目次を閉じる
ランチ難民とは
職場の周辺に飲食店が少なくランチタイムは混雑することなどから、昼食をとり損ねてしまいかねない「ランチ難民」。主にオフィスが集中しているエリアで問題化しています。
飲食店情報を提供しているぐるなびの調査によると、昼食環境に不満を感じている人は43%、月1回以上昼食を摂れない人は36%にのぼるといいます。
多くの場合、昼休みは45分~1時間程度。混雑するエレベーターを待ち、混雑する飲食店に並んでいては、昼食を食べる時間を満足に確保できません。また空いている店を探すのも一苦労。午後に向けてリフレッシュするはずが逆に疲れてしまい、労働生産性が下がってしまうとして問題視する企業もあります。
「ランチ難民』という言葉が生まれるほど、昼食を満足にとれないビジネスパーソンが多くいます。ランチ難民問題を解決しランチタイムを有効に使えるようにすることは、働き方改革に向けても喫緊の課題だと考えられています。
ランチ難民が増加する背景
そもそもなぜランチ難民問題が生じてしまうのでしょうか。
原因の一つは昼休みの設定時間。多くの会社が12時から13時を昼休みの基本タイムとしており、この時間に昼食をとる人が集中します。そのうえ職場周辺に飲食店が少なければ混雑は避けられません。
また飲食店を利用できない人たちをフォローしていたのが、弁当の路上販売です。しかし2015年10月、東京都は食中毒の発生を防ぐために路上販売の衛生管理基準を厳しくし、届出制から許可制に変更しました。
路上販売が営業許可制となり販売カーが減少したことも、ランチ難民増加に拍車をかけたといわれています。
ランチ難民を解決する5つのサービス
ランチ難民という言葉が作られるほど、多くの人が昼食に困っています。しかしこの問題は、昼時に食事の需要があるということでもあります。需要があるところにはビジネスが成立します。ここからは、ランチ難民を救うべく登場した5つのサービスを紹介します。
自販機で弁当を注文できる「宅弁」
サントリーの子会社サントリービバレッジソリューションとぐるなびが提携して始めたサービスです。
日替わり弁当を午前10時までに職場に設置された自動販売機で注文・支払いをすると、近隣の飲食店が12時までに、作りたての弁当を職場に届けてくれます。また弁当を注文すると出てくるコインを使うと飲料を10円引きで購入できるサービスも。
両社は自動販売機の設置数増や飲料の販売促進も狙い、東京都内からエリアを拡大して2020年までに1,000台の設置を目指しているとのことです。
トラックとスペースを結ぶ「TLUNCH」
スタートアップ企業Mellowは、路上販売をするフードトラックと販売スペースをマッチングするサービス「TLUNCH(トランチ)」を提供しています。
ビル所有者は空きスペースを貸し出すだけで収入が入り、フードトラックの経営者はたくさんのオフィスが入っているビル周辺で販売できるので、集客が見込めます。
和食から多国籍料理までいろいろなジャンルのフードトラックが曜日ごとに販売場所を変え、購入者が店やメニューに飽きないような工夫もなされています。路上販売が減少したなかで、ランチ難民にとっては救世主的なサービスといえるかもしれません。
デリバリー型社員食堂「シャショクル」
「シャショクル」は「デリバリー型社員食堂」をコンセプトに、企業と契約して日替わりで弁当を届けてくれるサービスです。事前にヒアリングを行って企業の要望に合ったメニューが届けられるので、満足度も高いと評判です。
また注文個数が多ければ販売スタッフを派遣して対面販売をしてくれるサービスもあり、企業側はテーブル1台分のスペースを用意するだけでよく料金精算などのオペレーションは発生しません。
導入費・固定費は無料でトライアルもあるので、導入のハードルが低い点もメリットだそう。メニューは4,000種類あり、有名店のお弁当もあるのでコンビニ弁当との差別化もはかられています。
定額テイクアウトサービス「POTLUCK」
テイクアウトの予約サービス「POTLUCK」では、月額定額制でスマーフォンなどからメニューと受け取り時間を予約すると、店舗で受け取れます。2018年9月から都内で始まったサービスで、1食600~680円で人気店のメニューを食べられるとあって、開始前から注目されていました。
POTLUCKではまず30日間有効なチケットを購入、登録されている店舗の中から事前に予約をしておくと、並ぶことなく食事を受け取れます。
飲食店側の導入コストや掲載費用は不要で、テイクアウト専用の容器も用意されています。店の認知を拡大する機会を作りディナーへの集客につなげたい狙いがあります。
社食サービス「オフィスおかん」
「オフィスおかん」はオフィスに冷蔵庫と専用ボックスを設置し、定期的におかずを補充するサービス。常温と冷蔵の食品があり、およそ3か月で商品ラインナップが入れ替わります。
「おかん」という名が示すように、季節感を大切にし健康に配慮した和食の総菜を中心にそろえられています。価格は一律100円。専用の集金箱で料金を回収します。
福利厚生としても人気があり、利用している企業は累計1,200社にまで増えました。2014年3月のリリース以降数度の資金調達を実施しており、2018年8月には楽天などから新たに7億円を調達。累計調達額は約10.5億円になるといいます。
進むランチタイム変革
飲食店以外で昼食をとれるようにと、ランチ難民問題に着目したさまざまなサービスが登場しています。加えて昨今の働き方改革の流れを受け、ランチタイムを有効に活用したいという人も増加。ビジネスのランチタイムは変革の時を迎えています。
ここからはランチタイム変革の流れを、ランチ難民問題とその対策に関連し紹介します。
健康経営には「食」が重要
健康経営とは、社員の健康が経営面に大きな影響を与えるという考えをもとに、社員の健康の維持・増進の取り組みをすすめる経営手法のことをいいます。
ランチ難民のように昼食を満足に食べられなかったり、十分な栄養や休憩を取らなかったりすることが続くと心身ともに不健康になる可能性が高く、体調悪化やうつ病などで休職する事態をも招きかねません。
そこで多くの企業が食に着目。社食で健康に配慮した食事を提供したり、外部事業者の栄養指導を受けさせたり、昼食環境改善につながるサービスを取り入れたりと、さまざまな取り組みを行っています。
宅弁、シャショクル、オフィスおかんなどのサービスも健康経営の一貫として活用し、ランチタイムに課題を抱える従業員のストレスを軽減しています。
ランチタイムを自由に活用したい
食品メーカーのフジッコが行った調査では、76.8%が「ランチタイムには食べるだけではなく自分の好きなことをしたい」と回答しています。「昼活」という言葉も聞かれるようになるほど、昼休みの1時間を有効に使いたいという要望が増えているのです。
昼活では社外の人とランチを食べて交流したり、英会話や資格の勉強などのスキルアップにつなげたり、睡眠、運動、カラオケといった仕事から離れたことをしたりして、活用しようとしている人がいます。
ランチ難民対策として登場したサービスは、職場で効率よく昼食をとれるため、結果としてビジネスパーソンの「ランチタイム変革」につながる可能性もあるのです。
ランチ難民対策で業績アップ?
飲食店が少なく混雑するといった背景から主にオフィス街で問題になっている「ランチ難民」。ここをビジネスチャンスととらえ、弁当の路上販売をマッチングするサービスや職場で食事を手軽に購入できるサービス、宅弁のような“進化型デリバリーサービス”など、新たなサービスが次々と登場しています。
これらのサービスは昼食環境の改善でもあり健康経営を見据えた福利厚生面からも注目されています。また働き方が変わるなかで増えている、昼休みを自由に使いたいというニーズにも応じるものです。
昼食をとるのにストレスを伴う、満足に食べられないといったランチ難民の課題を解決し積極的に昼休みを活用できば、仕事の生産性向上につながるかもしれません。社員の生産性向上によって企業の業績アップも期待できるのです。