世界の競争力トップはシンガポール、3位から返り咲き - ビジネス環境が高評価

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IMDインターナショナルが、世界各国の競争力をランキング形式で紹介する「IMD World Competitiveness Ranking」の2019年版を発表した。1位はシンガポールで昨年の3位から返り咲いた。一方、トップだった米国は3位に転落。日本は順位を5つ落として30位だった。好調な国の要因はどこにあるのだろう。

世界の競争力トップはシンガポール、3位から返り咲き - ビジネス環境が高評価

競争力トップはシンガポール

20世紀の終わりから中国経済が躍進し、そのGDPは2010年代初めに日本を抜いて2位となった。3位となった日本は、長引く低迷による閉塞(へいそく)感を払拭できないまま、少子化と高齢化のダブルパンチで労働人口が減少。再び経済を上向かせるには、思い切った改革が必要だ。

客観的にみて、現在の日本はどの程度の力を持っているのだろうか。スイスでビジネススクールを運営しているIMDインターナショナルが発表したIMD世界競争力ランキング「IMD World Competitiveness Ranking」の2019年版から、好調な国々の状況を調べてみよう。

ちなみに、最新の2019年版ランキングにおいて競争力トップ10は以下の国と地域。日本は30位で、前年の25位から5つ順位を下げてしまった。

1位:シンガポール
2位:香港
3位:米国
4位:スイス
5位:アラブ首長国連邦(UAE)
6位:オランダ
7位:アイルランド
8位:デンマーク
9位:スウェーデン
10位:カタール

出典:IMD / Singapore topples United States as world’s most competitive economy

トップ3と日本の状況

63の国と地域を対象とするIMD世界競争力ランキングは、各地の失業率、GDP、健康および教育に対する国の支出といった統計データを調査するほか、社会的結束や分離の度合い、グローバリゼーション、腐敗といった問題について企業経営幹部などにアンケート調査を実施。これらの結果を考慮し、最終的なランキングを算出するそうだ。

出典:IMD / The IMD World Competitiveness Center releases its 2019 World Competitiveness results

1位:シンガポールはビジネスしやすい環境が魅力

シンガポールは、2010年に1位を初めて獲得したものの2013年に5位まで転落。今回、久し振りに1位へ返り咲いた。

IMDは、技術的インフラの先進性、高スキル労働力の調達容易性、ビジネスに適した入国管理法、新規事業設立プロセスの効率性などを評価している。

2位:香港の特徴は低い税率と容易な資金調達

香港は、1997年に英国から中国へ返還された後しばらく下降傾向で、2002年に13位まで順位を下げてしまった。しかし、その後上昇へ転じて2011年に1位となり、それ以降はトップクラスで推移。2019年は前年と同じ2位。

高評価の理由として、IMDは低税率、整った事業政策環境、事業資金調達のしやすさを挙げた。

3位:米国は、自信が消えたようにみえる

米国は長く1位を維持していたが、2010年に一時3位へ落ちた後に持ち直した。最近はむらがあり、2016年に3位、2017年に4位、2018年に1位と推移。今回は3位となった。

米国の状況について、IMDは「ドナルド・トランプ大統領の税制諸改革の第一波がもたらした当初の自信は米国内では消えたように見えます」と分析。現在も世界をリードしている米国だが、燃料価格の上昇、ハイテク輸出の減速、ドル価格の変動がその競争力に打撃を与えた、としている。

日本は効率が低くデジタル化に遅れた

1990年代終わりからおおむね20位台の日本は、2005年19位、2006年16位と上昇するかに思えたが、再び20位台で横ばいに。そして、2019年にとうとう30位まで順位を下げてしまった。

IMDの日本語版プレスリリースによると、日本の落ち込みは、経済の停滞、政府の債務に加え、ビジネス効率性の低下が主因だという。特に、ビジネス効率性は全体の46位で、前年の36位から大幅に下がっている。また、「生産性と効率性」「経営慣行」「姿勢と価値観」などでも低下が目立つそうだ。

これに対し、IMDは「グローバル化とデジタル化が加速する経済社会における日本の準備度に関する企業心理の低下を示す」と指摘。確かに、電通イージス・ネットワークが公表した「デジタル社会指標」「デジタルニーズ充足度」において、日本は極めて低い評価を下されている。

ただし、日本は「持続可能な開発」が1位、「環境関連の技術」が2位になるなど、持続可能性に関する長期的な基準で高く評価された。

好調なアジア、軟調な欧州、明暗が分かれた中東

地域別では、全般的に南アジアと太平洋地域が好調、欧州が軟調という結果だった。

アジア:インドネシアとタイが上昇

アジア太平洋地域は14の国と地域を調査対象としているが、そのうち11が順位を上げるか維持するかした。

好調が目立ったのは、順位を11位上げて32位になったインドネシア。政府の効率向上と、インフラおよびビジネス環境の改善が影響したという。また、タイは海外からの投資増加と生産性向上により、前年から5位上がって25位。

出典:IMD / The IMD World Competitiveness Center releases its 2019 World Competitiveness results

欧州:多くが順位を落とす

欧州では、経済的な不確実性で順位を落とした国が多い。特に英国は、EU離脱(ブレクジット)問題が影を落とし、前年の20位から23位へ下がった。

そんな欧州でも、アイルランドは順位を5つ上げて7位。ビジネス環境の改善と、経済の強化が好調をもたらした。

出典:IMD / The IMD World Competitiveness Center releases its 2019 World Competitiveness results

中東:サウジアラビアが急上昇

中東は、原油価格の上昇が原油生産国の順位を押し上げた。

なかでも、26位のサウジアラビアは、全体的な経済関連スコアが低下したものの、13位上昇と全体でもっとも上げ幅を記録した。また、4つ上げて10位になったカタールは初のトップ10入り、2つ上げて5位になったUAEは初のトップ5入り。

一方、インフレがマイナスに働いたトルコとヨルダンは順位が5つ下がり、それぞれ51位と57位に下落。イスラエルは、財政赤字など政府の効率を示す複数の指標が悪化し、前年の21位から24位に下がった。

出典:IMD / The IMD World Competitiveness Center releases its 2019 World Competitiveness results

中南米:コロンビアが6つ上がって52位

中南米の国々は42位のチリが最高で、下位に固まっている。アルゼンチンが順位を大きく5つ落とした以外は、横ばいの国がほとんど。

唯一、コロンビアが6つ上げて52位になった。GDP、生産性、労働力の向上が原因だという。

出典:IMD / The IMD World Competitiveness Center releases its 2019 World Competitiveness results

ビジネス展開しやすい地域の見極めに

IMD世界競争力ランキングでは、235の細分化された指標を算出したうえで、総合順位のほか、経済パフォーマンス、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラという大きな4項目の順位も決めている。それぞれのトップ5は以下のとおり。

経済パフォーマンス
1位:米国
2位:中国
3位:カタール
4位:ルクセンブルク
5位:シンガポール

政府の効率性
1位:香港
2位:UAE
3位:シンガポール
4位:スイス
5位:カタール

ビジネスの効率性
1位:UAE
2位:香港
3位:アイルランド
4位:オランダ
5位:シンガポール

インフラ
1位:米国
2位:スイス
3位:デンマーク
4位:スウェーデン
5位:フィンランド

これらの情報は、各地でビジネスを展開する際の難易度を判断するのに役立つだろう。詳細なレポートを入手して精査することを勧める。