リクルート、indeed(インディード)とグラスドア買収でリンクトインと一騎打ち、その先の展望とは

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リクルートは大型の買収によって海外事業を拡大している。業界1位のindeed(インディード)に加え、求人情報の口コミサイト「グラスドア」を買収した。2社は補完関係にあるため、統合をせずに事業継続するという方針を示したリクルート。リンクトインと一騎打ちだけではなく、求人情報の「質と量」を手にし次はAI活用を視野に入れた同社の展望を探った。
リクルート、indeed(インディード)とグラスドア買収でリンクトインと一騎打ち、その先の展望とは

リクルートが求人情報の口コミサイト「グラスドア」を買収

2018年5月、リクルートは米国の求人情報サイト「グラスドア」の買収を発表した。2010年頃から5000億円近くを投資し、企業買収を通して海外戦略を推進してきた同社にとっても、1270億円を投じたグラスドア買収は大型案件といえる。

グラスドアは「求人の口コミサイト」として世界的によく知られている。求職者にも求人広告を掲載する企業側にも、双方にメリットのあるビジネスモデルは秀逸だ。

求職者にとっての利用メリットは、何と言っても「その企業で働く人の生の声」を得られること。従業員が企業の良い点・悪い点を投稿し、求職者が参考にできる情報を提供しているのだ。

自身が採用面接で聞かれた質問や、会社の雰囲気・福利厚生など、実際にその企業で働いていなければわからない内部情報を閲覧できる。

業界・地域・職種ごとの平均給与等の統計があるため、入社時の給与交渉にも役立つ。ECサイトや旅行サイトの口コミ情報を閲覧するような感覚で、応募する前に求人案件を比較検討できるのだ。

また、求人情報を掲載する企業側にとってもメリットは大きい。企業の実情を理解した上で、スキルや文化の合致した求職者と出会える可能性が高まる。

より「質の高い」求職者にアクセスできるのが、企業側のメリットだ。都合の悪い口コミが出回るリスクもあるが、堅調な企業であれば、良い口コミを集めてブランドを築ける。

日本の求人サイトにもスカウト機能と呼ばれる、いわゆるマッチング機能はある。各社が人工知能の導入などしのぎを削っているが、求職者の経歴をベースとしたマッチングである場合が多く、グラスドアのマッチ度は段違いの精度だといえるだろう。

グラスドアは、求人広告の掲載から収入を獲得する。3つのポジションを1か月掲載するのに349ドルといった価格体系だ。およそ50万社の情報が登録されている中で、およそ4000社が有料会員となり、優先的なプロモーションを行っている。

インディード+グラスドア買収でリクルートの独壇場に?

今回のグラスドア買収の価値をより際立たせる存在がある。リクルートが2012年9月に約1000億円で買収した、米国の求人情報サイト「インディード」の存在だ。

インディードは、全世界で月間2億人のユニークユーザーを有する世界最大の求人情報検索サイト。グラスドアは米国において5000万人のユニークユーザーを持ち、2位につけていたため、リクルートは極めて独占的な地位を築いたことになる。

インディードは、他のサイトから求人情報を収集するひとつのウェブページにまとめて表示させる機能を備えるアグリゲーション求人サイトである。世界中のあらゆる求人情報を閲覧できるため、求職者は膨大な求人の中から検索をかけたり、自分の履歴書を登録したりする機能を利用する。

しかも、インディードはマシンラーニングで、求職者が登録した情報以外のパーソナル情報ーたとえば、利用しているデバイスやOS、閲覧履歴など様々な情報を分析して、表示する求人案件を最適化させているという。

企業は、無料で募集をかけるか、有料広告を出稿できる。(もちろんインディードへの表示を拒否する求人サイトも存在する。)

グラスドア買収の価値は、まさにここにある。リクルートはグラスドアとインディードを統合せず、協業する方針を示した。求人情報の「量」を重視したインディードと、企業の内部情報を含めた「質」を重視するグラスドアが補完関係を築くことで、人材市場の刷新を狙っているのではないだろうか。

買収で寡占化が進む人材市場、リンクトインとの一騎打ちへ

人材市場は2000億ドルとも言われる巨大市場だ。20~24%の米国人は毎年職を変えているという調査がある程、活発な状態にある。日本でも、転職や副業解禁の影響で、職探しは大きな市場となってきた。

しかし、人材市場は必ずしも最適化されているとはいえず、企業側・求職者側の双方にとって、最適なマッチングを見つけるのは困難であり、多大なコストがかかっている。

求人情報サイトは買収を繰り返して厳しい生存競争が繰り広げられてきた。インディードと競合するサイト「モンスター」は、2010年にHotjobsを買収したが、2016年には人材コンサルティング会社Randstadの傘下に入った。

求人情報は数が多いほど、企業も求職者も誘引できるため、規模の経済が重要な要素となるのだ。

グラスドアとインディードの「協業」に対抗できるのは、2016年にマイクロソフトに買収されたリンクトインくらいかもしれない。

リンクトインは、ビジネス向けSNSというビジネスモデルを採用する。求人情報を収集するだけではなく、人と人とのつながりから最適な人材と会社をつなげる。

ヘッドハンターも多数在籍し、積極的に求職していない人に対しても、積極的なアプローチが行われている。5億人のユーザーに対し、900万社の企業、1000万件以上の求人が取り扱われる。有料の求人広告に加え、リクルーターや求職者にも有料アカウントがあり、大きな収益源になっている。