2025年問題とは
「2025年問題」とは、団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達する事により、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されている問題です。
「超高齢化社会」になり、これまで国を支えてきた団塊の世代が給付を受ける側に回るため、医療費、社会保障費やその他の課題にどう取り組んでいくかが大きな問題となることが指摘されています。
本記事では、2025年問題として指摘されている事項や、政府の対策、私たち自身で実行できる対策について解説していきます。
また、2025年問題とあわせて知っておきたい2020年問題は次の記事をご覧ください。

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2025年の日本の高齢者人口は3,657万人
2015年 | 2025年 | 2055年 | |
---|---|---|---|
65歳以上高齢者人口(割合) | 3,395万人 (26.8%) |
3,657万人 (30.3%) |
3,626万人 (39.4%) |
75歳以上高齢者人口(割合) | 1,646万人 (13.0%) |
2,179万人 (18.1%) |
2,401万人 (26.1%) |
厚生労働省の発表によると、2015年には「ベビーブーム世代」が前期高齢者(65~74歳)に到達しました。
そこから高齢者数は増加の一途をたどっており、10 年後の2025年には高齢者人口が約 3,600 万人に達すると推計されています。
2025年以降の高齢者世帯の見通し
世帯主が65歳以上の高齢者である世帯数を見てみると、2005年には 1,340 万世帯程度でしたが、2025年には、約1,840万世帯に増加すると言われています。
また、高齢者の世帯の約7割を一人暮らし・高齢夫婦のみの世帯が占めると見込まれます。中でも高齢者の一人暮らし世帯の増加が著しく、約 37%に達すると見込まれています。
2025年問題で懸念されている問題
2025年問題について懸念されている問題は大きく分けて3つあります。
- 医療に関する問題
- 社会保障に関する問題
- 介護に関する問題
医療と社会保障、そして高齢者の介護の問題について解説していきます。
2025年の医療に関する問題
2025年までに起こりうる医療に関する諸問題について、いくつか説明します。
医療費の問題
厚生労働省の推計によると、2025年の医療保険給付は総額54兆円と、現在より12兆円以上増える見通しです。この額は徐々に衰えゆく現在の日本の国力で賄える額ではありません。
病院や医師の不足
2017年以降、病院や医師の数は減少傾向にあります。
地方では病院をたらい回しにされる事例も数多くあります。搬送先の病院では、医師の人手不足による過酷労働状況が表面化し、新たな課題ともなっています。
2025年問題では、このような医療の現場と医師、看護師の減少に加え、医療が不可欠である高齢者が増加し続ける状況が指摘されており、そのための対策が急務となります。
認知症患者の急増
また、65歳以上の高齢者のうち、認知症高齢者で自宅以外は未開の地となる日常生活自立度Ⅱ以上の高齢者は、2010年では280万人だったのに対し、2025年には470万人と急増することを予測しています。
認知症患者の急増はそれを支える医療や地域、家族のリソースを消費し続けるため、好ましくない状況です。対策として医療や介護の人材確保と環境、設備が求められます。
2025年の社会保障に関する問題
2025年までに起こりうる社会保障に関する諸問題について、いくつか説明します。
社会保障費
日本は、高い社会保障と低い税金の国です。2025年を境に団塊の世代のすべての人が75歳以上の後期高齢者になることで、医療・介護費用がこれまでとは段違いに多くなり、社会保障に必要な金額が膨張することになります。
<年金に関する問題>
団塊の世代が75歳以上になる2025年にもし年金制度が残っていたとしても、支給金額の大幅な減少、支給年齢の引き上げなど、もはや年金制度が崩壊寸前の状況になっている可能性が極めて高いです。
今後さらに人口が減少して総人口に占める高齢者の割合が増加する中、年金制度を維持するのは非常に厳しいと言えます。
2025年の介護に関する問題
介護に関する諸問題について、2025年までに起こりうる問題について解説します。
<要介護者数の増加>
2025年には、認知症高齢者の人数は1,200万人を超えます。それに伴って要介護者数も増加します。日本の人口の10人に1人は認知症高齢者になってしまうため、介護者と要介護者の両方が認知症という認認介護なども増加していく可能性があります。
<孤独死問題>
65歳以上の一人暮らしをしている高齢者の増加は、男女ともに顕著です。
親に生活を依存している未婚者「パラサイト・シングル」も高齢者に仲間入りし、将来一人暮らしをする高齢者の増加に拍車をかけていくことが予想されます。
こうしたことから、一人暮らしの高齢者が劇的に増え、介護が追いついていかず、2025年以降には孤独死も増加することが予想されます。
2025年問題に関する政府の対策
2025年問題に対して、政府の掲げている対策を紹介します。
地域包括ケアシステム
住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現を目標しています。
地域にサポートセンターを設置し、住まい・医療・介護・予防・生活支援などのサービスを組み合わせて一体的に提供するシステムの構築を政府は推奨しています。
医療・介護制度などの改革
医療・介護の保険料の負担を見直して、 だれもが適切なサービスを受けられる社会を目指しています。
- 国民健康保険・後期高齢者医療の低所得者に対する保険料軽減措置の対象拡大
- 高額療養費制度の負担額について所得に応じて見直し、中低所得世帯の負担軽減
- 介護保険の第1号被保険者(65歳以上)の低所得者について、さらに保険料軽減
- 短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大
上記の事項などが対策として挙げられています。

人手不足対策
厚生労働省は介護人材の確保のため、平成27年度補正予算案・平成28年度当初予算案で3つの柱でできた対策を打ち出しています。その柱とは、次の3つです。
- 再就職支援対策を強化することによる「離職した介護人材の呼び戻し」
- 介護職を目指す学生を増やして入学後の勉学を支援する「新規参入促進」
- 医療介護基金を新たに追加することによる「離職防止・定着促進」
人手不足の解消にはロボットの活用も進みつつあります。

2025年問題への個人や地域でできる対策
2025年問題に対して、個人や地域レベルで施行できる対策は次のとおりです。
- 年金対策
- 医療費対策
- 両親などの介護対策
- 将来のための貯蓄と投資
それぞれの対策について説明します。
年金への対策
年金の実質的破綻はだれの目にも明らかです。したがってこれから私たちに必要なのは「現金」となるでしょう。家庭内フリーキャッシュの準備により、年金がもらえなくなったとしても生活していけるような財を確保することが必要です。
医療費への対策
超高齢化で医療費や介護費が激増するため、それを支える若い世代の負担額は激増します。今のうちからある程度の資金を確保し、将来を見据えた資金繰りをする必要がありそうです。
両親などの介護対策
介護が必要な両親がいる場合は、高齢者の行動に注意を払いつつも、必要以上に干渉せず、自分から身体を動かすように促すことが大切です。それが高齢者の筋力維持につながり、寝たきり状態になるのを防ぎます。
また、介護が必要になったときのことを考えて準備するのが大事です。
たとえば、介護の役割分担を考えておく、住宅のバリアフリーリフォームを行うなど、高齢者が元気なうちに対策を講じておけば、いざというときに慌てずに済むでしょう。
将来のための貯蓄と投資
家庭内フリーキャッシュをいかに多く準備しておくかが重要だと述べましたが、場合によっては制度が変わってお金が引き出せないことも考えられます。
有価証券のまま保有するよりも、現金にして持っていることが大事かもしれません。換金性の悪い不動産や生命保険にお金を換えるのは、避けたほうが良いでしょう。
2025年問題に対してどう立ち回るか
これから起こりうる問題に対して、政府も多くの対策を打ち出していくと思われますが、やはり自分自身の将来のことは自分で責任を持って準備しておくべきです。
そのためにも2025年問題を理解し、これからどう生活していくべきか、一度考慮する必要があります。
さらに、2025年問題よりも深刻と言われている「2035年問題」や「2040年問題」などもあるので、本記事を参考にできることから対策するといいでしょう
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