グーグルPixel SlateとGoogle Home Hubで家庭も企業も囲い込む、AIエコシステム完成へ

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記事の情報は2018-10-15時点のものです。

グーグルが新型の自社製スマートフォン「Pixel 3」「Pixel 3 XL」を発表したイベント「Made by Google」では、Chromebookシリーズの2in1タブレット「Pixel Slate」およびスマートディスプレイ「Google Home Hub」という注目デバイスも披露された。これらを揃えたことで、グーグルはAIエコシステムの完成に近づき、アマゾンとアップルを突き放す体制を構築した。
グーグルPixel SlateとGoogle Home Hubで家庭も企業も囲い込む、AIエコシステム完成へ

盛りだくさんだった「Made by Google」

日本上陸の自社製スマホ「Pixel 3」はすでに品薄

グーグルが先日発表した純正スマートフォンの最新モデル「Pixel 3」「Pixel 3 XL」は、Pixelシリーズ初の日本向け販売やFeliCa対応という点が歓迎された。合計12種類あるバリエーションのうち、すでに多くが直販サイト「Googleストア」で在庫切れとなるほどだ。

出典:グーグル / Google Pixel 3

日本では、直販サイトからのSIMロック・フリー版以外に、NTTドコモソフトバンクのキャリア版が発売される。3大キャリアで唯一Pixel 3を取り扱わないKDDI(au)だが、Pixel 3をKDDIのネットワークに接続することは可能なので、SIMフリー版を入手するか、ドコモまたはソフトバンクから購入した端末のSIMロックを解除すれば使えるだろう。

Pixel 3はサムスン電子やアップルの最新モデルと同等のスペックを持つハイエンド・スマートフォンであるうえ、高い写真性能やAI機能という魅力もあり、購入予約受付が10月19日に始まるキャリア版の在庫も早い段階でなくなりそうだ。

世界は新デバイス「Pixel Slate」「Google Home Hub」に注目

Pixel 3とPixel 3 XLが披露されたグーグルのイベント「Made by Google」では、ほかにも注目すべきデバイスが発表された。

そのなかでも、タブレットとノートPCを兼用できる2in1デバイスの「Pixel Slate」と、スマートディスプレイ(画面付きスマートスピーカー)「Google Home Hub」は、AIファーストやスマートホームといったグーグルの戦略を推進させるにあたって欠かせない存在である。

残念なことにいずれも日本での提供は未定だ。しかし、Pixel 3のFeliCa対応で日本市場に対する本気の姿勢を示したグーグルなので、早い段階で日本向け販売の発表があるかもしれない。

Pixel Slateは家庭と企業へのChrome OS普及を狙う

出典:グーグル / Google Pixel Slate: perfect for work and play

Pixel Slateは、Pixelという名称が使われたことから、「Chromebook」シリーズの高性能モデルで、「Chrome OS」ベースのデバイスだと分かる。

Chrome OSは、グーグル独自のPC向けOS。動作が速く、高いセキュリティなどが特徴だ。Windows用やMac用のソフトウェアに非対応なものの、不自由することは少ない。グーグルのOSらしく、Androidアプリも動かせる。そうしたメリットが評価され、米国では教育市場でメジャーな存在となっていて、家庭ユーザーや企業ユーザーも増えている。

Chromebookシリーズにおいて、Pixel Slateは専用キーボード「Pixel Slate Keyboard」を装着するとノートPC、取り外すとタブレットになる、2in1やデタッチャブル型などと呼ばれるタイプのデバイス。PCとタブレットの市場はいずれも低迷しており、特に家庭向けPCの販売は大きく落ち込んでいる。ただし、デタッチャブル型PCは比較的好調で、今後の需要が期待される。グーグルは、そのジャンルに新製品を投入し、家庭向けPC市場への食い込みを図ったらしい。

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Pixel Slateはキーボードが使えるので、企業ユーザーも使いやすい。しかも、ソフトウェア開発者に好まれるLinuxというOSにも対応している。今まで学校で生徒に貸し出す端末として利用されることが多かったChrome OSデバイスを、グーグルはPixel Slateで家庭や企業、開発者へと広める作戦だ。

機能も豊富で、スマートスピーカー「Google Home」やAndroidスマートフォンの音声アシスタント「Google Assistant」にも対応し、さまざまな操作が音声で済む。タッチ操作も可能だし、スタイラス「Pixelbook Pen」も使える。電源ボタンには指紋センサーが組み込まれており、指で触れればロック解除できる。

3,000×2,000ピクセル表示、解像度293ppiの12.3インチ画面と、内蔵ステレオスピーカーは、映画鑑賞などの際に役立つ。外部ディスプレイとオーディオに接続すれば、より迫力ある映像コンテンツが楽しめる。またカメラは外側と内側の両方に設けられている。

Google Home Hubは家族みんなで使ってもらいたい

Google Home Hubは、スマートスピーカーに7インチのディスプレイが追加されたデバイス。音声で問い合わせると、音声や画面表示で応答してくれる。Google Homeに画面が付いた、と考えればよい。

出典:グーグル / Get help at a glance with Google Home Hub

スマートスピーカーの場合、問い合わせに対する答えは音声で返されるのだが、聞き逃したり聞き間違えたりすることもあり、用途によっては不便だ。Google Home Hubは画像で結果が示されるため、スケジュールや地図、レシピなど多くの情報を把握する場面で威力を発揮する。「YouTube」でビデオを楽しんだり、スマートフォンで撮った写真をクラウドサービス「Google Photos」経由で表示させたりという使い方は、Google Home Hubならではだ。

もちろん、Google Home同様、照明や空調、スマートロックなどのスマートホーム・システムもGoogle Assistantを介して操作できる。画面のタッチ操作も可能で、音声コマンドだとかえって煩わしい操作も実行しやすい。

また、最大6人の声を識別し、ユーザーごとに異なる動作もさせられる。家庭のインテリアに溶け込む柔らかなデザインを採用している点からも、ガジェット好きの個人だけでなく、家族で使ってもらいたい、というグーグルの狙いが読み取れる。

グーグルはAIエコシステム完成に近づいた

Pixel 3/Pixel 3 XL、Pixel Slate、Google Home Hubを並べると、家庭から企業まで、生活のあらゆる場面をAIでカバーしようとするグーグルの姿勢が浮かび上がる。いずれも音声操作が可能で、Googleの各種クラウド・サービスで結びつけられている。

グーグルは、Android OSの開発元であり、スマートフォン市場で圧倒的な力を持つ。スマートスピーカーではアマゾンを追う立場であるものの、その差は徐々に縮まっているし、Google Home Hubでスマートディスプレイをラインナップに加えられた。PC分野での存在感は大きくないが、Pixel Slateというユニークなデバイスで強化した。そのうえ、それらを密に連携させる強力なクラウド・サービスとAI技術を持っている。

アマゾンとアップルという強敵は存在する。ただ、スマートスピーカー市場トップのアマゾンは、スマートフォンとPCが弱い。MacとiPhoneという武器を持つアップルだが、スマートスピーカーで出遅れており、音声アシスタントの家電連携はまだまだだ。

各社の状況を改あらためて考えると、今回のMade by Googleは、グーグルが目指すAIエコシステム完成に必要不可欠なデバイスを揃えた、と宣言するためのイベントだったと感じる。

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