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会社の休憩時間は、労働基準法で明確に定められています。労働基準法を知ることでトラブルを解決できることも少なくありません。休憩時間の定義や、休憩に関するQ&Aを通じて、労働時の休憩について解説します。
労働基準法における休憩時間の定義
労働者の休憩時間とは、「労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保証された時間」(昭22.9.13発其17号)と定義されています。労働基準法では、これに基づいて労働時間別の休憩時間が定められています。
労働時間別の休憩時間
労働基準法における休憩の定義は、第34条1項で「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定められています。
つまり、休憩時間は次の3つのケースに整理できます。
労働時間 | 休憩時間 |
---|---|
6時間未満 | 休憩を付与する義務なし |
6時間~8時間 | 最低45分以上 |
8時間以上 | 最低1時間以上 |
休憩時間は分割して取ることもできます(たとえば8時間以上の場合、40分と20分)。
しかし、あまりにも細切れの休憩の場合は違法とみなされるかもしれません。そのため、しっかり休息を取れる時間を与える必要があります。
6時間未満・8時間以上のポイント
上記のとおり3つに整理された休憩時間ですが、間違いやすいポイントが2点あります。
- 6時間以内であれば、休憩を与える必要がない
- 8時間を超える場合は、どれだけ超えても60分の休憩で良い
つまり、6時間以内であれば(6時間ちょうどの場合も)、休憩を与える必要は無く、8時間を超える場合にはどれだけ超えても60分だけ休憩を与えていれば、法的には問題がないのです。
休憩時間に関する3原則
ここまで、労働基準法における休憩の定義や、運用がどのように規定されているかといったことについて見てきました。それを踏まえて、労働基準法第34条に定められた以下の3つの原則について説明します。
1. 休憩は労働時間の途中で与えられる
労働基準法第34条1項には、休憩時間について「〜労働時間の途中に与えなければならない」と定められています。始業後直後や終業直前に休憩を取ることは認められないのです。
たとえば、労働時間の途中ではなく、8時間の勤務終了後に1時間の休憩時間が与えられるといったことは法令違反となります。ただし、休憩時間を分割するか一括するかについて労働基準法では記載がないため、企業の裁量で自由に変更できます。
2. 休憩中は労働から解放されている必要がある
労働基準法第34条2項には、「使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない」との規定があります。つまり、休憩時間中、従業員は労働から解放され、会社からの制限を受けずに自由に時間を使えるということです。
ただし、電話当番や来客対応など休憩中に仕事を行う場合は給与が発生するケースもあります。また、休憩時間中に職場から出られないケースもありますが、これは違反にはなりません。
3. 休憩は一斉に付与されなければならない
労働基準法第34条2項には、「休憩時間は、一斉に与えなければならない」との規定があり、休憩はすべての従業員に一斉に付与されなければならないと定められています。
しかし、これには以下のような2つの例外があります。
- 坑内労働や一定のサービス業のような一斉に取ることが難しいケース
- 労使協定を締結し、フレックスタイム制などで一斉に休憩することで業務に支障をきたすということが認められたケース
労働基準法の休憩に関するQ&A
休憩時間の3原則と、それぞれの例外について整理しました。ここからはより具体的に、休憩時間を運用するにあたって多くの人が抱くと思われる疑問に答えていきます。
1. パートやアルバイトと正社員では、休憩に関する法規制が異なるのか?
A.NO
パートやアルバイトであっても正社員と同じように労働基準法のルールが適用されます。いわゆるブラックバイトのようなケースでは、過酷な労働時間の中でバイト従業員を働かせることがありますが、これははっきりとした法令違反です。
2. 休憩時間に給料は出るのか?
A.NO
賃金について定めた労働基準法第11条では、「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されています。したがって、労働でない休憩には給料は発生しません。
ただし、5分程度の休憩時間や、「手持ち時間」と呼ばれるタクシーの待ち時間のような待機時間は労働時間に換算されます、また、休憩時間に仕事を行わざるを得ず、休憩が取れなかった場合は給与支払いの義務が発生します。
3. 残業中にも休憩は発生するのか?
A.NO
労働基準法上では、残業中に休憩がなくても違法にはなりません。ただし、1日の実働時間が8時間を超えて時間外労働となる場合は、労働基準法第36条に基づき、前もって労使間で「36協定」を締結しなければなりません。また原則として25%の残業手当の支払いが発生します。
「これって違法かも?」と感じたら
もし、あなたが働いている職場で、「十分な休憩時間を確保できていないのでは?」とか、「これは違法では?」と感じることがあれば、どうすれば良いのでしょうか。ここからは、そういったケースの対処法を紹介します。
会社内の適した部署や担当者に相談する
まずは、会社の総務部や人事部など適切な部署や担当者に相談してみましょう。ただし、会社全体で「問題である」「法を遵守すべき」である遵法意識や、休憩についての正しい認識がないケースもあります。この場合は、逆に不利益を被ることにもなりかねないので、抗議をしたという証拠を残しておくことが大切です。
労働基準監督署に相談する
管轄の労働基準監督署に相談するのも良い方法です。労基署は、労働基準法に照らして会社を監督・指導する行政機関で、全国に321存在します。
違法な働かせ方などについても無料でアドバイスを受けることができ、助言や解決の場を与えてくれる機関です。実際に労基署に相談することで解決したという事例も多くあるので、必要に応じて利用しましょう。
まずは労働基準法を正しく理解しよう
「休憩」は、労働基準法に定められた会社側の義務です。しかし、それを知らないまま損をしている労働者が多いのも現状です。
良い仕事をするためには、十分な休息が欠かせません。そして休憩を取ることで疲労回復を行い、生産効率をあげることができます。そういった意味でも、労働基準法に定められた休憩は、非常に大切なものです。
労働基準法では勤務時間ごとに休憩時間が定められており、勤務時間が6時間以内、6時間を超える場合、8時間を超える場合で異なります。また正社員だけでなくアルバイトやパートもルールは同じ。もし違法かもしれないと感じたら、所定の機関へ相談しましょう。