業種や業界を問わず、働く意義が問われる昨今、企業にとっても個人にとってもモチベーション維持が課題です。
自己実現したい個人と、生産性を上げたい企業、また同時に目標を達成するには、組織全体のモチベーション向上も必要です。これらのために、企業はミッションステートメントを設定します。有名企業も、ミッションを明らかにし、共有することで、企業の成長に役立てています。
そこで本記事では、ミッションステートメントの定義や事例、ミッションステートメントを作成する際のポイントや要素を解説します。
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ミッションステートメントとは
ミッションステートメントとは、企業や従業員の共有する価値観・社会的な使命、すなわちミッションを、実現するための指針として落とし込んだものをいいます。ミッションステートメントは、組織として何をすべきか、どうなるべきかを決める基準になります。行動の基本的な考え方として定められるのが一般的です。
ミッションステートメントが重要な理由
企業を取り巻く環境は非常に複雑になっており、正解が一つではない難しい選択を頻繁に迫られます。そういった場面で、指針となる原則や価値観がなければ、場当たり的に選択をしてしまい、行動に一貫性がなくなります。
ミッションステートメントを定めておけば、難しい選択の指針になるだけでなく、顧客や社会に対して「どういう企業なのか」「何を大切にしているか」といったメッセージを発信できます。こういった組織の価値観に共感し、顧客になってくれるケースも少なくありません。
ビジョンステートメントとの違い
ミッションステートメントと似た概念に、ビジョンステートメントがあります。
ビジョンステートメントは、企業が達成したい夢や目標を文章化し、描いている未来を社内外に共有します。起業家が会社を興す際に定めるのが一般的です。他のスタッフと共有したり、投資家に訴えて資金を募ったりします。
いわば、ビジョン達成のための指針がビジョンステートメントなのです。
大手企業のミッション事例10選
ミッションステートメントを具体的に理解するために、まずは大手企業の設定しているミッションの例を紹介します。
1. ファーストリテイリンググループ
ファストフッションブランド「ユニクロ」を持つ衣料品販売大手、ファーストリテイリンググループのミッションです。
本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します。
独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します。
2. ローソン
全国にコンビニエンスストアをチェーン展開する、ローソンのミッションです。
私たちは"みんなと暮らすマチ"を幸せにします。
3. キリンホールディングス
「キリンビール社」「メルシャン社」「キリンビバレッジ社」「キリン社」といった、酒類・飲料事業の企業を統括するキリンホールディングスのミッションです。
あたらしい飲料文化をお客様と共に創り、人と社会に、もっと元気と潤いをひろげていく。
4. オリエンタルランド
「東京ディズニーリゾート」を運営するオリエンタルランドのミッションです。
自由でみずみずしい発想を原動力に、すばらしい夢と感動、ひととしての喜び、そしてやすらぎを提供します。
5. カカクコム
購買支援サイト「価格.com」やレストラン検索・予約サイト「食べログ」などを提供するカカクコムのミッションです。
ユーザー本位の価値あるサービスを創出しつづける(生活者視点の新しい価値を提供して、日々の生活を豊かに)
6. キヤノン
映像機器、事務機器、半導体露光装置などを製造する大手電機メーカー、キヤノンのミッションです。
キヤノンの企業理念は、「共生」です。共生は文化、習慣、言語、民族などの違いを問わずに、すべての人類が末永く共に生き、共に働いて、幸せに暮らしていける社会をめざします(※一部抜粋)。
7. 日本ハム
大阪に本社を置くハムやソーセージなどの食品加工メーカー、日本ハムのミッションです。
わが社は、「食べる喜び」を基本のテーマとし、時代を画する文化を創造し、社会に貢献する。
わが社は、従業員が真の幸せと生き甲斐を求める場として存在する。
8. JALグループ
大手航空会社、JAL(日本航空)のミッションです。
全社員の物心両面の幸福を追求し「一、お客さまに最高のサービスを提供します。」「一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。」
9. 江崎グリコ
製菓を中心に、食品・乳製品・健康食品などの製造・販売を手がける総合食品メーカー、江崎グリコのミッションです。
『おいしさと健康』(おいしさの感動を 健康の歓びを 生命の輝きを。Glicoは、ハート・ヘルス・ライフのフィールドでいきいきとした生活づくりに貢献します。)
10. Microsoft
Windowsを中心に、ソフトウェアの開発・販売を手がける、Microsoftのミッションです。
Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする。)
大手企業はこのように、さまざまなミッションを掲げています。自社や自身のミッションを考える際、参考にしてください。
ミッションステートメントの作り方 9要素
ミッションを策定したら、ミッションステートメントを作成する段階に入ります。続いては、主に企業がミッションステートメントを作成時に必要とされる9要素について紹介します。以下のポイントを押さえておきましょう。
顧客
自社が対象とする顧客を明確にする。お客さんはだれで、いかにして価値をもたらすのか。
製品・サービス
自社が扱う主要な製品(サービス)は何か。その特徴と売りは何か。
市場(マーケット)
自社の事業領域はどこで、他の市場との違いはどういうところか。なぜその市場を狙うのか。
技術(テクノロジー)
どういう技術・テクノロジーを利用して事業を展開するのか。その理由は何か。
企業理念
企業理念は何か。自社がもっとも重視する価値観や信念はどういうものか。顧客にどういう価値を提供するのか?
企業の強み(競争優位性)
自社の強みは何か?他社に比べて優れている点はどこか。
企業の成長性や財務の健全性
自社の今後の成長性や、財務面での健全性はあるか。
社会的責任・自然環境への配慮(パブリックイメージ)
企業の社会的責任や環境への配慮など、パブリックイメージはどうか。
社員に対する姿勢
スタッフをどのように扱うのか。待遇面やキャリアに関する考え方はどうか。
個人の目標実現を促す『7つの習慣』
ミッションステートメントは企業のみならず、個人の目標達成にも大きな効果を発揮するといわれています。たとえば、有名なスティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣 人格主義の回復』は、ミッションステートメントを個人に広めるきっかけとなった良書として知られています。
同書では、第二の習慣で、個人ミッションの明確化を説明しています。コヴィー博士は、自らが果たすべき原則をもとに、信条や理念を明らかにすることが、人生の成功には必要であると述べています。ビジネス書としてだけでなく、人生を考えるうえでも役立つと評されています。
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個人向けミッションステートメント作成ポイント
それでは、個人用のミッションステートメント作成に必要なポイントは何でしょうか。
そもそもミッションステートメントは人それぞれに組み立てるものです。形式や内容、分量、項目は決まっていません。箇条書きでも文章でも、数行でも数ページでも構いません。考えたことを書き出してみましょう。作成方法は一つではありません。自分なりに工夫しながら納得のいくミッションステートメントを定めることが重要なのです。
ここでは主に2つの観点を紹介します。
(1)自分の葬儀を想像する
さまざまな書籍などで紹介されてる方法ですが、「自身の葬式を想像してみる」というものがあります。だれもが人生の終わりとして死を迎えるわけですが、葬儀に参列してくれる人々にどう思ってほしいか考えましょう。
そこから遡ると、今の自分が何をすべきか、どの目標を立てるべきか明らかになります。企業のビジョンと同じで、理想像を描き、逆算すれば、自分が成し遂げるべきミッションとそこへ至る道筋が明らかになるでしょう。
(2)何度も修正する
重要なのは、一度作成して満足するのではなく、定期的に振り返って修正することです。徐々に精度の高いミッションステートメントができていきます。
どんなミッションステートメントも、その時点でのベストに過ぎません。数か月後でも数年後でも読み返してみて、違和感を覚えたら、内容を進化させましょう。自身の成長にしたがって、とる姿勢や行動が変化するのは自然なことです。
なんとなく「違うな」と感じたら、どこに違和感があるのかじっくり考え、納得のいくように修正しましょう。ミッションは一生モノですから、その時々にあわせてアップデートし続けることが重要です。
ミッションステートメントで着実に目標達成を
成長に欠かせないミッションステートメントの概要と、設定のメリットを解説しました。
企業と個人の双方において、ミッションステートメント作成は継続的な成長と目標達成に欠かせないことだといえます。設定には、過去と現状を俯瞰しつつ、未来像を思い描きましょう。未来から現在を考えることで、今自分がしなければならないことが明らかになってきます。企業の場合はビジョンやビジョンステートメントとともに考えてみるとよいでしょう。
個人や組織が成長し、社会に価値を提供し続けるためにはミッションを描く必要があります。実現に向けて、「いま」にあったミッションステートメントを策定し、着実な目標達成を目指しましょう。