「インダストリー4.0」がドイツの労働生産性向上を後押し
労働者に対する手厚い制度に加えて、ドイツの労働生産性向上を後押ししているのが国策として2011年から提唱されている「インダストリー4.0」。
これは「第4次産業革命」とも呼ばれており、顧客、メーカー、部品のサプライヤーが扱うデータを全てデジタル化し、同じルールで取引し製造するというコンセプトだ。
互いにリアルタイムでつながり、人手を極力排除した「考える工場」で生産することで多品種少量の製品を大量に短納期で製造(マスカスタマイゼーション)し、高収益を得る。そして、同じルールを適用する企業が国境を越えて広がればドイツのグローバルな競争力が向上するという狙いがある。
例えばスポーツ用品メーカーのアディダスは人件費の安いアジアに工場を置いていたが、2016年から本社のあるドイツに移転している。この工場は「スピードファクトリー」と呼ばれる全自動工場で、データをもとにロボットが製造する。デザインからから製造までの期間を年単位で短縮できたというから驚きだ。
労働者保護の精神を継承する「労働4.0」
このようにドイツの国策インダストリー4.0では人手を排除することに重きが置かれている。
そうなると働く人が首を切られるということになりかねないのだが、そこで国は労働者を保護し、デジタル化時代にどのような働き方になるかを議論するための、「労働4.0」というプラットフォームを立ち上げた。
特筆すべきは「労働4.0」が、前述した「労働時間貯蓄制度」や「両親手当」など既存の制度を改良して行こうという文脈で進められている点だ。
「インダストリー4.0」で変化しつつある、労働者の働き方に合わせて、専門家、市民、労働組合と連携しながら本質的に労働者を保護できる制度を模索しているのだ。
ドイツは、日本と同じく「ものづくり大国」を目指している。学ぶべきところは大きいと言わざるを得ない。