介護者などの負担を軽減する「介護ロボット」
矢野経済研究所がこの調査で対象とした「介護ロボット」とは、介護者や被介護者の行動(動作)を支援するサービスロボットである。
その種類には、移乗支援ロボット、移動(歩行)支援ロボット、排泄支援ロボット、入浴支援ロボット、見守り支援ロボットなどがある。介護者や被介護者の身体的・精神的な負担を軽減し、効率化をはかる目的で、介護現場での導入が進んでいる。
たとえば、トヨタ自動車が提供する「移乗ケアアシスト」は、介護者が抱き上げているような状況を再現し、安全に被介護者を移乗させるロボットだ。
出典:トヨタグローバルニュースルーム「移乗ケアアシスト」
高齢化がすすむ日本において、介護需要はますます増加するとみられている。現段階では、国が主導する開発や実証試験、導入促進事業を経た開発企業各社が、開発を進めているというが、今後新規参入が進み、介護ロボット市場は本格化すると同研究所では分析している。
2018年度 国内介護ロボット市場は19億3,200万円へ
同研究所では、2018年4月~7月にかけ、国内の介護ロボットメーカー、販売元、研究開発する企業、関連団体、関係省庁などへの調査を実施し、市場動向を分析した。
これによると、2018年度の国内介護ロボット市場規模は、前年度比134.7%の19億3,200万円に拡大する見込みだという。
出典:プレスリリース
この市場には、コミュニケーションを目的とするサービスロボットは含んでいない。また本調査では介護現場での使用を提案・訴求している製品のみを対象としているという。
介護者の負担軽減と価格面の課題解決がカギ
同研究所は、この市場の進化には新製品が高価格という欠点をどのようにカバーしていくかがカギになるという。
既存製品に比べ新製品は、介護者の負担軽減が売りだ。しかしその分価格が高くなるという傾向があるという。その価格が高いか安いか、という点はユーザー判断にゆだねられており、一般的な普及のためには価格をおさえた新型製品の開発が必要だろう。
また、介護ロボット市場に臨まれるのは、「ヒット作」と言われる製品だと同研究所は指摘している。介護ロボット自体の認知度が低い現状、日常的に見聞きされるような「ヒット作」により介護ロボットへの関心は高まるのだ。
超高齢化社会である日本にとって、老々介護も深刻な問題となっている。介護を苦にした殺人、自殺など痛ましい事件も報告されている。介護にかかる体力、気力を支えるのは、介護者の努力だけでは立ち行かない。
介護ロボットの話題は、近い将来、我々にとって非常に身近な問題になるだろう。

