xR(AR、VR、MR)の「ビジネス活用」最前線

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2019年に入って、AR・VR・MRの総称「xR(エックスアール)」という言葉をCESやSXSWでも目にする機会が増えた。Microsoft Mixed Reality 認定パートーナーであるホロラボ CEO 中村氏にお話を伺い、xR(AR、VR、MR)の定義や日本の産業界におけるビジネス活用の最新動向についてまとめて紹介する。

xR(AR、VR、MR)の「ビジネス活用」最前線

xRって何? AR、VR、MRの定義

xR(エックスアール)とは、AR、VR、MRの総称。ここ最近、目にする機会が増えたという方も多いのではないだろうか。AR(Augmented Reality)とは拡張現実、VR(virtual Reality)は仮想現実、MR(Mixed Reality)は複合現実と呼ばれる。

AR、VR、MRの定義には、諸説あるのが実情だ。総務省は過去にARとMRの違いについて、ARは現実世界(一部)に仮想の情報を重ね合わせる技術、MRは現実世界(視界全面360℃)に仮想の情報を重ね合わせると技術だとしたこともある。
(出所:http://www.soumu.go.jp/ictskill/pdf/ictskill13.pdf

この言葉の定義でつまづく初心者は少なくないだろう。「英語の Wikipedia で Mixed Reality を検索すると、これが載っているんですよね」ホロラボ 中村氏は説明する。

参考:wikipedia

要は、リアルとバーチャル(コンピュータで作られた世界)がシームレスに繋がっているのがMixed Realityであり、そのなかで現実寄りなのがAR、バーチャル100%なのがVR、という定義だ。

「マイクロソフトはHoloLens(ホロレンズ)をMixed Realityというのですが、僕はいつもARだと説明しています。コンピュータで作られた3Dモデルなどを、リアルの世界に溶け込ませるから、という定義で話しています」(中村氏)

なるほど。分かりやすい。本連載でもこのスタンスで話を進めたい。

AR、VR、MRはビジネスシーンでも活用が進む

2016年に発表されたポケモンGOは、コンシューマ向けの位置情報ゲームとして有名だ。現実にバーチャルを重ね合わせることからARが一般的に認知されるきっかけにもなったが、xR活用が進むのはゲームの世界だけではない。

購入する前に室内でおためし配置できる家具配置ARや、建設前のマンションの外観や間取りを確認できる不動産VRなどのサービスがすでに提供開始されており、日本国内でもビジネス活用が進みつつある。

連載第2回で詳しく解説するが、コンシューマ向けにとどまらず、建設や医療、リテールといった、ファーストラインワーカーとも呼ばれる"現場"の働き方改革に導入する動きも見逃せない。

海外に目を向けると、小売大手である米ウォルマートが従業員向けのVRトレーニングを導入。2018年、同社がOculus Goを17,000台も大量購入し注目を集めた。中村氏は、日本でもビジネスでのVR活用はもっとやれる余地があると指摘する。

「ホロラボは、初代HoloLens(ホロレンズ)日本発売の日に創業した会社で、Microsoft Mixed Reality 認定パートーナーの1社です。創業メンバーの過半数がMicrosoft MVPだということもあって、ARやHoloLensの印象が強いのですが、実は昨年弊社で受注したプロジェクトのうちHoloLens案件は5割強でした。HoloLens案件30プロジェクトのうち業種別に見ると、製造業、建設業、メディアが同比率だったので、ARビジネス活用における日本とグローバルの動向はリンクしているのかな、という肌感覚があります。一方でコストや課題に応じ、HoloLensではなくスマホと連携させたりVRを提案したケースもあります。特にB向けのVR(特に受託)はまだまだ伸びしろがあるし、やったら楽しいと思っています」(中村氏)

日本の産業界におけるxR活用の現状

日本の産業界は、少子高齢化、技術伝承、働き方改革、リショアリング(生産国内回帰)、労働力国際化など、さまざまな課題を抱えている。その有力な解決策の1つとして、1〜2年前から大手企業が牽引役となり、xR導入の可能性が模索されてきた。特に工場や建設現場、医療といった、生産性向上が必要とされつつICTの利活用が困難だった職種や業界の現場で、実証実験が行われているという点は興味深い。

例えばトヨタでは、工場で車に塗装する際に行われる「膜厚検査」にARを導入した。従来は、完成車に均一にムラなく塗装するために、試作車への塗装の段階で、車体の形状にあわせた紙型を作り車に貼り付けることで、測定ポイントをアナログに表示して検査を行っていた。

HoloLens(ホロレンズ)を掛けてリアルの車体にバーチャルの測定ポイントを表示させることで、紙型を作るのにかかっていた時間など、工数を大幅に削減。2人で1日(16人時)かかっていた測定作業を、1人で4時間(4人時)に短縮でき、75%の生産性向上に成功したという。xR導入効果をすぐに数値で換算できるのは、"カイゼン"文化の賜物だ。

ほかにも、JR東日本で転てつ機という線路の制御装置の操作トレーニングにAR活用を試行した事例や、建設現場で現実空間にBIMの3Dデータをオーバーレイ表示させ作業の効率化を図る東急建設の事例もある。外科手術の品質向上など医療現場でも活用が進められている。

「ARやVR、いわゆるxRのビジネス活用は、いまは大手がリサーチや検証のために行っている段階ですが、実際の導入を見据えた案件も少しずつ出始めています」

こう語る中村氏に「やはりxRには注目すべきですね」と熱い視線を向けるも、「別に注目しなくてもいいんじゃないですか」と微笑まれてしまった。

「xR技術で現場の働き方改革が進む、第5次産業革命が起こる、といわれることもありますが、技術やデバイスは手段であって目的ではありません。でもいま、大企業が取り組んでいるということはどういうことなのか、しっかり考えたり好奇心を持つことは重要かもしれないですね。xR導入となると、お客さんは自分たちの業務のことをものすごく考えます。自分たちは何に困ってて、何を解決したくて、どうしたいのか。自社にとってのゴールを決めるところが、いちばん大変だけど大事なことだと思います」(中村氏)

xR(AR、VR、MR)は現場の働き方を変える。それは3Dデータをデータの状態で3次元で見ることができるようになって業務効率が向上するから、だけではない。行動やコミュニケーションなど、従来の業務やビジネスのあり方を、根本から見つめ直すきっかけにもなり得るのだ。

連載記事一覧
第2回 ファーストラインワーカーの働き方改革は、xRで加速する
第3回 xRが起こす「現場の技術伝承」革命
第4回 xR導入がもたらす「付加価値」と未来予測