シェアードサービスは効率的?業務別メリット・ポイントを押さえ導入へ

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記事の情報は2018-06-27時点のものです。

企業のコスト削減の一環として注目されている「シェアードサービス」について、具体的なサービス内容や導入の効果、これからの課題について解説していきます。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などによる業務効率化を考えている企業の方は、ぜひ参考にしてください。
シェアードサービスは効率的?業務別メリット・ポイントを押さえ導入へ

多くの子会社をもつグループ会社の間で、業務効率化の一貫で「シェアードサービス」の導入について検討されることがあります。業種や業界を問わず、経営手段のひとつとして注目されている手法です。

各部門の運用コストを削減しつつ、全体の品質を向上させる方法として知られつつあり、積極的に乗り出す企業も出てきました。そこでバックオフィス業務の効率化を考えている企業向けに、シェアードサービスの内容から導入のポイントまで解説します。

シェアードサービスとは

シェアードサービスとは、主にグループ内に子会社を抱える企業などが、それぞれの組織内に配置している総務や経理といった部門を統合・共有することで、業務効率を高めてコストの削減を図る手法をいいます。

間接部門のサービスを「シェア」することにより、業務を開放化して品質を向上させる狙いがあり、特に合併や経営統合したばかりの企業を中心に注目されています。

シェアードサービスとBPOの違い

シェアードサービスとあわせてよく聞く言葉に「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」があります。これは間接部門の業務すべてを外部企業や子会社に委託する、アウトソーシング(外部委託)の一種です。

業務の効率化を目指すという点ではシェアードサービスと同じですが、BPOの場合は業務委託先が主に外部企業です。一方シェアードサービスはコーポレート機能を担う部門を一つにまとめることを指しており、グループ企業内で運用するものです。

こういったグループ企業からの依頼を受けて間接業務部門をまとめて運用する場所はシェアードサービスセンターなどと呼ばれ、グループ内の業務はもちろん、場合によってはグループ外の企業の案件を引き受けることもあります。

シェアードサービス導入で期待できる3つの効果

シェアードサービスを導入することでグループ企業が得られるメリットは多くありますが、主に以下の3つの効果が期待できます。

1. コストの削減

シェアードサービスを導入することのもっとも大きなメリットは、全体の業務運用コストを大幅に削減できることです。

グループ内の各企業にバラバラに存在している総務や人事、経理、情報システムといったバックオフィスをひとつに集約することで、人件費や設備に掛かるコストを削減できます。特にグループ会社が多ければ多いほど、規模のメリットを得られるため導入効果は大きくなります。

2. 納期の遵守

業務を統合することにより、それまで各所で存在していた無駄な工程が最適化され、納期が守られやすくなります。シェアードサービスセンターは、間接業務を専門的に担うプロ集団ですから、それまで単体の企業内では間に合わなかったような案件も、納期内にうまくこなしてくれるようになるのです。

また、時期による「人余り」や繁忙が平均化され、一定のスケジュールのもとで確実な納品が可能になるという利点もあります。

3. 品質の改善

その業務を専門的に担うスタッフの学習機会が増えるため、仕事が最適化され、結果的に業務の質を向上させられます。間接部門の機能を統合することで、バックオフィス業務のプロフェッショナル集団が醸成されるのです。

これまで各企業のスタッフが「片手間」にやっていた作業も統一化され、専門のプロのもとで高い品質を維持できるようになります。

シェアードサービス導入における3つの課題

このように、品質やコストの面で大きなメリットがあるシェアードサービスですが、その導入にあたってはいくつかの課題も指摘されています。なかでも、導入の際に起こりがちな問題や課題について挙げます。

1. 高い初期投資費用

シェアードサービスセンターの設置には、当然初期費用がかかります。それまで各所が独自に運用していた設備の統廃合や、業務基盤の整備、人員の再配置といったプロセスが欠かせないため、ある程度の初期投資が必要となります。

特に規模の大きな企業グループの場合、バックオフィスの規模も膨大になり、必然的に初期投資も大きくなってしまいます。また、統合した人員・設備を一定のルールに基づいて運用するための基盤づくりも必要となるため、相応の時間も掛かります。

2. モチベーションの低下

シェアードサービスセンターの設置に伴って再配置される従業員のなかには、それまでの労働環境や給与が変化することで、仕事のモチベーションに影響が出る者が現れる可能性があります。待遇を不満として優秀な人材が流出してしまう懸念もあります。

準備段階からの十分な説明も含めて、そういった人員に対するケアを考えなければいけません。

3. システム統合へのハードル

各社が独自に運用していたシステムを統廃合するため、それまでの業務の流れと、新しいシステムの折り合いをつけることが難しいケースが多くあります。

特に会計システムや販売管理、給与管理といった業務の処理方法や管理ルールは、それぞれ独自の習慣や不文律で運用されていたケースが多いため、統廃合によって実用面で不具合が生じたり、既存のスタッフからの不満が生じたりする可能性が高くなります。

こういったトラブルは、とりわけ、親会社のシステムやルールを一方的に適用させようとして生じることが多いといわれています。1で述べた費用面も含めて、綿密に計画する必要があるでしょう。

シェアードサービス導入時のポイント

上述の課題を踏まえつつ、シェアードサービスをスムーズに導入するためには、その企業に合った運営方式を模索する必要があります。以下では、タイプ別にシェアードサービスの導入のポイントを具体的に解説します。

グループ内に設置する

シェアードサービスをグループ内に導入する場合、サービスセンターを本社に設立する場合(本社部門方式)と、子会社に置く場合(子会社部門方式)の2つが考えられます。

本社部門方式の場合

本社に設立する場合は、子会社のバックオフィス業務全般を引き受けるため、子会社は会計などの業務に携わる必要がなくなり、その分自社の専門業務に特化できるようになります。

また、本社の一部門となることから、導入にあたって大規模な組織変更による混乱を伴わずに済み、社内の抵抗も少ないというメリットがあります。ただその反面、それまで運用していた各部署の商習慣などが導入の阻害要因となる可能性があります。本社が積極的に、子会社に対して指導力を発揮したい場合に有効な方法といえるでしょう。

子会社部門方式

分社化して子会社に置いた場合、比較的業務管理が容易になるほか、サービスセンター運用にかかる人件費を安価に抑えられるようになります。また、バックオフィス業務をグループ外の企業にも提供しやすく、それを収入源として位置づけられる可能性も出てきます。

このようにサービス自体の外部販売を想定しているケースや、完全に子会社として独立した企業として位置づけることで、本格的に業務改善を試みる場合に有効な方式といえます。

外部へ委託する

シェアードサービスセンターをアウトソーシング(外部委託)する方法もあります。バックオフィス部門自体をアウトソーサーに委託するわけですから、実質的にBPOということになります。

肥大化してしまった諸業務をスリム化でき、自社の専門分野で対応しきれない最新の技術やノウハウを外部の専門家に任せられるというメリットがあります。外部のエキスパートに任せることで、最新の知識やスキルを取り入れたいという企業にはおすすめの方法です。

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業務別にみる導入メリット

シェアードサービス化されることの多い代表的な業務を取り上げ、それぞれシェアードサービス化した例やメリットを簡単に紹介しておきます。

会計部門

会計業務の多くは繰り返し作業や、ルーチン作業であり、各企業のものを統合して標準化・システム化することにより、事務作業のコストが計測しやすくなり、浮いた人員でより生産性の高い仕事を行えるようになります。

入出金伝票の作成や、仕訳、報告資料の作成などは、各企業ごとにバラバラの商習慣で行うよりも、統合して標準化した方がコストダウンにつながるケースが多いです。

総務部門

事務用品などのオフィス備品の購入などをまとめてシェアードサービス化できます。それぞれの企業が個別に購入するよりもコストダウンにつながりやすく、標準化されることでグループ企業内の生産性要因にムラがなくなります。

IT部門

専門的な知識が必要とされることの多いIT部門を統合したり、アウトソーシングしたりすることで多くのメリットが得られます。保守活動の一元化や、最新の技術を効果的に導入できるようになるため、それまで総務部門がIT担当を兼務していた場合などに比べて、運用面でもセキュリティの面でも大幅に効率化できます。

物流部門

それまで各々の企業が個別に行っていた物流を一元化することで、運送料の増大を理由として価格交渉が可能になり、運送コストを抑えられます。また、すべての物流を専門的に管理するため、細かい配送ミスも軽減できます。

組織づくりがカギを握る

主に子会社をもつ企業グループの間で注目されているシェアードサービスについて解説をしてきました。方式はいろいろありますが、シェアードサービスを導入することで自らのコア業務に集中できるようになり、生産性の向上に成功したという企業はたくさんあります。

シェアードサービスはスケールメリットがあるため、いかに多くの業務を集約し、効率的にまとめられるかが重要となります。ただし、各々の企業からの業務移管をスムーズに行うための準備と計画が不可欠です。導入にあたっては現状の問題点を正しく把握し、綿密な計画のもとで着実に実行することが求められます。

組織の体制について見直す契機にもなるでしょう。