企業内保育所とは?企業・働くパパママ・保育士三者のメリット・デメリットを解説

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記事の情報は2018-06-21時点のものです。

待機児童の状況を改善するための受け皿として募集・導入が進められている「企業主導型保育事業」。企業としてもイメージアップや離職率の低減などメリットが多く、事業所内に保育所を設置する企業が増えてきています。しかし導入・活用に際しては企業、働く女性、保育士それぞれにメリットとデメリットもあることから、その注意点を把握することが大切となります。
企業内保育所とは?企業・働くパパママ・保育士三者のメリット・デメリットを解説

企業内保育所とは

企業内保育所とは企業内に設けられた従業員のための保育施設のことです。深刻化する待機児童問題を背景に、待機児童の受け皿として企業内保育所の募集が行われています。

勤め先企業に企業内保育所があれば、子どもを持つことを希望する人は「子どもの預け先がなかったら復職できない」というプレッシャーから解放されるというメリットがあります。

また企業としても従業員の満足度アップ、対外的なイメージアップにつながり、さらに保育に関わる求人も増えるなど、保育士にとってもメリットがあります。まずは、企業内保育所導入のメリットを紹介しましょう。

企業内保育所導入のメリット

企業内保育所のメリットは働く女性に限ったことではなく、企業や保育士にもあります。それぞれにどんなメリットがあるのでしょうか。

働くパパママ側のメリット

まず企業内に保育所があることで基本的には「保育所の営業日・営業時間=企業の営業日・就業時間」となります。勤務時間に合わせて保育所を利用できることは、働く意欲の高い父親母親には嬉しいメリットでしょう。特に、土日や祝日に勤務がある人は、預け先の確保に奔走しなくてもよいことは大きなメリットです。

また、職場のすぐ近くに子どもがいることで様子を知りやすく、急に具合が悪くなったり、災害が起きた場合なども対応がしやすいでしょう。

企業側のメリット

育児をしながら仕事ができる環境を構築することは、結婚や出産などを理由にした離職防止につながります。企業内に保育所を設けることで企業としてのイメージアップにもなりますし、求人情報を出す際のアピールポイントとしても応募者にインパクトを与えます。

企業内保育所の設置は、優秀な人材を確保するための有効な手段ともいえるのです。また従業員が安心して働けることで労使間の信頼関係も強固になります。従業員が安心していい仕事をすることは業績アップにもつながり、組織運営に好循環をもたらすでしょう。

保育士側のメリット

一般の保育所に勤める場合は、土曜日や夏季休暇などでもシフトを組んで働くケースが多いですが、企業内保育所では基本的には企業の休日が保育所の休日でもあります。

また企業内保育所で預かる子供の年齢や規模は、0~2歳児、20人未満が大半であるとされています。低年齢児を扱うことが多いことから、保育士の経験作りには魅力的な仕事に映るという声もあります。

さらに運動会や発表会などの行事を行わない保育所も多く、イベント行事に労力を費やすことが少ないことも、メリットのひとつと言えます。

企業内保育所導入のデメリット

企業内保育所の導入についてはメリットがある反面、デメリットも存在します。どんなデメリットなのか、それぞれの立場から紹介します。

働くパパママ側のデメリット

保育はシフト制で行われているケースも多く、日によってスケジュールが異なるという場合もあるようです。

保育途中で保育スタッフが入れ替わるとなると、食事や睡眠といった子どもの健康状態や遊びの状況などについて、引き継ぎのコストが発生するということです。保育所の運営体制によるところが大きいですが、保育スタッフ間や、保護者への情報共有については、不安を感じる人もいるかもしれません。

そしていまは本社に設けられることが多いため、本社以外の事業所では保育所利用が現実的ではない場合があります。

企業側のデメリット

まず企業内保育所は無認可保育所であることから、その補助金は5年で打ち切られます。当然企業にとってコスト的にも大きな負担がかかります。

保育所閉鎖となっては企業のイメージダウンにもつながるため、導入にあたってはしっかりとした運営計画を立て、計画的な運営を行う必要があるでしょう。

また企業内保育所に多く見られるのが、土地の問題です。企業内もしくは企業の近隣という設置場所が限定されてしまうため、用地の確保が難しく、設置賛成派と反対派でトラブルになることもあるようです。

そして保育士が不足していることも、運営を厳しくさせています。

保育士側のデメリット

企業内保育所は企業が運営していることから、企業の業績次第では保育所が閉鎖されてしまう可能性もゼロではありません。

前述のように土地の確保についても課題がありますから、保育所の敷地面積が狭く、園庭がない場合も少なくありません。設備面が不十分ゆえに保育業務を工夫する必要があるなど、保育士としても悩むところがあるようです。

レポートの提出やプレゼンなど、一般の保育所では求められない業務が発生する場合もあり、運営する企業の要求に応えるスキルも必要となるでしょう。

企業内保育所の導入事例4選

実際に企業内保育所を導入している企業を4つ紹介します。

各企業とも職場環境の改善に全力で取り組んでおり、他の企業内保育所にはない独自性や方向性を打ち出し、従業員の子育て支援を行っている様子がうかがえます。

こがも保育園(日本アイ・ビー・エム)

こがも保育園は日本IBMの企業内保育所で、グローバルワークライフファンドの資金提供により、2011年に設立されました。

日本IBMビル内に設置された保育園には2か月~5歳児までのおよそ30人の子どもが預けられ過ごしています。

園では英語プログラムをはじめとする知育プログラムが充実しているほか、看護の師常駐・医療機関との提携により、万全の病児保育を行っています。

WEBカメラで子どもの様子を確認することもでき、クリーニングや延長保育など働くパパ、ママの負担を減らす取り組みを行っています。

どわんご保育園(ドワンゴ)

どわんご保育園は2014年12月にドワンゴ本社オフィスに設置されました。

満1~2歳までの幼児、定員10名を対象に保育を行っています。

ドワンゴでは2013年のオフィス移転に伴い、社員の活性化を目的にカフェやリラクゼーション施設の設置に加え、女性が活躍するための環境づくりにも着手し、保育園開園の運びとなりました。

開園当初は4名の入園者で始まり、その際には出産後に受け入れてくれる保育施設が見当たらずに復職が困難だった女性が無事復職を果たしています。

早速、働く女性のための心強い味方として保育園を内外に示す形となっています。

ハッピーローソン保育園(ローソン)

ハッピーローソン保育園は2014年7月に本社オフィスビルに開園されました。

コンビニ業界では初の事業所内保育所となり、0歳児~就学前の幼児までの定員20名を対象に保育が行われています。

設置の根底には働きながら子育てを行う従業員の不安の払拭が目的として挙げられます。

出産後の復職だけでなく、子育て未経験者向けにも「ハッピーローソンプログラム」も開催、子育て経験の有無や男女を問わず、育児と仕事の両立する環境づくりに注力しているようです。

育児時短制度や勤務日数減少をはじめとする数々の子育て支援策も打ち出しており、その本気度がうかがえます。

バジリッコ保育園(エスビー食品)

バジリッコ保育園は、いろいろな人材を採用するダイバーシティ環境の整備の一環として、エスビー食品が2015年4月に開園した企業内保育所です。

板橋スパイスセンター内に設けられた保育所では0歳~就学前の幼児、定員18名を対象に保育が行われています。

板橋スパイスセンター内に設けられた園では、バジル栽培や畑仕事体験、動物との触れ合いなど、自然との触れ合いが大きな特徴のひとつとなっています。

エスビー食品では創業100周年を節目とし「S&Bポジティブアクション」を展開、女性の職場環境に関する目標値を定め、達成に向けた取り組みを行っています。

将来性を考慮し企業内保育所を利用しよう

企業内保育所は企業のイメージアップや離職率の低減、働く女性の仕事と子育ての両立、保育士の待遇や経験面などでメリットがあります。

一方、設置運営にかかる問題や一般の保育所とは異なる保育スケジュール、不安定な保育士の待遇・業務内容など、デメリットもあります。

このため企業はコストなどの運営面、働く女性は自分や子どもの順応性、保育士は自分のスキルアップ面など、それぞれの置かれた立場や状況に応じた注意点や将来性を洗い出し、導入・活用の検討を行うべきです。