企業が従業員のレジリエンスを高める方法3選!サポートツール・サービスも紹介
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レジリエンスとは?
レジリエンスとは、回復力や復元力、耐久力、再起力などの意味を持つ言葉です。
本来は物理学領域における、外力による変形からの回復力といった意味で使用されていましたが、ビジネスシーンではストレスを乗り越えたうえで回復したり、適応したりする精神的回復力を表現する言葉として用いられています。
ビジネスシーンにおけるレジリエンスの重要性は、近年の急激な社会情勢や事業環境の変化に伴い注目されている状況です。環境問題や新型コロナウイルス感染症、為替の変動など、予測不能な状況が続くなかで、危機やストレスから回復したり、柔軟に適応したりしながら、成長を続ける力が企業に求められています。
また、健康経営の観点から、従業員のレジリエンス向上が組織全体の生産性向上に好影響を与えると考えられています。レジリエンスは個人や組織にとって不可欠な要素であり、社会や市場の変化に柔軟に対応するために必要な能力といえます。
ストレスとの違い
レジリエンスとストレスは、関連性はあるものの、異なる概念です。
レジリエンスは、困難やストレスに直面した際に、うまく対処して回復する力を指します。ビジネスシーンにおける逆境や困難に適応して、迅速に立ち直る能力といえばわかりやすいでしょう。
一方、ストレスは外部からの圧力や要求によって生じる心身の緊張状態のことです。
レジリエンスが高ければ、ストレスによる身体的・心理的影響は小さくなり、スムーズに回復できます。また、レジリエンスが高まることで、抑うつや不安といったストレスによる反応を防止も期待できます。
レジリエンスが高い・低い状態とは
レジリエンスが高い・低い状態の人の特徴を紹介します。
レジリエンスが高い状態の特徴
レジリエンスが高い状態の人は、自己効力感が高く、自身の力で問題を解決できる自信をもっているため、困難な状況でも積極的に行動して、目標に向かって努力を続けられます。
また、楽観性を持ち合わせているのも重要な特徴です。レジリエンスが高い人は、失敗を一時的なものと捉える傾向にあり、そこから学びを得て次の機会に活かす傾向にあります。
さらに、問題解決スキルが高いことも特徴の1つです。冷静に状況を分析して、効果的な解決策を見つける能力に長けているため、ストレスを感じやすい状況でも的確な判断をし、すぐに行動を起こせます。
ほかにも、レジリエンスが高ければ、社会的な支援を受ける能力も高いため、家族や友人、同僚との信頼関係を構築し、困難な状況でも孤立せずにサポートを受けられます。
レジリエンスが低い状態の特徴
レジリエンスが低い人は、ストレスや逆境に対して過剰に反応してしまい、精神の回復に時間がかかります。自己効力感が低く自身の能力に自信を持てないため、困難に直面した際に悲観的になりやすく、挑戦を避ける傾向があります。
悲観性が高く自己批判に陥りがちで、失敗を長期的なものや個人的な欠陥と捉えて、前向きな行動が難しくなりやすいといえます。
また、問題解決スキルが不足していれば、困難な状況に対処する効果的な方法を見つけられず、ストレスが増す傾向にあります。感情に流されやすく、物事を冷静に判断するのが困難になりやすい点も特徴です。
これらの悪循環によって、ストレスが蓄積して精神的・身体的な健康に悪影響を及ぼすことがあるほか、社会的支援を受けられずに孤立感が増してしまい、ストレスの影響を抱え込むことになります。
従業員のレジリエンスを高めるメリット
従業員のレジリエンスを高めるメリットは次のとおりです。
- 変化への適応力が身につく
- 目標を達成する力が向上する
- 離職や休職の低下につながる
変化への適応力が身につく
急激かつさまざまな変化に対する適応力が身につくのが、従業員のレジリエンスを高めるメリットです。
現代のビジネス環境は絶え間なく変化しており、予測不能な状況に直面することが多々あります。レジリエンスが高い従業員は、変化を前向きに受け入れ、新しい状況に対して柔軟に対応して、問題解決に必要なスキルを駆使して、効率的に行動できます。
また、変化に強い組織文化の醸成によって、各従業員が自信をもって新たな挑戦に取り組めるため、組織全体の生産性向上にも好影響を与えます。従業員の高い適応力によって、企業は競争力を維持・成長し続けられるでしょう。
目標を達成する力が向上する
従業員の目標達成能力が向上するのも、レジリエンスを高めるメリットです。
レジリエンスが高い人は、失敗や挫折を経験しても、経験を糧にして次のステップに積極的に進めます。目標に向かって粘り強く努力し、困難な状況でも諦めずに挑戦を続けられるでしょう。
また、レジリエンスが高い従業員はストレスへの耐性が高く、心身のバランスを保てるため、持続的に高いパフォーマンスを発揮します。
個々のパフォーマンスの向上だけではなく、組織全体の士気を高めることにつながるため、協力し合う文化の醸成にもつながります。これにより、企業全体の目標達成率の向上や、組織の成長にも好影響となるでしょう。
離職や休職の低下につながる
従業員のレジリエンスを高めることで、離職率や休職率の低下につながります。
レジリエンスが高い従業員は、仕事上でのストレスやプレッシャーに対して柔軟に対応できます。心身の健康を維持できれば、職場でのストレスが原因での健康問題やモチベーションの低下が発生しにくくなり、離職や休職につながるケースの低減が期待できます。
また、レジリエンスの向上によって、従業員同士の信頼関係が強化され、職場の雰囲気も改善されます。従業員は安心して働けるため、職場に対するエンゲージメントが増し、社内での長期的なキャリアを構築する意欲が高まるでしょう。
企業にとって、従業員のレジリエンスを高めることは、優秀な人材を維持し、組織の安定性を確保するための重要な戦略の1つといえます。
従業員自身がレジリエンスを築く10の方法
レジリエンスを高めるためには、日常生活における意識的な取り組みが必要です。アメリカ精神医学会はレジリエンスを築くための具体的な10の方法を提唱しています。
レジリエンスを高める方法 | 効果 |
---|---|
親戚や友人と良好な関係を維持する | 家族や友人との良好な関係の維持によって、困難な状況でも支え合える環境を作る |
危機を乗り越えられない問題として捉えない | ストレスフルな出来事を耐え難い問題として捉えず、乗り越えるべきチャレンジとして捉える |
変えられない状況を受け入れる | 自分では変えられない状況を受け入れ、そこから学ぶ姿勢を持つ |
現実的な目標を設定し、それに向かう | 達成可能な目標を設定し、一歩ずつ進んで達成感を得る |
不利な状況でも決断し行動する | 不利な状況でも積極的に決断し、行動を起こして自己効力感を高める |
失敗したら自己発見の機会を探す | 困難を経験した後に、新たな自分を発見するチャンスを探す |
自信を深める | 自分の強みを認識し、活かすことで自信を深める |
長期的視点をもつ | ストレスの多い出来事を広い視野で捉え、長期的な視点を持って冷静に対応する |
楽観的に捉え、希望的な見通しを維持する | 良いことを期待し、希望を持ち続けることで、ポジティブな思考を維持する |
心と体のケアし、リラックスして楽しむ | 定期的な運動やリラクゼーションを取り入れ、心身の健康を保つ |
このような方法を日常的に取り入れることで、レジリエンスを高められ、困難な状況でも柔軟に対応できる力を養えます。レジリエンスは後天的に習得できる能力であり、継続的な努力によって向上できます。
ただし、上記の方法は主に従業員自身が行う取り組みです。次の章では、企業側が従業員のレジリエンス向上に向けて実施できる方法を紹介します。
企業が従業員のレジリエンスを高める方法3選
企業が従業員のレジリエンスを高める方法は主に次のとおりです。
- 従業員同士のコミュニケーションを活性化する
- 従業員の健康増進やメンタルケアをサポートする
- レジリエンス研修を行う
従業員同士のコミュニケーションを活性化する
従業員のレジリエンスを高める方法の1つが、コミュニケーションの活性化です。
従業員同士の円滑なコミュニケーションによって、心理的な安全性を高められるほか、互いの信頼関係の基盤ができます。困難な状況でも協力し合い、問題を解決する力が養われるでしょう。
具体的には、定期的なチームミーティングやワークショップを通じて、意見交換の機会を増やすのが効果的です。また、称賛したり、感謝したりできる職場環境を構築できれば、良好な関係を築きやすくなるでしょう。
オープンなコミュニケーション文化を育めば、従業員は自由に意見を述べられ、組織全体の柔軟性や適応力が向上します。
従業員同士のコミュニケーションを活性化するには、サンクスカードツールやエンゲージメント向上ツールの活用がおすすめです。
従業員の健康増進やメンタルケアをサポートする
従業員のレジリエンスを高める方法の1つが、健康増進とメンタルケアのサポートです。
健康的な生活習慣を促進することで、従業員はストレスに対する耐性を強化できます。運動プログラムを提供すれば、従業員の身体的健康を支援できるでしょう。
また、メンタルヘルスのケアとして、カウンセリングサービスやメンタルヘルスセミナーを導入するのも効果的です。従業員は心身のバランスを保ちやすくなり、ストレスフルな状況でも冷静に対処する力を養えます。
健康とメンタルケアの充実は、従業員のモチベーションを高め、組織全体の生産性向上に良い影響を与えます。より効果的な健康増進やメンタルケアサポートを行うには、健康経営サービスやEAPサービスの利用を検討しましょう。
レジリエンス研修を行う
従業員のレジリエンスを高める方法として、レジリエンス研修の実施もおすすめです。自己効力感や問題解決スキル、感情コントロールの技術を学べる研修で、従業員の適応力と回復力の強化に効果が期待できます。
研修での実践的なワークショップやシミュレーションによって、学んだスキルの実際の業務への応用も可能です。レジリエンス研修は、従業員の成長促進や組織全体の柔軟性向上に重要な役割を果たすため、企業は変化の激しいビジネス環境でも持続的な成長を実現できます。
研修を内製するのが難しい場合は、外部の研修サービスを利用しましょう。
レジリエンス向上に役立つおすすめ組織活性化ツール3選
Teampot - 株式会社エージェント
Teampotは、チームを強くするエンプロイーサクセスツールです。共感・感想・実績・感謝・相談の5つのテーマから、1日1回だけ投稿ができるのが特徴。投稿に対して、ほかの従業員はいいねやシェア、コメント送信などのリアクションを取れるため、組織内のコミュニケーションが活性化します。応援や感謝したい人に対して匿名でサンクスボーナスを送付できます。
THANKS GIFT - 株式会社Take Action
THANKS GIFTは、組織内の感謝のコミュニケーションを増やし、企業理念の浸透や離職率低下を実現できる組織活性化ツールです。従業員同士で手軽にコインを贈り合える仕組みが特徴。感謝のコミュニケーションによって、部署を越えた交流が生まれやすくなるほか、心理的安全性が向上するため貢献意欲やモチベーションも高まります。サーベイ機能も搭載されており、従業員のメンタルやコンディションも可視化されるため、離職防止効果も期待できるでしょう。
TUNAGは、情報共有や業務効率化、社内交流など、組織を強化するための必要な機能が搭載されているツールです。従業員同士で情報を共有できる機能が豊富なほか、スマートフォンから確認できるマニュアルやテスト機能による人材育成の効率化、サンクスカード機能や投稿へのコメント機能による社内交流の促進などが可能です。
レジリエンス向上に役立つおすすめ健康サポートサービス3選
健康管理システムHealthCore - 株式会社ヒューマネージ
健康管理システムHealthCoreは、フィジカル・メンタル・ソーシャルといった、すべての健康を管理できる健康サポートサービスです。健診データや長時間労働の管理機能に加えて、コーピング測定・レジリエンス測定が可能なストレスチェック機能、エンゲージメントサーベイ機能などが搭載されています。健康診断データを効率的に活用できることで健康経営や組織改善の向上が期待できます。
ソシキスイッチ ストレスチェック - 株式会社情報基盤開発
ソシキスイッチストレスチェックは、厚生労働省マニュアルに準拠したストレスチェックサービスです。受検者リストを渡すだけで、面倒な作業は任せられるため、手間をかけずにストレスチェックを実施できます。紙版・Web版のいずれのチェックにも対応しています。結果は集団分析レポートとしてフィードバックされ、経年での比較や職場での課題が一目でわかります。
ウツ会議は、体験カード型のメンタルヘルス研修サービスです。対応するのが難しいうつ病の対処を学べるのが特徴です。約1時間の研修で、うつ病に対するサポート方法の疑似体験が可能で、参加者が積極的にサポートに参加できるよう工夫されています。約100人のうつ病患者と周囲の人へのインタビューをもとに制作されているのもポイントで、理解してほしい症状やうつ病対策として高い効果のある対処方法を習得できます。
レジリエンス向上に役立つおすすめ研修サービス3選
インソース
インソース(insource)は、法人を対象にさまざまな研修・教育コンテンツを提供するサービスです。レジリエンス研修にも対応しており、新入社員向けから若手社員向け、リーダー向けといったような階層別・ニーズ別の研修プログラムを多数利用できます。座学による研修に加えて、エンロールマネジメントやマインドフルネス呼吸法など、身体を動かしながら実践で気に取り組めるプログラムもあります。
日本能率協会マネジメントセンター
個人学習と研修で人材育成をサポートする日本能率協会マネジメントセンターでは、レジリエンスを向上するための研修サービスを提供しています。レジリエンステーマの専門家によって設計された研修プログラムがあるのが特徴です。通常のレジリエンス研修に加えて、管理職向け研修と連動すれば、組織全体でお互いが支援し合う組織づくりを実現できます。
バヅクリ
バツグリは、オンラインで社員同士の関係を構築できるチームビルディングサービスです。従業員が自分ごとに感じられる研修内容が構成されているのが特徴です。また、受講者同士の議論や実践、フィードバックを促進するファシリテーションで、学習したこと内容の定着率が高いアクティブラーニングを採用しています。
従業員のレジリエンスを高め、変化に強い組織へ
従業員や組織のレジリエンスの向上は、変化への適応力や目標を達成する力の向上、離職率・休職率の低下につながる可能性があるほか、組織の生産性改善や持続的な成長が期待できる重要な要素の1つです。
レジリエンスの向上に活用できるツールも多く提供されているため、ニーズに合ったツールやサービスの導入を検討するのもおすすめです。
従業員のレジリエンスを高め、変化に影響されない強い組織を作りましょう。