあなたは深セン人)
※一部抜粋して紹介

地元色が強く方言がアイデンティティの一つとなる中国において、北京人、上海人に比べて「深セン人」の定義は特徴的で、ざっくり説明すると、この「10大スローガン」を体現して深センでチャレンジする者はすべて「深セン人」とみなしている。

つまり、中国内外問わず世界中どこから来た人であっても、深センに来てこの地で挑戦する者はみな「深セン人」なのだ。そして深センの人材エコシステムに内含してしまう。

深センの「攻め」の勢いはまだまだ続くだろう。これまでの下請けのポジションから研究開発の拠点へと転換を目指している。そして、このシナリオを主導しているのは深セン市政府だ。

官民タッグの強力な体制のもと研究開発機能強化や新興産業創出が推進されており、人材需要を高めることで、北京・上海に比べ弱いとされる「学」の要である国内有名大学誘致も進み、ますます多様な人材が流入している。

これが企業誘致の吸引力となり、バイドゥやアリババのような深セン以外に本社を置く有力企業も、深センに拠点を作って事業開発や人材獲得に乗り出しているのだ。

「10大スローガン」を体現したイノベーション風土、BATH系が創る深セン特有の人材エコシステムにひかれて世界中から優秀な人材が集まる深センは、平均年齢32歳と極めて若い。

これからも深センの人材エコシステムはさらに多様な人材が集まるクラスターとして存在感を増していくだろう。