飲食店向け食材ECベンチャー八面六臂、松田雅也代表は「資金調達後の危機」をどう乗り切ったか

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記事の情報は2018-09-03時点のものです。

柳谷智宣のホットベンチャー・ケーススタディ。今回は、飲食店向けの総合食品EC事業を手がける八面六臂(はちめんろっぴ)代表取締役松田雅也氏にインタビューを実施。同社の歴史を振り返りながら、創業の経緯から急成長期、資金調達後に起こった組織の危機、第二創業期を迎えた現在と今後の展開について話を聞きました。

資金調達を受けたがうまく使えず、大量の離職を招いてしまう

ーー八面六臂は何度か資金調達をしていますが、当時のことを教えてください。

松田氏:成長に伴い、さまざまなところから出資をお預かりするようになりました。まずエンジェルラウンドで個人投資家の方などから1,000万円をお預かりし、1年後くらいにAラウンドでベンチャーキャピタルから1,000万くらいファイナンスしていただきました。

ファイナンスしだすと、PRとかメディアに出て行く必要が出てくるんです。人を集めて、事業に投資して大きくしなければいけないので。

そこからさらに大きな出資を受けたのですが、当時はお金の使い方をよくわかっていませんでした。人事制度などもなく、良さそうな人がいればとりあえず採用してしまって、などを繰り返し、2014年から2、3年くらいでグーッと人数も増えていったものの、まったくマネジメントがきいておらず、その結果、組織の雰囲気が悪化していきました。

ーー悪化とは、具体的にどうなったのですか?

松田氏:人事制度がないので、採用の際に前職給与を基準に、都度、雇用契約を締結していたので、給与水準が高い層と低い層ができてしまい、しかしその給与水準と実際の事業におけるパフォーマンスが釣り合っておらず、結果、組織のあちこちで不平不満やモチベーションダウンが発生するみたいな状況になりました。あと、経営幹部にあれこれ任せたものの、任せ方が悪く、お客さまにもご迷惑をかけるようなことも発生してきてしまいました。

任せるというか、悪く言うと、放漫経営です。現場のことやお客さまのことを知らない人間になんでもかんでも任せ、良くない結果が出ても知らないフリをしてました。しかし、ある時、大事なあるお客さまに大きな迷惑をかけることが起きてしまいました。そのお客さまから僕宛にたいへんなお叱りを受けて目が覚めました。

そこで組織改革をしなければならないということで、幹部含め、あらゆる社員に、現場やお客さまのところに行くように指示をしました。現場やお客さまのことを知らない人がたくさんいたので。そうすると、言い方が悪いですが、メディアでもてはやされていることだけで入社してきたメンバーからどんどん辞めていきました。結局のところ、流通業って地味な裏方の仕事ですし、また朝も早い。そうなると本当に食の事業に携わりたい人だけが残っていきました。

それでも、しなくてはいけないことですから、その組織改革を断行しつつ、また人事制度なども独自に策定し、いろいろなルールを作り上げていきました。現在(取材した2018年8月時点)では、12名ほどの少数精鋭体制になっています。