ホリエモンが学校設立、記者会見全文 「ゼロ高」にこめた教育と社会への本音とは

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記事の情報は2018-08-13時点のものです。

ホリエモンこと堀江貴文氏が発表した、ゼロ高等学院――「ゼロ高」の開校。「座学を目的とせず、行動を目的とする」をコンセプトとし、ファッション、農業、経営などさまざまな分野のプロに実践を学べるうえ、高校卒業資格も取得できる。「学校教育を壊す(ディスラプトし再構築する)」と話すホリエモンがつくる学校とは。記者会見全文をまとめた。

7. ゼロ高が、本当に目指すもの

堀江:
だからゼロ高でやるのは、本当にこれから必要とされてる人をつくることが主目的なんで。

日本のすし職人はまだまだ足りないと思います。なんでかっていうと、あれってサプライチェーンマネジメントっていうか、サプライチェーンがすごく大事で、要は末端の漁師にいたるまで魚のシメ方知ってるのって日本人ぐらいなもんですよ。だからやっぱりいい魚のさばき方とかシメ方ってのは、いちから漁師さんに教えていくってなったら結構ムリゲーなんですよ、他の国では。

だから日本に富裕層がどんどんやってきて、日本のすし屋はまだまだ足りないよねって絶対なる。だからすし屋になるのもめちゃくちゃおすすめしてるんですけど。儲かるし、しかもリスペクトされる。人間ってやっぱ必要とされてるとすごい生きがいがあるんで。とかっていうことが僕の中にいっぱいあるわけです。

で、あともうひとつは、教養って結構ツボをつくみたいなところがあって、もう「この本を読め」でよかったりするんですよね。5冊ぐらい人生で一生使える哲学を学ぶための本です、どうぞって。たとえば今だったら「サピエンス全史」とか「嫌われる勇気」とか、竹中平蔵さんの「経済ってそういうことだったのか会議」とか、何冊か「これ読んどけば大体大丈夫」みたいな本をただすすめるだけでも、それだけで実は高校3年分の哲学みたいなものを学べたりとかするんだよね。ってことを(今の教育は)やんないですよね。

会見で話す堀江氏

坪田:
もうおっしゃるとおりで!でも、あえてね、学校教育のいいところをいうと、そういう意味だと教養をね、たぶん人類が数千年かけて体得してきた学問とかを、たかだか18年くらいで全部マスターできると。0123というところから、18歳くらいになったら微積ができるようになるわけじゃないですか。

だけど、堀江さんとかになってくると、さらにそれを効率化しようとしている人だから、18年かけなくてもこの5冊でよくね?っていう状態になってきてるんだと思うんですよね。

堀江:
そうなんですよ。微積分にしても、ぶっちゃけ今の教育って積み上げ型なんで、微積を覚えるモチベーションないっすよ。微積分ていわれて、へっ?ていう。

坪田:
それこそだから、何のためにこれやるのみたいな。いや高速道路の構造計算に必要なんだとかいわれても、いや俺高速道路つくらねーしみたいな。

堀江:
だけど、たとえばプログラミングでフーリエ解析が必要だっていうと、なんか学ぶ気になると思うんですよ。

坪田:
いやー、そうですよね。だから結局、目的と学ぶことの一致が行われてないところが問題なんだけど、それをこのゼロ高校ってのは、たとえば料理もなんでここに醤油をこんだけ入れるかっていうと、科学的にはこういう変化が起こるからだみたいな、そういうことを学べたりする。

堀江:
メイラード反応とかね。醤油はなんであんな色してるの?それはアミノ酸が酸化、要は酸化するとあの色になっちゃうんですよ。だから紹興酒の色とかと一緒です。とか、そっからいくと、化学ちょっと勉強しようかなってたぶん(なる)。

坪田:
実をいうとこれ海外の学校とかだったりすると、中高生でも、三角比とかもある程度具体的な事例から問題になったりするんですけど、日本の問題ってなんかすごい抽象的だったりするんですよね。

8. 漫画と映画と「つくること」

ここで、佐渡島氏が到着。3人での会話が始まる。

堀江:
HIUでは何冊も本をつくってるんですけど、本つくるのって、いいっすよね。

坪田:
つくると勉強になりますよね。

堀江:
うん、さっき例に挙げた箕輪君なんかまさにそうです。彼は多動力の編集をしながら、ま、彼自分で言ってましたけど多動力って箕輪の本ですからね。僕は材料を提供しただけで。僕の材料はありますよ、と。で、「あなたがつくりたいものは何なんだ?」「多動力というものをつくりたいです」。僕のすでにある対談とか著書とかから多動力に関わる部分を抜き出してきて、僕の稼働なんて後書き前書きのインタビューだけですからね。本当に。

佐渡島:
人の編集行為をするなかで自分事化するっていうか。僕も「ドラゴン桜」をつくってくなかで、学びになることを自分の過去の経験のなかから整理していくことによって、それが強化されてって、とかっていうのがありました。

堀江:
俺ね、いま、漫画の構造をすごい分析してて。漫画って、文字と映像というか文字と画像が一緒に入ってくるでしょ。あれね、コンピュータのCPUとGPUにたとえるとすごいわかりやすいんですけど、要は、文字ってCPUのほうで、GPUが画像の方なんですけど、それが同時に頭の中に入るんで、めちゃくちゃ効率いい。だから理解力の高い人たち、時間を大事にしたい人たちの急峻メディアとして、世界的にメジャーになっていると思っていて、マーケットは急拡大すると思ってるんですけど、漫画をつくれる人ってすごい少なくて。てか、いい漫画をつくるひとが少なくて。

いい漫画をつくるひとって何がうまいかっていうと、ネームっていう、絵コンテみたいなものをつくるのがうまい人なんですけど、この絵コンテをつくる部分が全く理論化されてないんですよね。

佐渡島:
数年前に出たPSのソフトで、「マンガ・カ・ケール」っていうソフトがあるんですよ。「マンガ・カ・ケール」の中に、告白するシーンとか詰問されるシーンとか、さまざまなシーンごとにどんな構図が最適かっていうテンプレがあるんですよ。で、漫画のいろんなシーン、1000種類でもいいんでテンプレをつくっちゃって、それの組み合わせと途中自由に、とかっていうふうにすると。

堀江:
いいっすねー、頭いいっすねえ。できるかも、それめっちゃできるかも。

佐渡島:
テンプレを、既存の漫画を機械に読ませて、構図がこういう場合だとこうなのかとかっていうのを整理してったら、結構出てくるはずだと思って。そういう見方で過去の漫画読んだことなかったんですけど。

堀江:
あ、それすごい。そういうのもやりたいんですよ。ネームがつくれるやつとかを大量に育成すると、画がうまい人ってのは結構いて、しかも絵の部分って、アルトラ社(アルトラエンタテイメント)とか、割と大量生産をするような会社が出てきてる。

佐渡島:
それができるようになったら映画監督とかもなんかつくれそうですよね。

堀江:
映画はむしろほぼ理論化されてます。ハリウッド映画とかってもう、何分何秒にこのシーンを入れると売れるっていうのが全部決まってます。

佐渡島:
脚本の文字がかなり感情の分析ができる、そういうのがされだしてるんですけど、絵と組み合わせの漫画はまだそれができてないんですよ。

9. 「高校生すしで星をとりたい」

堀江:
あと僕ね、去年1年間、スタディサプリLabっていうスタディサプリさんがやってるオンラインサービスで、オンラインじゃなくてこんな(会見のような)感じで、僕が各界で活躍している人たちをインタビューするって企画をやったんですよ。これはすげーいいなと思って。

できれば僕と対談したことないような人たちをキャスティングしようと思って、たとえばなんだ、「人機一体」っていう、マスタースレーブシステムのリモートででっかいロボットを動かすのをつくってるおじさんとか、いきものががりの人とかを呼んで話聞いたんだけど、元AKBの高橋みなみとか、すっごい面白かったんですよ。

とくにもう(チームラボの)猪子の回は神回っす。僕も勉強になったし、要は彼が言ったのはグランドビジネスとアンディ・ウォーホルの関係、ラグジュアリーブランドとアンディ・ウォーホルの関係について。もうこれだけでそっち系の人は道決まったなみたいな、僕すごいそれを応用させてもらってます。ていうような学びとか気づきを、今だったらリモートでたくさんの人たちに届けられるようになった。あとN高にも協力してるんで、すっごい学ばせてもらって、そのノウハウを全部ゼロ高に入れます。

坪田:
そういう意味だとね、1対40って学校にあるじゃないですか、クラスがね。で、40人もいたら細部ってほぼみれないんですよね。てなったら、むしろ1対40じゃなくて超優秀な超一流な人が話してたりとかするやつを見るほうが、むしろ生徒のためになったりとかするんじゃないかなっていうふうに思います。

堀江:
しかもね、僕らHIUが裏にいるんで。HIUってお金持ちの人も結構いて、たとえばすし屋でこいつセンスあるなって思ったら、出資する人いっぱいいますからね。で、すし屋出して、高校生すしつくりたくて。で、高校生すしがミシュランの星とるみたいなのをやりたいんですよね。

坪田:
確かに、十何歳とかで世界一になる人いるけど、すしで十何歳で世界一なんていないですね。

堀江:
たぶん、フィギュアスケートで世界一になるより、すし屋で世界一になるほうが簡単ですよ。世界一いっぱいいるから(笑)。

でもね、ほんとにすし屋になったらびっくりしますけど、僕らも「和牛マフィア」って和牛のやつやってんすけど、もう2年前に「俺シェフになるから」って言ったKEISUKE MATSUSHIMA(ケイスケ マツシマ)って人がいて、彼の話を聞いてて「あ、俺もできそう」ってやったら、うちの店にデビッド・ベッカムが来たりとか、うちの相方がヨルダン国王のためにディナーをやったりとかして、「KEISUKE MATSUSHIMAが言ってたこと本当だった」つって。ハリウッドセレブのために料理をつくるとか、モナコ国王のために料理つくったとか言ってんだけど、できた。

だから、料理ってすっごいいいですよね、権力にアクセスできるから。センスがあれば、ですけど。で、そういう子どもたちってたくさんいると思うんで、その人たちに気づきときっかけを。柔軟なうちにいいですよね。ぜひお願いします。

ファーストペンギンはどこへ

ゼロ高設立に至った経緯や裏側、教育に、社会に対する思い。さまざまな話が交わされた45分間だった。ゼロ高1期生――ファーストペンギンは、どこへ向かうのだろうか。卒業生の将来が楽しみだ。