アメリカ人約6割が「日本旅行をしたくない」インバウンドの課題とは

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記事の情報は2018-08-25時点のものです。

訪日ラボは6月29日、自国に住むアメリカ人を対象に訪日意向などについて調査し、その結果を公表した。これによると、日本に行きたくない、興味がないなど訪日にネガティブな回答をした人は6割を超えたという。中国をはじめとするアジア圏からの旅行者は年々増えている中、アメリカ人にとって日本旅行はなぜネガティブにとらえられてしまうのか。
アメリカ人約6割が「日本旅行をしたくない」インバウンドの課題とは

アメリカの「潜在的訪日客」について調査

現在、訪日外客数、インバウンド消費など外国人の訪日数が増加している。また、2020年の東京オリンピックに向け、さまざまなインバウンド対策や誘致施策が行われている。

今回の調査は、訪日外国人向けの調査ではなく、自国で普通に暮らすアメリカ人を「潜在的訪日客」として対象に、その訪日需要に関する調査を行った。調査にあたっては、世界80か国4,000万人の調査回答者へのアクセスを有し、海外リサーチに特化したソリューションを提供するSyno Japanの協力を仰いだ。

この調査の中から、「日本旅行をしたくない理由」にスポットをあて、インバウンドにおける課題について考察する。

「日本旅行をしたくない」は約6割も

出典:プレスリリース

まず、日本が観光目的の旅行先になるかを質問したところ、アメリカ人のおよそ40%近くが「訪日旅行に興味がある・行く・行きたい」と回答した。この結果について、同社では潜在的インバウンド市場が十分にあることが伺えるとしている。

しかし、一方で、「興味があるが、行きたくない」が28.03%、「日本への旅行に興味がない」が33.65%といったネガティブな回答は60%強もあった。この層の訪日需要喚起が今後の課題となりそうだという。

日本旅行に行きたくない理由は「高そうだから」

出典:プレスリリース

では、なぜ興味がないのか。先ほど、ネガティブな回答をした人に対し、その理由を問うと「高そうだから」が一番の理由に上がった。

「海外旅行に行くつもりがない」や「日本が嫌いだから」との回答者については、訪日需要の喚起については打つ手はないが、その他の回答については、適切な情報発信によって訪日需要の喚起の可能性がある回答が数多くあるという。

また、「その他」回答者の自由回答で印象的だったのは、「トランプ大統領が世界中で嫌われており、他国民のアメリカ人への嫌悪がありそうだから海外旅行したくない」といった世相を表すような回答も見られたことだ。

出典:プレスリリース

さらに、年収別に集計すると、意外にも「高そうだから」という理由は収入の大小によらず上位になった。また、明らかに収入で回答に有意な差があるのが「他の国のほうが優先度が高いから」という回答だった。これは、年収10万ドル以下が8.67%なのに対し、10万ドル以上では25.79%となっている。

日本の魅力を体験させる付加価値を

出典:プレスリリース

では、彼らの訪日需要の喚起するにはそうすれはいいだろうか。上の図を見ると、もともと、アメリカ人は、ある商品やサービスを購入することで得られる使用価値を重視した消費行動である「コト消費」、つまり体験系コンテンツの需要が高かった。このアメリカ市場が、やはり潜在的訪日客においても、「日本の歴史・伝統文化体験」や「自然・景勝地観光」といったコンテンツに需要があることがわかる。

出典:プレスリリース

また、日本への興味関心を聞く質問を、10万ドルを境に年収別に集計してみると、高所得者層・富裕層ほど「コト消費系コンテンツ」への需要が高い様子が見られた。

「高そう」と感じているアメリカ人の多くは、実際にどのような楽しみや満足感を得られるのかイメージがついていない。まだまだ日本の情報発信は行き届いていないのが現状だ。世界中で利用者がいるインスタグラム、Facebookなどを駆使し、まずは具体的な楽しみ方を途切れなく発信する姿勢が必要だろう。