ビジネスを動かす「ラテラルシンキング」“脱・ロジカル”水平思考の鍛え方

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ロジカルシンキング(論理的思考)と相互補完的に使われることの多いラテラルシンキング(水平思考)について、基本的な考え方や鍛え方を解説していきます。商品開発や事業企画など、ビジネスシーンに生かせるポイントとは?
ビジネスを動かす「ラテラルシンキング」“脱・ロジカル”水平思考の鍛え方

ビジネスの世界ではいわゆるロジカルシンキング(論理的思考)が重宝され、論理的に物事を考えられる人が優秀だとみなされる傾向が強いのは、多くの方が知っているでしょう。物事の全体像を的確に捉え、体系的に物事を考えていくことは、日々問題解決を迫られるビジネスシーンでは必須の能力ともいえます。

ただ、そういった垂直的な思考に対して、水平的に発想を広げていく思考の重要性も取り沙汰されるようになってきました。これがラテラルシンキングという考え方であり、近年注目されている思考法です。

ラテラルシンキングとは

ラテラルシンキングとは、水平思考とも呼ばれ、自分の頭のなかにある固定観念や既成概念をいったん取り払い、物事をさまざまな角度から考えてみることで発想を広げていく思考法と定義できます。

ラテラルシンキングの意味

ラテラルシンキングはもともと、20世紀半ばにマルタ島の医師・心理学者であるエドワード·デボノが提唱したことで有名になりました。

彼はその著書『水平思考の世界』のなかで、ロジカルシンキングの限界を指摘するとともに、物事には水平的な思考法でしか解決できない問題があると述べ、常識や前提に囚われないことこそが独創的な回答を導き出す唯一の方法であるとしました。

物事を垂直的に考え、だれもが同じ結論に達することをよしとする論理的思考に対して、物事を水平方向に考えることで広がりをもたせ、斬新でユニークな発想を導き出すことがらラテラルシンキングの狙いです。

ロジカルシンキング(論理的思考)との違い

ロジカルシンキングでは、ある前提(ルール)を目の前の事象(事実)に当てはめることで結論を出そうとします。あるいは個々の事象(事実)を観察し、共通項を発見することで、そこに共通する前提(ルール)を発見しようとします。前者が演繹法で、後者が帰納法と呼ばれるやり方です。

一方、ラテラルシンキングではそういったルールに囚われず、さまざまな視点からの自由な発想をすることで問題解決を図ります。したがって、だれもが同じ結論に達することはなく、また正しい答えも一つではありません。

クリティカルシンキング(批判的思考)との違い

また、思考法のなかには「クリティカルシンキング」と呼ばれるものもあります。これは批判的思考とも呼ばれ、自らの考えるプロセスを批判的に検証するための方法として確立されました。前提に間違いはないか、その過程に飛躍がないかというふうに、自分の結論をなるべく客観的に検証し、誤りを未然に防ぐことを目的としています。

それに対してラテラルシンキングは、既成の概念や常識に囚われることなく思考を広げていく方法ですから、結論の誤りにはこだわらず、独創的な発想や新しいアイデアを導き出すための思考法といえます。

ラテラルシンキングがイノベーションを生む?

このように、それぞれの思考法には目的があり、役に立つ分野も違っています。ラテラルシンキングは、主に思考の幅を広げて新しい着想を得たい場合に有効であり、凝り固まっていた思考をクリアにして新しい視点で物事を考えるきっかけとなります。

そのためイノベーションの拠り所となる思考法とも考えられており、商品開発や新しいビジネスのアイディアを考える際にも使われるようになりました。

なぜラテラルシンキングが必要なのか

ラテラルシンキングが注目されるようになった背景として、特にビジネスの現場において変則的な問題・課題を解決する必要が出てきたことが挙げられます。

上述のように、ロジカルシンキングは、正しく考えさえすればだれもが同じ結論に達するように考える方法です。その結論は画一的になりがちで、日々変化するビジネス環境のように、答えが一つとは限らないケースでは対応できないことがあります。

それに対してラテラルシンキングは、独創的な発想やこれまでになかったアイディアを導き出すために有効な方法です。そのため、人とは違った商品を違った方法で扱う必要があるビジネス環境においては必要な思考法となります。

イノベーションを生み出すカギ

商品開発や技術開発の分野では、イノベーションを生み出すことが重要だということがよくいわれます。特に変化のスピードが増している現代のビジネスシーンでは、他社にはない独自の強みや差別化要因を確立することが、生き残るために必須といえるでしょう。

しかし、基本的に人間はこれまでやってきた方法を盲目的に続けようとしますから、どうしても思考の幅が狭くなり、固定観念に囚われてしまうようになります。その結果、これまでと同じような商品アイデアや技術プランしか出てこないというケースは、多くの企業が経験していることです。

そんなとき、ラテラルシンキングによって思考の前提を取り払い、まったく新しい視点から課題に取り組むことによってイノベーションが生まれやすくなります。まったく新しい視点から課題を捉えなおしてみることで、自社の価値観や既成概念に囚われない着想が得やすくなるのです。

ラテラルシンキングを鍛えるには

ラテラルシンキングの特徴について説明したところで、実際に水平的な思考を鍛えるためのコツについて解説します。

ラテラルシンキングの3つのコツ

ラテラルシンキングをスムーズに行うには、3つのコツがあるといわれます。すなわち「前提を疑うこと」「抽象化してみること」「セレンディピティ」の3つです。

前提を疑う

ロジカルシンキングでは、ある前提を目の前の事実に当てはめて結論を出しますが、その前提そのものを疑ってみることが、水平的思考(すなわちラテラルシンキング)では重要となります。

これまでやってきたこと、当たり前だと思っていたことの背景はどこにあるのか、何を根拠にその結論を出したのかをあらためて考えてみましょう。そのうえで、その前提となっている価値観やルールが正しいのか検証するとともに、その前提に囚われない発想ができないか考えてみるのが有効です。

抽象化

抽象化とは、簡単にいえば「物事をこれまでと一段高い視点で考えてみる」ことを意味します。つまり見方を変えてみるということですが、物事の本質は何かを探ってみることでもあります。

「注目すべきところはどこか?」「もっとも重要な部分は何か?」を考え、それを軸に発想を展開させてみましょう。これによって本質を外さずにさまざまなバリエーションを生み出すことが可能になります。

セレンディピティ

セレンディピティとは、偶然に出会うことや、予想外の発見をすることをいいます。つまり偶然に出会ったもの、体験したことから積極的にヒントを得て、それを目の前の問題や課題に当てはめて解決の糸口を探ってみるといったアプローチです。

これによって閃きを得やすくなり、想定していなかった斬新なアイデアや、問題解決の糸口を発見する可能性が高まります。

鍛えるには例題を解くべし

ラテラルシンキングを鍛えるには、実際に例題を解いてみるのが一番よいといわれています。上述の3つのコツを生かしながら、さまざまな分野の問題を自分なりに解いてみることで、応用力が身につくとともにスムーズに発想の幅を広げるためのコツを感覚としてつかめるようになります。

以下では、そういった例題が掲載されているおすすめの本を紹介しておきますので、ぜひ手にとってみてください。

ラテラルシンキングに関するおすすめ本3選

1. ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門

木村 尚義
あさ出版
売り上げランキング: 15,857

2. 3分でわかるラテラル・シンキングの基本

山下 貴史
日本実業出版社
売り上げランキング: 100,284

3. 水平思考の世界

エドワード デボノ
きこ書房
売り上げランキング: 104,805

ラテラルシンキングを研修で学ぶ

ラテラルシンキングを身に着けるには、実地で学べる研修を利用するのも有効です。実際に行われているラテラルシンキングの研修について、いくつか紹介しておきます。

新しい発想を出す力を養う研修

ラテラルシンキングの概要を学ぶとともに、実際にラテラルシンキングを使って新しい発想やアイディアを生み出すワークを1日かけて行う研修があります。これまでのロジカルシンキングとは異なる柔軟なものの考え方が可能になります。eラーニングを用いて自宅で学習できるところもあります。

中堅社員や幹部候補向けに問題解決力や企画力を向上させる研修

入社してから数年経った社員や幹部候補生向けに、ラテラルシンキングを用いて問題解決力や事業企画力を養成する研修もあります。基本的な考え方を座学で学んだ後は、ひたすらワークショップで実践的な課題をこなしていきます。

3つの思考法をまとめて学ぶセミナー

「ロジカルシンキング」「クリティカルシンキング」「ラテラルシンキング」の3つの思考法をまとめて学ぶセミナーもあります。それぞれの思考法の特徴とメリット、利用すべき状況について学び、それぞれ適切な場面で効果的に使えるように訓練します。それぞれの思考法の強みを理解し、適宜使い分けられる柔軟性が身につきます。

ロジカルとラジカルで企業の課題解決に向き合おう

ロジカルシンキングと対照的に扱われることの多いラテラルシンキングについて、基本的なところから解説してきました。

既存の問題点を詳らかにすることに大してロジカルシンキングは有効ですが、日々変化し続けるビジネス環境では力不足なこともあります。そんなとき、ラテラルシンキングによって硬直化した思考を柔軟にすることで、新しい発想やアイディアを出しやすくなります。

どちらの思考法が優れているかということではなく、適切な場面で柔軟に使い分けることが重要です。それぞれのメリットを理解し、どちらの思考法も使いこなせるようになれば、精度の高い意思決定や継続的な発展を見込めるでしょう。