N女とは | 高学歴女子のNPO就職にみる生き方・理由・事例

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記事の情報は2020-04-08時点のものです。

高学歴、高職歴を持つハイスペックな女性がNPOへ転職する、N女という言葉が注目されています。N女の研究という一冊から一般に知れ渡ったこの言葉、彼女達が転職する理由とは何か、その職業感と生き方に対する価値観を探ります。
N女とは | 高学歴女子のNPO就職にみる生き方・理由・事例

ノンフィクション作家である中村安希さんの著書「N女の研究」が話題となり、にわかに注目を集めた「N女」ですが、高学歴で高収入の職を持っていた彼女達は、なぜそれを捨ててまでNPOという仕事を選択したのでしょうか。

NPOの解説とともに、N女という生き方を選んだ彼女達の理由を紐解いていきます。

N女とは

N女とは、高収入を得られる職を捨て、NPOといったソーシャルセクターへ転職・就職する高学歴の女性のことをいいます。

N女は昔から存在した

N女という言葉が注目されたことから、彼女達が最近になって現れたように思われていますが、実は昔からNPOに高学歴女性、N女は存在していたのです。

しかし、高学歴でも学校卒業後には結婚するのが当たり前だった昔のN女にとって、NPOはボランティア活動だったのに対し、現代のN女にとっては就職先だという、決定的な違いがありました。

NPOとはなにか

ここでNPO(Non Profit Organization)のことをおさらいしておきましょう。

日本語では「非営利組織」と呼ばれることが多くなってますが、一般の人たちが身近な問題を自分たちで解決したい、という情熱から防犯活動や森林保護、いじめ問題などさまざまな活動を行っている、市民活動団体のことを意味しています。

非営利の意味

NPOは非営利と訳されることから、収入を得てはいけないと思われていますが、実際には事業活動を行って利益を上げられます

ただし、事業活動で得た利益は、その団体が行う社会的な活動に使われる必要があります。

それではスタッフはすべて無給なのか、という疑問がわきますが、労働の対価として支払われる給与は経費として認められているのです。

NPOとNGOの違い

NGO(Non Governmental Organization)は「非政府組織」と呼ばれ、日本の場合、国境を越えた活動をする団体を指すことが多くなっているようです。

しかし、NPOが国際的な活動をしていないわけではなく、民間の非営利な組織という意味ではどちらも同じです。

高学歴女子がNPOに就職する理由

このような世界に飛び込んだN女達は、就職するに値するどのような理由をNPOに見いだしたのでしょうか。

実際の理由やきっかけはさまざまながら、ある傾向が見られるようです。

仕事へのやりがい・働き方の選択

たとえば瀬名波雅子さんは、勤める大手カード会社の大量消費を生み出すという目的になじめずにいました。

東日本大震災で揺れるビルの中で「明日死ぬかもしれないなら、やりたいことをやって死にたい」と、貧困問題をビジネスで解決することを決意しました。

また、吉田綾さんは育休を経て復職したものの、育児と仕事の両立が困難だったため、「子供を産んでも当たり前に働き続けられる会社」であるNPOに転職、週3日出社、週2日在宅という新しい働き方を手に入れました。

ノウハウでNPO業界を変えたい

しかし「やりがいのある仕事だから、低賃金でもいいとは思わない」ともN女達はいいます。

その考えをもとにした転職理由が「前職で得たノウハウでNPOを稼げる団体にしたい」というものです。

杉村志保さんは、以前はNPOへ助成金を出す側の職に就いていました。
そのためNPOの抱える資金難を熟知しており「NPO自身が事業計画を考え、民間から資金を集める仕組みを作り上げていかない限り、団体の運営基盤を強化することにならない」という思いで転職を決断しています。

NPOに転職した女性達

NPO法人クロスフィールズ 三ツ井稔恵さん

三ツ井稔恵さんは結婚を機に、NPO法人クロスフィールズに転職し、現在はアカウントマネージャーを勤めています。

クロスフィールズは、活動資金の9割を事業収入から得ているNPO法人ですが、常勤有給職員の年収は222万円が中央値となっており、けっして多いとはいえません。

しかし三ツ井さんは、結婚によって経済的な安定とパートナーの後押しが得られたことで転職が決断でき、結婚が可能性を広げてくれたと感じているそうです。

女性が仕事をするということに関して、ネガティブな要素になりがちな結婚を、前向きに捉えられるのもN女の特徴かもしれません。

国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン 平田優子さん

ワールド・ビジョン・ジャパン入団4ケ月の新人、平田優子さんの前職はゴールドマン・サックスです。

社風に魅かれ、17年間勤めていましたが、信頼するマネージャーの退職をきっかけに転職を決意、国連に憧れていたこともあり、国際協力NGOであるワールド・ビジョン・ジャパンに入団しました。

現在は日本でのNGOの知名度のなさを痛感しており、NGOの支援によってさまざまな社会活動ができることを知ってもらう、そして前職のゴールドマン・サックスにもアプローチしていきたいと考えているそうです。

「N女の研究」中村安希

身近なハイスペック女性がNPOへ転職していく中、N女という言葉を耳にした中村さんは、何か就職トレンドに重大な変化が起きているのでは、とN女の取材を決行。

インタビューした内容を1年半に渡って「集英社WEB文芸RENZABURO」で連載、書籍としてまとめたものが「N女の研究」です。

中村安希
ノンフィクション作家。日米での3年間の社会人生活を経て、684日(47か国)に及ぶ取材旅行を敢行する。2009年その旅をもとに書いた『インパラの朝』(集英社)で開高健ノンフィクション賞を受賞。

N女にみる女性の生き方の多様化

「生活しなければならない」
「家庭を持たなければならない」
「定職に就かなければならない」

私達はいつの間にかある一定の固定概念に縛られて、なんとなく自身の生き方のことを考えずに毎日を過ごしてしまっているのではないでしょうか。

N女といわれる女性達は、日々の生活の中でも自身の生き方を自問し、なにかのきっかけががあった際には決断のできる意志を持ち、変化を受け止めるポジティブな考え方があるように思えます。

女性が働く環境が改善されつつあることも要因にあるかもしれませんが、女性が自身の生き方に対する責任を持ち、人生を悔いないものにしたいという考え方の多様化が育ちつつあるのかもしれません。