経営理念とは?ビジョンとの違い、目的・作り方・3つのメリットと事例

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記事の情報は2018-07-12時点のものです。

経営理念には、会社の判断基準、価値観などが込められています。本記事では、経営理念・企業理念とビジョンとの違い、経営理念を作る目的と作り方からメリットまで網羅的に解説します。経営理念の具体的な事例も紹介。経営理念を作る際、他社や大手企業の理念を参考にするのも一案ですね。
経営理念とは?ビジョンとの違い、目的・作り方・3つのメリットと事例

経営理念とは

経営理念とは、創業者が作る普遍的な「価値観」や「考え方」、「存在意義」を示している経営観です。ビジネス用語のひとつで、クレドやフィロソフィと呼ばれることもあります。経営理念は、経営判断の基準となることもあれば、価値観が共有できるかといった採用基準となることもあります。

経営理念は企業が従業員・顧客・社会に対して表明するものなので、これを実行することで社会的信頼を得やすくなるでしょう。組織として価値観を共有することで、経営理念が求心力を持ち、結束力の強い企業となるためにも必要です。

また、明確に「存在意義」や「価値観」を打ち出すことで、企業価値や企業ブランドの向上にもつながります。

経営理念を示す目的

経営理念により経営者の考えや信念を社内外に示すことができます。また「企業の存在意義」、「目指すべき方向性」といったことに対しての明確な答えでもあるので、従業員にやるべきことを理解させ成果につなげられます。経営理念を社外に表明することで、社会的責任を示し社会的信頼を得られます。

経営理念とビジョンとの違い

経営理念をもとに作られるのが、経営ビジョンです。経営理念がなければ、経営ビジョンは作れません。

経営理念は、「会社が何のために存在するのか」といった思想的な概念を示しています。経営ビジョンは、経営理念をもとに具体的に企業としてのあるべき姿、目指すべき目標に落とし込んで「青写真」のような目に見える形にしています。

経営理念に込めた「思い」を、どう具体化していくかが経営ビジョンに描かれているといえます。

経営理念を作る3つのメリット

経営理念を作るメリットを3つ紹介します。1つめは、経営戦略や方向性の判断基準が明確になること。2つめは、企業としてあるべき姿や将来像を共有できること。そして3つめは、従業員のモチベーションが向上することです。詳しくみてみましょう。

経営戦略・方向性の判断基準が明確になる

経営理念は、「経営姿勢」、「行動規範」、「存在意義」などの形で表現されています。経営戦略や企業の方向性が明確にされているので、従業員が同じ方向を向きやすくなり、パフォーマンスの最大化につながります。

実際に麗澤大学が実施した「経営理念はパフォーマンスに影響を及ぼすか」
という調査では、「経営理念の内容を深く理解することをきっかけにして、経営理念の文言に含まれているイノベーションや革新を実践しようとする傾向が強まってくる」と結論付けています。

将来像を共有できる

企業としてのあるべき姿を示し、長期的な目標を設定することで、従業員たちは自分たちがどのように努力していけばいいのかが見えてきます。

 

経営理念によって従業員は同じ将来像を共有でき、チームワークもよくなり組織力も向上します。また企業の将来像が具体的に描かれていれば、従業員も経営理念を実践しやすくなります。

従業員のモチベーションが向上する

リンクアンドモチベーションが開催している「モチベーションカンパニーアワード2017」で1位になったLIFULL(受賞時社名はネクスト)は、一番大切にしていることは「経営理念の共有」だとしています。

経営理念を掲げたものの、それを体現化することの難しさは、どの企業も悩まされることです。しかし、経営理念を浸透させることで、企業と従業員の間に信頼関係が生まれ、従業員のモチベーションが上がります。

経営理念の作り方3つのポイント

経営理念の作り方とは?企業理念を作る際の3つのポイントを紹介しましょう。1つめは、目的理念と行動理念を意識すること。2つめは、追求すべき3つの観点をバランスよく保つこと。3つめは、全従業員を巻き込み、全社に浸透させていくことです。

2つの「理念」を意識する

経営理念は実践できなければ、ただの飾り物と化してしまいます。実践するには「何をどうしたらいいのか」がわかるような理念でなければなりません。そのためには、「目的理念」と「行動理念」を意識して作る必要があるでしょう。目的理念は企業のあるべき姿を、行動理念は目的理念を実現させるための行動基準です。

3つの「追求」を意識する

利益だけを追求して、人間性や社会性の伴わない企業は顧客満足度をあげることができず淘汰されるでしょう。逆に人間性や社会性が高い企業でも、利益が悪ければ倒産します。事業を継続的に成長させるためには、「人間性の追求」、「社会性の追求」、「経済性の追求」の3つのバランスが大切です。

この3つがバランスよく保たれている「企業としてのあるべき姿」を示せるように、意識して作ることが必要なのです。

全従業員を巻き込む

経営理念は、全従業員で共有する価値観です。マネジメントをする幹部層だけが知っていればよいというものではありません。経営理念を求心力として、従業員たちを同じ方向に向かせるためには、従業員一人ひとりにその経営理念が浸透する必要があります。

経営理念を作る過程から従業員を巻き込んで当事者意識を持たせたり、全従業員とグループディスカッションなどを重ねたりして、より良いものを作ることが大切です。

有名企業の経営理念5選

これから有名企業の経営理念5つを紹介します。

KDDI

KDDIは以下のように企業理念を示しています。

KDDIグループは、全従業員の物心両面の幸福を追求し、お客さまの期待を超える感動をお届けすることで、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します。

出典:KDDI 企業理念

「第1章 目指す姿」「第2章 経営の原則」「第3章 仕事の流儀」「第4章 行動の原則」「第5章 人生の方程式」の5章編成から作られていて、別途「行動指針」も制定されています。行動指針から人生の方程式まで、非常に具体的に書かれているのが特徴です。

TORAY

TORAYは以下のように企業理念を示しています。

わたしたちは新しい価値の創造を通じて 社会に貢献します
出典:TORAY 企業理念

「お客様のために、新しい価値と高い品質の製品とサービスを」
「社員のために、働きがいと公正な機会を」
「株主のために、誠実で信頼に応える経営を」
「社会のために、社会の一員として責任を果たし相互信頼と連携を」
出典:TORAY 基本経営指針

このように東レでは、4者に対して経営基本方針を掲げ、社会的責任と存在意義を示しています。

また、「安全と環境」、「倫理と公正」、「お客様第一 」、「革新と創造」、「現場力強化」、「国際競争力」、「世界的連携」、「人材重視」の8つの行動指針が示されています。

エン・ジャパン

エン・ジャパンは、「人の成長」に焦点を当てた基本理念を掲げたうえで、以下のように事業理念を示しています。

「人」、そして「企業」の縁を考える
出典:エン・ジャパン 事業理念

「縁を作る」ではなく「縁を考える」としているのは、良縁が悪縁になったり、悪縁が良縁となったり、めぐり合わせの後に縁の姿は変わっていくからだとしています。「人と人、人と企業、企業と企業」の縁を考え続けることが、さまざまな可能性を生み出します。縁の先にあるものを考え続けることを、エン・ジャパンでは理念に掲げています。

ちなみにエン・ジャパンの社名は、この「縁(エン)」から付けられました。

村田製作所

村田製作所は以下のように企業理念を示しています。

技術を練磨し
科学的管理を実践し
独自の製品を供給して
文化の発展に貢献し
信用の蓄積につとめ
会社の発展と協力者の共栄をはかり
これをよろこび
感謝する人びとと
ともに運営する
出典:村田製作所 経営理念

また経営理念とは別に、新市場・新商品・事業領域を切り拓いていくための理念として、「Innovator in Electronics」を掲げています。

ダイキン

ダイキンは以下のように経営理念を示しています。

1.「次の欲しい」を先取りし、新たな価値を創造する
2.世界をリードする技術で、社会に貢献する
3.企業価値を高め、新たな夢を実現する
4.地球規模で考え、行動する
5.柔らかで活力に満ちたグループ
6.環境社会をリードする
7.社会との関係を見つめ、行動し、信頼される
8.働く一人ひとりの誇りと喜びがグループを動かす力
9.世界に誇る「フラット&スピード」の人と組織の運営
10.自由な雰囲気、野性味、ベストプラクティス・マイウェイ
出典:ダイキン グループ経営理念

150か国以上で事業を展開しているダイキンは、国内ではなく、世界規模の展開を高く意識していることが経営理念からうかがえます。

経営理念=企業の譲れない価値観

経営理念には、普遍的な企業の価値観が示されています。原理原則、企業の譲れない価値観です。

企業で働く従業員は多種多様な価値観を持っています。しかし、経営理念で「ものの見方」、「考え方」を共有することで、組織力の向上につなげられるのです。

さまざまな会社の経営理念には、「社員の満足度」、「顧客満足度」、「社会貢献」の3つが入っていることが多くあります。社員・顧客・社会の3者への貢献度がバランス良く保たれている会社が、成長できる”あるべき”企業の姿といえます。