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現金志向が強い日本で、キャッシュレス化普及のカギはコスト削減
大手ではキャッシュレス決済への取り組みが進んでいるが、日本の現状は海外に比べ、まだ遅れているようだ。野村総合研究所(NRI)が2月に発表したレポート「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」によると、2016年の日本のキャッシュレス比率は12か国中10位、19.8%でまだまだ低い。
トップの韓国はなんと96.4%、日本がいかに遅れているかがわかる。
出典:「諸外国におけるキャッシュレス比率の変化とキャッシュレス化進展の施策例」野村総合研究所
その要因として、同社では「電子マネーの利用が拡大しているものの、引き続き現金志向が強く、キャッシュレス化進展せず」としている。また、同レポートでは、国内の現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査の分析結果を発表しているが、国内では95%の企業において、毎日1回/台以上のレジ現金残高確認作業が発生しているという。
そして、企業規模が小さいほど、現金関連作業コストの負担割合は大きく、従業者50人未満の企業では、現金関連の作業人件費が売上全体の0.51%を占めると分析している。
回答企業の現状としては、全体の約9割がカード決済を導入している。加えて、プリペイドカード・電子マネー・銀聯(ぎんれん)など複数の決済手段が導入されているもわかった。ただし、カード決済が売上高に占める割合は平均22%にすぎず、現状では現金が6割を占めていることもわかった。
業務が100%キャッシュレス化されるまで無くならない固定コストとは
同社によると、業務が100%キャッシュレス化されるまで無くならない固定コストとはこんなにある。
• 警送会社委託費(現金輸送・ATM現金補填、ATM監視)
• 金融機関窓口人件費(接客・伝票処理・出納)
• レジ締め作業
• ATM機器(ハード/ソフト)
• ATM設置手数料
• 銀行券製造委託費
• 貨幣製造コスト
• 紙幣鑑別機
• 出納機・システム
• レジ(キャッシャー)
• 自動券売機
• 計数機
• ATM事業運営経費
• 警送会社委託費(売上回収)
• 偽造紙幣損害
また、現状の現金決済インフラを維持するために、年間約1兆円を超える直接コストが発生していることも判明しているという。
政府の取り組み大手ベンダーの動きもあり、日本においてもキャッシュレス化は進行している。まずはこのレポートにある、現金決済での大きなコストを、各社は認識すべきである。このコストを削減できるだけでも、キャッシュレス化のメリットは大きいと理解できるはずだ。
産官学連携からなる「キャッシュレス推進協議会」とは
経済産業省は7月3日、産官学からなる「キャッシュレス推進協議会」を立ち上げた。これは、2018年4月に公表した「キャッシュレス・ビジョン」の提言をうけて設立されたもの。
2025年の大阪・関西万博に向けた「支払い方改革宣言」として、「未来投資戦略2017」で設定したキャッシュレス決済比率40%の目標を前倒しし、より高い決済比率の実現を宣言している。
このような日本のキャッシュレス化を推進していくには、国をあげての取り組みが産学官が連携した組織として「キャッシュレス推進協議会」の設立が提言された。
今回、この「キャッシュレス・ビジョン」の提言を踏まえ、発起人と設立メンバーによって「キャッシュレス推進協議会」の立ち上げに至った。今後も引き続き事務局が会員の募集を行っていく。
国内外の関連団体と相互連携
同協議会の目的は、早期のキャッシュレス社会を実現することだ。このため、国内外の関連諸団体・組織・個人、関係省庁などと相互連携を図り、キャッシュレスに関する諸々の活動を推進していくという。
経済産業省では、活動の具体的な例として以下を挙げている。
・QRコード支払い普及への対応(標準化の取組)
・消費者・事業や向けのキャッシュレス啓発
・関連統計の整備
また、同協議会の役員としては会長に 日本電信電話 相談役 鵜浦博夫氏、副会長に三越伊勢丹ホールディングス特別顧問 石塚邦雄氏、みずほ銀行取締役頭取 藤原弘治氏が就任しており、他にも以下の企業。団体から代表者の理事就任が予定されているという。
ロイヤルホールディングス、ソフトバンク、日本クレジット協会、イオンリテール、東日本旅客鉄道、中央大学法務研究科、セブン‐イレブン・ジャパン、FinTech協会、Origami、日本消費者協会 、キャッシュレス推進協議会、 山下・柘・二村法律事務所
Yahoo! はバーコード決済サービス「コード支払い」
今回の「キャッシュレス推進協議会」立ち上げのみならず、民間の大手企業によるキャッシュレス決済への取り組みが進められている。ここから各社の動向をみていく。
出典:プレスリリース
Yahoo! は6月からバーコードを使った実店舗でのスマホ決済機能「コード支払い」の提供を開始。これは、同社が提供している「Yahoo! JAPAN」アプリ上で、バーコード(1次元バーコード、QRコード)を表示し、店舗の端末やレジに提示することで決済できるという消費者提示型のバーコード決済サービスだ。
ユーザーは、クレジットカードとコンビニエンスストアや銀行口座などからチャージした「Yahoo!マネー」(電子マネー)の2種類、支払い方法を選択できる。使用方法は、「ヤフーのマーク」がある店で、口頭で使用を伝えて「Yahoo! JAPAN」アプリにユーザー専用のバーコードを提示するだけ。また、支払い金額に応じて200円(税込)につき1ポイントのTポイントがたまるという。
また、今秋には店舗側が提示するQRコードを、ユーザーが「Yahoo! JAPAN」アプリで読み取って決済する店舗提示型の「読み取り支払い」の提供を開始する予定だ。
月間流通総額が約1,300億円を突破したLINE Pay
続いてはLINEである。同社は6月にカンファレンス「LINE CONFERENCE 2018」を開催した。そこで、LINE Payをはじめとした同社のFinTechの取り組みについて紹介している。
それによると、LINE Payは、グローバルの月間流通総額が約1,300億円を突破したという。2018年の送金件数は前年比2.8倍、決済額は同2.5倍、QRコード決済は同11倍に増加したとしている。
また、金融サービスを手がけるLINE Financialの設立をはじめ、テーマ型投資サービスのFOLIOとの提携、野村證券との証券サービスの提供、損保ジャパン日本興亜との損害保険サービスの提供も発表している。
さらに、LINE Pay COOの長福久弘氏によると、QRコード決済の利用を推進するため、8月から最大5%のポイント還元を実施するという。
最短2クリックで買い物が完了する「Amazon Pay」
Amazon は、スマホによる決済サービス「Amazon Pay」を展開中である。これはAmazon以外のサイトでも、Amazonアカウントで決済できるというサービスだ。Amazonアカウントに登録された配送先とクレジットカード情報を利用するため、最短2クリックで買い物が完了するのが特徴だ。
つまり、一度でもAmazonで購入したことがあれば、すぐに利用できるサービスである。また、セキュリティ面にも気を配っており、どのサイトにもクレジットカード情報がわたることなく安全に利用できるという。
2019.10.19 追記
「100億円あげちゃうキャンペーン」が話題になった「PayPay」
PayPayは、ソフトバンクとZホールディングス(旧ヤフー)の合同出資で運営されているキャッシュレス決済サービスだ。「100億円あげちゃうキャンペーン」をはじめとした多くのキャンペーンにより利用者数や知名度が急上昇している。スマートフォンに表示されたバーコードを提示すれば支払いができ、簡単かつスピーディに決済可能(その他決済方法あり)だ。
大手コンビニや総合スーパー、ドラッグストア、飲食店など300以上のチェーン店が加盟しており汎用性は高くなっている。期間限定のキャンペーンが多かったり、最短1分・無料で登録できたりするのも利用者が多い要因といえるだろう。
さらにYahoo! JAPANカードでPayPayにチャージすれば、PayPayボーナスが1.5倍付与される点もメリットだ。