さよなら大画面、スマホもケータイも超小型・薄型へ?Jellyにカードケータイ新端末続々

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記事の情報は2018-10-26時点のものです。

大画面スマートフォンは確かに便利だが、最近の6インチを超える「ファブレット級」ともなると片手操作は難しく手に余る。そんな状況で、もっとシンプルな通話中心のミニマル端末に対する関心が高まっていて、ドコモも「カードケータイ」「ワンナンバーフォン」を発売する。また世界には、通話しかできない「Light Phone」、超小型Androidスマホ「Jelly」、スマホと連携する小型端末「Palm Phone」など、魅力的な超小型携帯端末が存在する。
さよなら大画面、スマホもケータイも超小型・薄型へ?Jellyにカードケータイ新端末続々

大きく、重く、オーバースペックになったスマホ

スマートフォンの画面は、大きいほど表示できる情報は増えるし、写真やビデオの迫力も増す。アプリの操作や文字入力も、画面が広いほど容易になる。そのため、画面サイズが6インチ以上あるタブレットと見紛う製品が次々登場し、スマートフォン(Smartphone)とタブレット(Tablet)を組み合わせた「ファブレット」(Phablet)という呼び名で分類されるほどだ。

たとえば、日本初上陸で期待のグーグル製「Pixel 3 XL」は6.3インチ画面を搭載し、サイズが158.0×76.7×7.9mm、重さが184gある。世界スマートフォン市場でシェアトップのサムスン電子が先日リリースした「Galaxy Note 9」は、6.4インチ画面で、162×76×8.8mm、201g。新モデルが毎年話題になるアップルの最新機種「iPhone Xs Max」は、6.5インチ画面、157.5×77.4×7.7mm、208g。ここまで大きくなると、文字通り手に余る。片手操作は難しく、両手で扱う人も多い。

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また、スマートフォンは機能的に成熟したデバイスなので、新たにリリースされる製品はスペック競争になりがちだ。こうして多機能化と高性能化が進み、一般ユーザーは使わない機能や高過ぎる性能を持て余す。その結果、バッテリー駆動時間が短くなり、価格も上がる。スマートフォンを電話やメール、メッセージ交換、ちょっとしたウェブ閲覧程度にしか使わない人にとって、最近の機種は大きく、重く、オーバースペックだ。

ドコモが「ミニマル端末」に力を入れる

そうした状況に対する答えの1つなのか、NTTドコモが2018-2019年冬春モデルとしてユニークな製品を発表した。クレジットカードのような大きさをした、「カードケータイ KY-01L」と「ワンナンバーフォン ON 01」という2モデルである。

出典:NTTドコモ / 左:カードケータイ、右:ワンナンバーフォン

カードケータイは携帯電話とモバイルWi-Fiルーターを組み合わせたようなもので、通話とSMS、簡単なウェブ閲覧程度の機能しかない。一方のワンナンバーフォンは、すでに使っているスマートフォンの「子機」的な位置付けで、スマートフォンから通話とSMSの機能だけを取り出したようなデバイスである。いずれもLTE(4G)ネットワークに対応しているものの、通話利用を主目的としており、アプリのインストールができないなど極めてシンプルな端末だ。

ベンチャー企業でなく、ドコモのような大手キャリアがこの種のミニマルなデバイスを手がけることは興味深い。行き過ぎたスマートフォンの大型化や高性能化に疑問を持つ人がどの程度いるかを見極めるための、テストマーケティング的な意味もあるのだろう。

カードケータイのような通話を中心とする端末への需要は、間違いなく存在する。その証拠に、以前フューチャーモデルから発売されたSIMロックフリーの携帯電話「NichePhone-S」「NichePhone-S 4G」が注目を集めた。キャリア外端末という理由でNichePhone-Sシリーズ購入に踏み切れなかったミニマル端末の潜在ユーザーを、ドコモはカードケータイとワンナンバーフォンで一気に獲得できるかもしれない。

出典:フューチャーモデル / NichePhone-S 4G

ミニマル端末や超小型スマートフォンへの関心は、日本だけでなく世界中で高い。以下では、特に注目された海外のデバイスを紹介しよう。

海外の注目ミニマルデバイス

通話しかできない「Light Phone」

2017年に発売された「Light Phone」はサイズが85.6×53.98×4mm、重さが38.5gの携帯電話。通話機能しかなく、メッセージ交換はできない。スマートフォンとも連携せず、電話帳機能も備えず、いくつか短縮ダイヤルを登録できるだけだ。それにもかかわらず、クラウドファンディング「Kickstarter」で目標の2倍超も資金を集めるなど、大成功した。

これで気をよくしたのか、開発元のLightは後継モデルの「Light Phone 2」を発表。サイズが91×55×6.5~7.5mm、重さが80gとやや大きくなるものの、LTEの通話と通信を可能として、Wi-FiやGPSに対応するなど、シンプルさはそのままに今時の携帯電話らしいスペックとした。前モデルは2GのGSMネットワークにしか対応しておらず日本で使えなかったが、Light Phone 2は日本でも技術的には使えるという。

Indiegogo」で支援を募ったところ、目標の6倍を超える資金を集めている。

出典:Light/Indiegogo / Light Phone 2

超小型Androidスマホ「Jelly」

Light Phoneが携帯電話であるのに対し、Unihertzの「Jelly」は正真正銘の4G対応Androidスマートフォンだ。2.45インチ画面、92.3×43×13.3mmという大きさは手に隠せるほどで、重さは60.4gしかない。

ところが、インカメラとアウトカメラを内蔵し、micro SDカードが使用可能で、Wi-Fi、Bluetooth、GPSにも対応する。加速度センサー、電子コンパス、ジャイロスコープまで搭載しており、デュアルnano-SIMに対応する本格派だ。もちろん、Google Playから好みのAndroidアプリをインストールできる。こちらもKickstarterのキャンペーンは大成功し、実際に製品化された。しかも、技術基準適合(技適)マーク取得により日本でも使える。

出典:Unihertz/kickstarter / Jelly, The Smallest 4G Smartphone

現在Unihertzは、防水性と耐衝撃性を備えるタフネス超小型4Gスマートフォン「Atom」の開発を進めている。

画面サイズはJellyと同じく2.45インチだが、サイズは96×45×18mm、重さは108gで、やや大きく重くなる。RAMやストーレジのサイズが増え、カメラも性能が向上するなど、Jellyに物足りなさを感じていた層に訴求するだろう。

出典:Unihertz/kickstarter / Atom, World`s Smallest 4G Rugged Smartphone

スマホと連携する小型端末「Palm Phone」

ガジェット好きから熱い視線を集めているのは、Palmの開発した「Palm Phone」である。画面3.3インチ、サイズ96.6×50.6×7.4mm、重さ62.5gの小型Androidデバイスで、防水性を備えたり、内側と外側のカメラを搭載したりという点が実用的だ。

ただし、Palm Phoneは単独で使う端末ではなく、親機となるスマートフォンが必要になる。あらかじめAndroidスマートフォンまたはiPhoneと連携させたうえで、1つの電話番号を共有して使う。スマートフォンに頼る場面を減らそうという発想のデバイスであり、ドコモが発売するワンナンバーフォンのAndroid版ガジェットに相当する。魅力的ではあるが、今のところ米キャリアのベライゾンでしか利用できず、日本では使えないだろう。

出典:Palm / Palm Phone

なお、Palmといえば、1990年代から2000年代にかけてPDA(Personal Digital Assistant)と呼ばれるジャンルを作り上げた携帯情報端末の代表的ブランドだ。もっとも、Palm PhoneはPalmというブランド名を継承しているだけで、PDAの「Palm Pilot」と技術的なつながりはない。

筆者が最近まで愛用していたIBM版Palm「WorkPad」

スマホの選び方を見直す時期かも

大画面を搭載し、高性能なスマートフォンは、確かに便利だ。家でくつろいでいても、オフィスで仕事をしていても、外を歩いていても、コミュニケーションや調べものなど、あらゆる場面で活用している。スマートフォンが手元にないと困ることも多い。

その一方で、絶えずポップアップする通知に追われる時間も増えた。忙し過ぎる現代の生活を見直し、ときにはネットワークから離れるためにも、スマートフォンを置き、必要最小限のコミュニケーション手段だけ持ち歩くミニマル端末を検討してはどうだろう。