マネジメントとは?意味や役割、種類、業務、求められる能力

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記事の情報は2018-06-12時点のものです。

マネジメントとは、組織の成果を向上させるための道具や機能、機関と定義されています。日本語では「管理」と翻訳されがちですが、実際の仕事は管理だけにとどまりません。マネジメントの意味や定義、果たすべき役割とマネジメント業務を理解し、部下や自分の能力向上・キャリアアップに役立てていきましょう。
マネジメントとは?意味や役割、種類、業務、求められる能力

マネジメントとは

マネジメントとは「組織の成果を向上させるための道具や機能、機関」のことです。これは、マネジメントの発明者であるドラッカーにより定義されています。

一般的に、マネジメントは「管理」と訳されますが、ビジネスにおけるマネジメントは管理だけを指す言葉ではありません。自身のキャリアアップのためにも、マネジメントの意味・定義と、果たすべき役割(マネジメント業務)を正しく理解しましょう。

マネジメントの発明者であるドラッカーは、マネジメントを「組織の成果を向上させるための道具や機能、機関」として定義しています。

詳しく言い換えると、「会社(組織)の資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を管理し、リスクとリターンを計測しながら最大限の効果を得る手法」といえます。

マネージャーとは

マネージャーとは、組織の成果に責任を持つ者を指します。つまり、マネジメントを実行する者をマネージャーと言います。マネージャーになると、自分の業務だけでなく、今までの業務に加え組織を管理する能力が問われます。

マネージャーに必要なマネジメント力について、しっかり理解しましょう。

リーダーシップとは

リーダーシップとは、「けん引する能力」です。ひとつの方向に向かって、ある集団をひっぱり、導く能力を指します。一方、マネジメントはある目標を達成するための手段を模索し、集団を管理するという役割を持っています。

リーダーシップでは、人を引き付ける「誠実さ」や「人柄」などが重要ですが、マネジメントでは「論理的な思考」「現実主義」「冷静かつ客観的な視点」が効果を発揮すると言えるでしょう。

マネジメントが重視される背景

近年、マネジメントはビジネス環境において特に重視されています。それは、マネジメントの成否で組織のパフォーマンスが大きく変化するからです。

変化が激しい時代では、今までの手法で業績目標を達成しながら、成長することが難しくなりました。そのため、状況に応じて変化する組織運営が必要になりました。つまり、生産性向上や人材育成、業務効率化を戦略的に続けなければなりません。

これらはマネジメントが強く求められる領域であり、マネジメント能力を持った人材に対する需要が高まっているのです。

マネジメントの役割と目的

マネジメントの役割と目的とはどんな内容なのでしょうか。ドラッガー氏の解釈を参考に、マネジメントが果たすべき役割を解説します。組織にある資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を効率的に運用し、高い目標に向かって組織を発展させつづけることがマネジメントの目的といえます。

マネジメントの役割

マネジメントの発明者であるドラッカーは、マネジメントの役割を次の3つに集約しています。

1)それぞれの組織に特有の社会的機能を全うする。本業を通じて社会に「貢献」する。
2)組織に関わる人々が「生産的」に働き、仕事を通じて「自己実現」できるようにする。
3)社会的責任を果たす。組織として最大の責任とは、「社会を害さない」ことである。
出典:Drucker Studies

ドラッカー氏の理論は社会全体への影響を見据えたもので、営利・非営利を問わず、どのような組織にも共通するマネジメントの役割としています。もう少しわかりやすくまとめると、

  • 自分が所属する組織の使命を果たす
  • 仕事を通じて人を活かす
  • 社会全体への貢献を果たす

といった具合になるでしょう。

マネジメントの目的

マネジメントの目的とは、組織にある資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を効率的に運用し、高い目標に向かって組織を発展させ続けることです。

マネジメントは単なる「管理」ではありません。経営管理論におけるマネジメントは「評価・分析・改善・選択・調整・計画」といった意味が含まれているのです。

当然、管理もマネジメントに含まれます。しかし、管理は「ある範囲からはみ出さないこと、逸脱しないこと」が目的です。一方、現代社会で重視されているマネジメントは、「計画・分析・改善」を目的とする傾向があるのです。

マネジメントの種類

マネジメントには、その対象によってさまざまな種類があります。そこで主に組織階層ごとのマネジメントと、業務領域ごとのマネジメントに大別して紹介します。

組織階層ごとの分類

対象 マネジメント手法 内容
経営者層 トップマネジメント 事業目的や組織戦略の検討など
管理者層 ミドル・マネジメント トップマネジメントの補佐、トップとロワーの橋渡し
監督者層 ロワー・マネジメント 現場で働く層との関係を円滑に保ち、効率的に実務を遂行する

業務領域ごとの分類(組織運営)

マネジメント手法 内容
チームマネジメント 目標を達成するために計画し、チームをまとめ、メンバーとのコミュニケーションを図る。
プロジェクトマネジメント 目標や行動計画に加え、人員配置やスケジュール管理などプロジェクト全体の運営計画と管理を行う。
コンフリクトマネジメント 組織内における意見や感情、利害の対立を課題解決や成長に活かす。
チェンジマネジメント 組織の変革を効率的に行うため、社員がに環境の変化に対応できるよう調整・サポートする。
ナレッジマネジメント 属人的なスキル・知識などを集積し、組織の財産として共有し、全体的なパフォーマンスを向上させる。

業務領域ごとの分類(人材管理)

マネジメント手法 内容
タレントマネジメント 優秀なスキル・個性を持った人材を把握し、最適な人材配置や育成に活かすことで組織のパフォーマンスを最大化する。
ダイバーシティマネジメント 属性(国籍・性別・雇用形態など)が異なる人材同士が強調して働けるよう制度や文化を整備する。
行動科学マネジメント ある結果に到達するための行動を分析し、社員のモチベーションを保ちながら無理なく目標を達成するよう導く。
パフォーマンスマネジメント ランク付けや選別だけに依存せず、適切なフィードバックによってモチベーション向上や潜在能力を引き出すことを重視する。
モチベーションマネジメント 社員に「動機付け」を行うことで、成果に向けた行動を促す。

業務領域ごとの分類(メンタルヘルス)

マネジメント手法 内容
メンタルヘルスマネジメント ストレスや環境の変化による社員の不調に対応し、現場の活力維持を目的とする。
ストレスマネジメント 現場のストレスをコントロールし、社員のパフォーマンスを向上させる。
アンガーマネジメント 客観視や原因の分析などを用いて、怒りをコントロールし、円滑なコミュニケーションを図る。

マネジメントの業務内容5つ

マネジメントの定義や役割、目的、種類を整理したところで、より具体的な仕事内容を解説します。マネジメントの仕事内容は主に以下の5点に集約できるでしょう。

1.目標設定

上の表でも何度か出てきましたが、マネジメントでは部下やチームの「目標設定」を行うことが頻繁にあります。目標設定は、チームメンバーや部下の視点から言えば「ゴール」を定めることであり、「何に向かっているのか」「どうあるべきか」を明確にするのです。

2.業務の把握と整理

上手くマネジメントが機能していない現場は、さまざまな業務が散らばり、雑然としているものです。これらを把握して分析・整理し、「仕事」に分類します。さらに仕事を「作業」に分類し、誰が何をどのように行うのかを定義するのです。マネジメントは「仕事と作業」を構造化して現場の効率を高めることも重要な仕事です。

3.チーム作り

組織では、目的ごとにチームが組織されます。このチームの編成も、マネジメントの仕事のひとつです。
同一の目標に向かうメンバーを選定し、2で構造化した作業や仕事に照らし合わせながら、チームを編成します。また、編成後のコミュニケーションも重要な仕事のひとつです。

4.評価

1の目標設定に対応する「評価」を行います。さらに、評価を下すための尺度(評価制度など)の整備や改善も行います。目標設定と評価(フィードバック)は必ずセットで実施するようにしましょう。

5.育成

4までの内容を含めて、フィードバックを含めた人材育成を行います。モチベーションをアップさせ、適宜サポートする「支援行動」が重要です。部下やチームメンバーの育成に成功すれば、組織全体のパフォーマンスは大きく向上するでしょう。

マネジメントを成功させるポイント

マネジメントを成功させるには、以下の3つのポイントがあります。

  • 情報共有の徹底
  • 目標と成果の可視化
  • 現場の声に迎合しすぎない

情報共有の徹底は、メンバーや部下が持つ情報を均一化し、認識の齟齬を防ぎます。
また、目標と成果を可視化することで、「常に目立つ仕事」以外にも評価がいきわたれば、全体的なモチベーションが上がります。

しかし、マネージャーは「管理・調整」の仕事も担うため、過度に現場の声に迎合しすぎないことも重要です。あくまでも客観的に分析することで、最適解を見失わないようになります。

マネージャーに必要な能力

これまで、マネジメントの役割や種類、影響力について述べてきました。実際に、マネージャーの地位に就いている方で、どのような能力を鍛えるべきかわからない多いはずです。まずは、以下の4つの能力を意識して仕事に取り組みましょう。

分析力と問題解決力

マネジメント力が高い人の特徴として、現状を分析する力と問題解決力が高いことが挙げられます。周囲が求めていることを察知し、適切な行動を取ることが求められます。

この力を鍛えるには、長期的な戦略を明確化し、リアリストとして常に現実と理想の差を考えます。そして、理想を叶えるための障壁が何か考える支店を持ちましょう。

プロジェクトマネジメント力

マネジメントができる人は、プロジェクトのマネジメント力が高い特徴があります。
この力を鍛えるには顧客目線を持つ、いわゆる「ポジションチェンジ」の力が必要になります。これは、顧客だけでなく、上司や部下に対しても同じことが言えます。

プロジェクトマネージャーについては、以下の記事で詳しく説明しているのでご参照ください。

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意思決定力

マネージャーが意思決定に迷っていると、チームメンバーは不安になってしまいます。そのため、マネージャーには常に自身の判断軸を持つことが求められます。

的確な判断をするには、チーム全員のスケジュールを把握する必要があります。周囲のスケジュールに合わせた指示を出すことで、どのような問題が起きるのか想像しやすくなります。

コミュニケーション力

周囲のメンバーの力を最大限発揮させるには、マネージャーからのコーチングは欠かせません。
コーチングの効果を最大化するには、日頃からコミュニケーションをとり、周囲からの信頼を得ることが重要になります。

マネジメントがもたらす成果

マネジメントは組織全体のパフォーマンスを向上させるものです。ただしこれは、売上や利益が右肩上がりになる、といった「数字」的な側面だけではありません。

マネジメントがうまく浸透すれば、無駄や無理が省かれていきます。そしてチームやプロジェクトのメンバーにかかる負担が減り、モチベーションの維持・向上が容易になり、新たな価値を創出する土台ができ上がります。

驚異的な成功を収めるビジネスの裏には、画期的なビジネスモデルだけではなく、マネジメントの成功も隠れていることを忘れてはならないのです。

マネジメント能力はキャリアアップで重視されやすい

このようにマネジメントは、「管理」とは別の意味を持つものです。マネジメントを行う者には、組織の中で個々人が最大限に力を発揮できるような環境作りが求められます。特に人手不足が深刻な日本では、限られた人的資源をうまく活用するため、マネジメントに長けた人材は引く手あまたです。

英語やプログラミングといった近年注目のスキルに加え、マネジメントを習得できれば、自身のキャリアアップを達成する強力な武器になるでしょう。

今回紹介したマネジメントの役割や目的、種類などから、自分のキャリアを最大化する道を模索してみてはいかがでしょうか。

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