ポケットPC人気再燃?超小型ブームの火付け役GPD Pocket、タブレットになるFalcon

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記事の情報は2018-10-30時点のものです。

「ポケットPC」と呼ばれる超小型ノートPCが再注目されており、「GPD Pocket」「Falcon」といった端末がクラウドファンディングで相次いで資金調達に成功している。PCの画面は広ければ広いほど便利だが、あまり大きく重いノートPCはモバイル性が損なわれる。2009年発売のソニー「VAIO type P」は、ポケットに入るUMPCとして注目された。そんな超小型PCが見直されている。
ポケットPC人気再燃?超小型ブームの火付け役GPD Pocket、タブレットになるFalcon

大きくても小さくても使いにくいPC

スマートフォンが高機能化し、実用的なアプリも増えたため、画像編集やビジネスなどの作業もPCを使わずに済ませる場面は珍しくなくなった。どこでも高速な4G(LTE)ネットワークが使えるうえ、2019年には4Gの10倍という超高速な5Gネットワークが開始される今、場所に縛られず手軽に使えるスマートフォンの利便性は高くなる一方だ。

ただ、スマートフォンの画面は狭く、多くの情報を広げて参照しながら進める作業に適さずPCの出番になる。画面は広ければ広いほど見やすいし情報量も増すので、デスクトップPCもノートPCも大画面化が進んでいる。

机に置いて使うデスクトップPCなら、画面はいくら大きくても構わない。これに対し、大きく重いノートPCは、モバイル性が損なわれてしまう。膝の上で使うラップトップ(laptop)PCとするには重過ぎて、乗せた膝を痛めるニークラッシャー(knee-crusher)などと冗談を言われるほどになる。

スマートフォンの場合、利便性追求でファブレットと呼ばれる大型モデルが人気を集めつつも、ここに来て小さくシンプルなモデルへの関心が高まった。PC市場も同様で、ディスプレイのHDMIポートに挿して使うUSBメモリーに似た形のスティックPC、小さな外付けHDDのようなカードPC、キーボードにPCの機能を組み込んだキーボードPCなど、さまざまなタイプが販売されている。製品化には失敗したようだが、PC機能を内蔵するマウス「Mouse-Box」まで登場した。

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スティックPCは、インテルやレノボ、ASUS、NECなどの大手メーカーも手がけるなど、かなり注目された。ただし、キーボードやマウス、ディスプレイが必要な点は、通常のデスクトップPCと変わらない。各所にスティックPCの挿せる環境を用意しておける人でない限り使いにくい。自宅やオフィスで持ち歩かないデスクトップPCとして使うにしても、小さいこと以外のメリットはない。

カードPCやキーボードPCも似たようなものだ。キーボードや画面を持たないという長所がほかの短所を上回れず、少し変わったデバイスという位置から抜け出せずにいる。

復活した超小型「ポケットPC」ブーム

結局、モバイル環境では普通のノートPCの方が使いやすい。しかし、大画面モデルの持ち歩きは避けたい。2010年前後にはソニー「VAIO type P」や富士通「LOOX U」など、尖ったデザインのUMPC(Ultra Mobile PC)が存在したものの、固定的なジャンルに成長せず消えてしまった。

出典:ソニー / VAIO type P

出典:富士通 / LOOX U

ところが、こうしたコンパクトなノートPCに対する人気は根強く、ここにきてポケットPCブームが起きている。そこで、最近の主な製品を紹介しよう。

ポケットPCブームの火付け役「GPD Pocket」

GPD Pocket」は、中国のシンセンGPDテクノロジーが開発した7インチ画面のポケットPC。量産を目指してクラウドファンディング「Indiegogo」で支援を募ったところ、なんとキャンペーン開始から6時間後には目標金額の20万ドルをクリア。最終的に15倍を超える資金を獲得して、実際に販売された。

RAM容量8GB、ストレージ容量128GBといった本格的なスペックで、Windows 10 HomeとUbuntuが動かせる。USB Type AおよびType C、micro HDMIポートも用意されていて、拡張性も十分。もちろんキーボードを搭載しており、スペースキー付近にポインティングデバイスも備える。

主な仕様は以下のとおり。

・画面:7インチ(1,920×1,200ピクセル表示)
・プロセッサ:Intel Atom X7-Z8750(動作周波数1.6GHz、最高2.56GHz)
・RAM:8GB
・ストレージ:128GB
・I/Oポート:USB A、USB C、HDMI、3.5mmヘッドセットジャック
・バッテリ:7,000mAh(最大12時間駆動)
・その他:スピーカー
・OS:Windows 10 Home、Ubuntu
・サイズ:180×106×18.5mm
・重さ:480g

出典:Shenzhen GPD Technology / GPD Pocket

シンセンGPDは後継モデルの「GPD Pocket2」も開発済みで、11月より日本でも購入できるそうだ。

・画面:7インチ(1,920×1,200ピクセル表示)
・プロセッサ:Intel Core m3-7y30(動作周波数1.0GHz、最高2.6GHz)
・RAM:4GBまたは8GB
・ストレージ:128GB
・I/Oポート:USB A×2、USB C、micro HDMI、3.5mmヘッドセットジャック、micro SD
・バッテリ:6,800mAh(最大6時間から8時間駆動)
・その他:スピーカー、マイク
・OS:Windows 10 Home
・サイズ:181×113×14mm
・重さ:465g

出典:Shenzhen GPD Technology / GPD Pocket2

タブレットにもなる2in1デバイス「Falcon」

最近クラウドファンディングサービス「Kickstarter」でキャンペーンが始まった「Falcon」は、ポケットPCにとどまらず、タブレットとしても使える点が魅力だ。画面は8インチでGPD Pocket2に比べ一回り大きく、スペックも遜色ない。当然、キャンペーンは人気で、目標は難なくクリアしている。

主な仕様は以下のとおり。

・画面:8インチ(1,920×1,200ピクセル表示)
・プロセッサ:Intel Pentium Silver N5000(動作周波数1.1GHz、最高2.7GHz)
・RAM:8GB
・ストレージ:128GBまたは256GB
・I/Oポート:USB A、USB C、HDMI、3.5mmヘッドセットジャック
・その他:マイク、スピーカー、カメラ、加速度センサー
・OS:Windows 10 Home、Ubuntu
・バッテリ:5,800mAh(最大8時間駆動)
・サイズ:200×130×20mm
・重さ:650g

出典:TopJoy / Falcon

ほかにもある興味深いポケットPC

かつて人気だったシンビアン(Symbian)製キーボード付きPDA「Psion(サイオン)」のデザイナーが開発に参加したAndroidデバイス「Gemini PDA」や、Windows 10対応の「KS-PRO」、Falconと似たコンセプトの「One Netbook One Mix2」など、興味深いポケットPCはほかにもある。

ただ残念なことに、この種のデバイスは量販店で扱われないことが多く、発売を知った時点で販売終了になっていて悔しい思いをする。自分の目的に合った製品を購入し逃さないようにするため、ポケットPCやガジェットの情報サイトなどを小まめにチェックしよう。