今、ファンベースが必要な理由~4つの視点から紐解く【セミナー取材・第2回】

公開日:

記事の情報は2019-03-05時点のものです。

1月30日、現代経営技術研究所セミナーにおいて、コミュニケーション・デザイナーの佐藤尚之(さとなお)氏が講演を行った。佐藤氏は、企業やブランド・商品が大切にしている価値を支持してくれる人を「ファン」と呼び、ファンをベースに考えるフレームワーク「ファンベース」を提唱している。佐藤氏の講演内容から、第2回は「今、なぜファンベースが必要なのか」について紹介していく。
今、ファンベースが必要な理由~4つの視点から紐解く【セミナー取材・第2回】

※連載第1回「ファンベースとはなにか」はこちら

今、なぜファンベースが必要なのか

佐藤氏 これまでは、新規顧客を増やさなくては売上が上がらないと、根強く考えられてきました。また貴重な予算を、すでに買ってくれている人に投下するのは抵抗がある、という人もいます。

ましてや経営者は、予算を既存顧客に使うことで、本当に対前年比に好影響が出るのかと疑います。新規顧客を狙えば業績が伸びるという時代は長かったし、成功体験から抜け出せずにいるのです。

では、既存顧客へのアプローチである、ファンベースがなぜ必要なのか。4つの視点から説明していきます。

1.ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれるから
2.時代的・社会的にファンの重要度が増していくから
3.ファンが新規顧客を増やしてくれるから
4.効きにくくなったキャンペーンの効果をアップさせるから

1. ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれる

佐藤氏 まずは「ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれる」ということについて、ひとつ事例をお見せしましょう。これは、メガ飲料メーカーの事例です。

飲料なので、コンビニやスーパーなどで、なんとなく手に取って買うような低価格の商品です。それでも、8%のコアファンがいるんです。この人たちは、コンビニにその商品がなければ、他のコンビニにわざわざ買いに行くような人たちです。

このコアファンたちで、下図の「消費量」すなわち売上では、全体の45%を占めているのです。

また、その飲料があったら絶対それを買うような「ファン」は36%で、売上は44%。つまり、コアファンとファンで売上の90%以上を支えているのです。これを、一般化するとパレートの法則と言います。いろいろな業界や商品はありますが、経験則としてこれはだいたい当てはまります。

たとえば、雑誌業界は苦戦していると言われていますが、約20%のものすごく雑誌が好きなファンがいて、この人たちが閲読総数の70%を占めるんです。

雑誌から離れていった人たちをどう呼び戻すかばかりを出版社は考えがちです。でも、本当は今読んでくれているファンの離脱を防ぎ、その方々がもう何冊か買うように共感を強め、その方々が雑誌の良さを周りに伝えていって顧客が増える、という方法をとるほうがずっと効果的です。なぜなら離脱した人はよっぽどじゃないと戻ってこないからです。

ファンの人数を増やさなくても、今買ってくれているファンたちが2回、3回と買うようになれば、売上は上がっていくのです。

ソニーやカゴメなどはファンのためのコンテンツを制作し、ファン同士のコミュニケーションも促進しています。

出典:&KAGOMEホームページより

※パレートの法則:全商品の上位20%の商品が売上げの80%を占める、全顧客の上位20%の顧客が売上げの80%を占めるというマーケティングの法則(出典:Weblio)