危機を乗り越え、第二次創業期を迎えた「八面六臂(はちめんろっぴ)」
八面六臂は、生産者や卸売市場と飲食店をつなぐ総合的な食品EC事業を行うベンチャー企業です。中間業者のコストを省くことで、安く飲食店に商品を届けるビジネスモデルを確立しています。
今回は、八面六臂 代表取締役 松田雅也氏にインタビューを実施。同社のこれまでの歴史を振り返りながら、創業の経緯から急成長期、資金調達後に起こった組織の危機についてお話を聞きました。
目次を閉じる
水産物から青果、精肉、加工品を扱う飲食店向けECサイトを運営
ーーまずは、御社が手がける事業について教えてください。
松田氏:ECサイトで食材を売っているのですが、簡単に言うと、料理人向けのアスクルみたいなサービスです。創業当時は水産物がメインでしたが、今は青果や精肉、加工品まで扱っています。小さな飲食店でも使いやすいロットで、少量多品種の商品をワンストップで購入できるのが特徴です。
食材流通の世界って、そもそも自分たちが食べたくないもの売っていたり、食べに行きたくない店に売っていたりすることがあります。その点、弊社は「good food,good life」という事業理念を掲げて、自分たちが食べに行きたいような飲食店に、自分たちが食べたいような食材を売るということを大事にしています。
ーー八面六臂と、一般的な食品通販サイトとの違いはなんですか?
松田氏:ECサイトで物を売るだけなら簡単ですが、飲食店向けのサービスだと、配送とか決済が意外と難しいんです。購入していただいたらその商品を配送し、代金を回収することになりますが、この「配送」と「決済」というのが一番のミソになります。
飲食店向けの食材は大きくて重いし、また水漏れしていることもあります。温度管理や当日配送も求められますので、普通の宅配便では対応できません。また参入している物流会社も少ないので、既存の専門配送業者の品質も低く、そこで、3年前から自分たちで配送網を作り、現在ではすべてのお客さまに対して自社の配送網で運んでいます。
また飲食店の食材仕入れ金額は1つの店舗だけで何十万円となることが一般的なので、クレジットカードでの決済は一般的ではありません。とはいえ、掛け売りにすると我々販売者のリスクが高くなります。そこで、飲食店様にはストレスのないようにしつつ、我々としては債権をファクタリングして現金を流動化する仕組みを独自に金融機関と連携して作っています。
この物流と決済の仕組みを作ったのが当社の強みで、中小飲食店に対する食材の流通という市場で現在、かなり有利にシェアを広げていっております。
ーー御社のウリはどんなところですか?
松田氏:お客さまから見ると、やはり安くて品質がよく、品揃えが良いところです。
安さを実現できているのは、まず単純に言うと無駄なコストかけていないことです。我々はこつこつとオペレーションの改善をし続けているので、オペレーション変動費や固定費が低いんです。
たとえばドライバーだと、一軒でも多く配送できるようにするにはどうすればいいか、というのを分析する仕組みを作っています。またペーパータオルのような消耗品も何枚使っているのかを全部ログで取っています。
もうひとつは、お客さまが積み上がっていっていることです。そうすると流通量が増えて、我々の仕入れがよくなって、さらにお客さまが増えるという循環がおきています。これには時間がかかりました。
飲食店のお客さまってお金を掛ければ一気に増えるものではないんです。あとはお客さまが増えていることを背景に、いいサプライヤーとの取引が増えてきたこともあります。5年前と今では、仕入れの単価が全然違いますよ。
安くて品質が良くて品揃えが良ければお客さまは増えますが、最近はこれに付加価値のあるサービスも考えています。品物が早く到着するとか、ネットで買い物がしやすいという付随的な使いやすさも重要です。