正社員・月給20万円でも「最低賃金以下」に堕ちる日本

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2018年の最低賃金は全国加重平均で26円上昇しました。このままいくと、来年には首都圏の時給は1000円を超える見込みです。これをアルバイトだけの問題と捉えている方は要注意。今回は、正社員の月給に視点を向けて最低賃金を考えたいと思います。

正社員・月給20万円でも「最低賃金以下」に堕ちる日本

最低賃金、来年は1,000円を超える見込み

10月、今年も最低賃金の改訂が発表され、順次適用されています。東京都は985円に、大阪府は936円に、全国加重平均では26円の上昇です。引き上げ率に換算すると、毎年3%以上の上昇傾向。来年には首都圏の時給は1,000円を超えると予想されています。

最低賃金は都道府県労働局長が決定、公示することにより確定するため、その効力が生ずる発効日は各都道府県によって異なります。仮に3日が発行日である場合、それが賃金計算期間の途中であっても最新の最低賃金が適用されるのは3日以降です。

つまり、このタイミングで、最低賃金よりも給料が低い場合が問題となります。使用者は、最低賃金法に基づき最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。仮に、最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。また、最低賃金法には違反する使用者に対する罰則も定められています。

上昇し続ける最低賃金。月給で働く正社員や契約社員も、時給換算してみると意外とギリギリだった(あるいは抵触していた)というケースが、いま増えているようです。

最低賃金はなぜ上がる?

最低賃金額が決められる基準は3つあります。地域別に(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して決められます。特に「労働者の生計費」については、労働者が健康的で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。

2019年10月には消費税増税も控え、しばらくは最低賃金上昇は続くと見られます。次章から、正社員の最低賃金算出の方法や注意すべきポイントを解説していきます。

最低賃金の適用対象外となるケースもある

本題に入る前に、最低賃金の適用対象外となるケースもあるので、説明しておきましょう。

特定(産業別)最低賃金は、特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されるため、18歳未満又は65歳以上の方、雇入れ後一定期間未満の技能習得中の方、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。

一方、地域別最低賃金は、セーフティネットとして原則すべての労働者とその使用者に適用されます。例外的に、次の労働者について、最低賃金を一律に適用させることが雇用機会を狭めるおそれなどがある場合に限っては、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件に個別に最低賃金の減額の特例が認められています。

  • 特例の対象となり得る労働者

(1)精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
(2)試みの試用期間中の方
(3)基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
(4)軽易な業務に従事する方
(5)断続的労働に従事する方

逆に言えば、いかなる理由があろうとも、労働局長の許可がない限り地域別最低賃金を下回ることはできないということです。

正社員が気を付けたい、最低賃金の抵触とは?

さて、本題です。正社員の最低賃金は、以下の方法で算出できます。

月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

例えば、東京都内の企業に勤める人の場合、月給いくらで最低賃金ラインとなるのでしょうか?

(例1)
・勤務地:東京都内
・勤務時間:9:00~18:00(休憩1時間)
・休日:土日祝日

この場合、【東京都の地域別最低賃金985円×1日の所定労働時間8時間×1か月の所定労働日21日=165,480円】となり、月給約165,000円が、最低賃金を上回るギリギリの水準ということになります。

ただし、ここで初任給20万円だから大丈夫と思ってしまうのは危険です。もう何歩か踏み込んで、最低賃金をみていきましょう。

正社員の収入が「最低賃金以下」になる理由

正社員の最低賃金を考える際には、月給に最低賃金の対象とならない賃金を含んでいないか確認が必要です。

  • 最低賃金の対象とならない賃金

(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

そう、上記を含んで月給が提示されている場合は、これらを差し引いた月給で最低賃金を算出しなければなりません。特に、(3)の時間外割増賃金については要注意。毎月決まった時間分を定額で支払っているケース(みなし残業)はこれに該当します。

みなし残業手当等の名称で基本給と別に支払っている場合も、基本給に含んで支払ってる場合もありますが、いずれも(3)同様に最低賃金の対象とはならない賃金なのです。

例えば、先ほどのケースに戻って見てみましょう。

(例2)
・勤務地:東京都内
・勤務時間:9:00~18:00(休憩1時間)
・休日:土日祝日
・月給に毎月40時間分のみなし残業手当を含んでいる場合

みなし残業手当相当額は最低でも【985円×時間外割増率1.25×40時間=49,250円】となり、最低賃金に抵触しない最低ラインは【165,480円+49,250円=214,730円】となります。

求人広告をみていると、正社員の給与を月給210,000円~としている会社、給与にみなし残業分を含んでいる会社は結構ありますよね。通勤手当◯円込みなどの求人も少なくありません。

月給20万円代だからといって油断は禁物ということです。繰り返しになりますが、最低賃金は上昇の一途を辿っています。毎年、最低賃金と給与額を比べてチェックする必要がある正社員や契約社員は、今後も増えていくと予測されます。