事業ドメインとは | 企業ドメインとの違い・事例・CTF分析・設定ポイント2つ

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記事の情報は2018-07-27時点のものです。

事業ドメインとは、自社が事業展開する領域のことを指します。事業ドメインを適切に設定することで、貴重な経営資源をうまく活用することにつながるほか、社員の方向性を一致させ、よりよい企業展開へと向かうことにも結びつきます。引き合いに出される「企業ドメイン」との違いを含め、事業ドメイン設定の成功事例と失敗事例、CTF分析による決定方法、設定のポイントを解説します。
事業ドメインとは | 企業ドメインとの違い・事例・CTF分析・設定ポイント2つ

事業ドメインとは

事業ドメインとは、自社が事業展開する領域をいいます。事業ドメインを明確にすることでビジネス範囲を絞り込み、得意分野にリソースを集中、競争優位を目指します。

この手法を活用した有名企業にNECがあります。同社は、事業ドメインを C&C (コンピュータ&コミュニケーション)に定義し、コンピュータや半導体分野でビジネスを展開、成功を収めました。

事業ドメインの重要性

事業ドメインは、確実に伸びる事業を選べるかが重要だといわれています。そのためには、強みを発揮できる領域を判別し、無謀な多角化を避けなくてはなりません。

事業ドメインを明確にすることは、無用な多角化による経営資源の消費をなくすだけでなく、企業と社員の方向性を一致させるためにも重要です。事業ドメインは、広すぎても狭すぎても問題が生じます。自社の経営資源と強みを把握し、適切な範囲で事業を展開しましょう。

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事業ドメインと企業ドメインの違い

事業ドメインと似た概念に「企業ドメイン」があります。

事業ドメインは事業ごとに設定するのに対し、企業ドメインは複数の事業範囲が対象となります。また企業ドメインは、多角化を前提として、事業同士の組み合わせ(事業ポートフォリオ)やその性質も表しています。

そのため、多角化せずに単一事業のみを展開している場合、企業ドメインと事業ドメインが同じ範囲を指すこともあります。

事業ドメインの成功事例・失敗事例

事業ドメインの定義を解説したところで、事業ドメイン明確化による成功事例と失敗事例について触れます。事業ドメインを定義しても必ずしも成功するとは限らない例として、アメリカの鉄道会社を紹介しましょう。

アメリカ企業にみる失敗事例

事業ドメインという概念をはじめて提唱したといわれるのが、セオドア・レビット氏。著書『マーケティング近視眼』のなかで、事業ドメインの定義を間違えた例として、アメリカの鉄道会社を挙げています。

当時、アメリカの鉄道会社は「自分達のビジネスは鉄道だ」と考えており、鉄道の延長線上でのみ事業を考えていました。その結果、同じ「輸送する」自動車やバスに負けたのでは、とレビット氏は述べています。

もし、鉄道会社が自分達の事業ドメインを「輸送」と据えていれば、ニーズの変化を取り入られ、追随する事業に負けなかったでしょう。

日本企業にみる成功事例

一方、上述の日本企業 NECは、1970年代という早い段階でコンピュータと通信技術の融合に注目しており、自社の戦う領域を「C&C (コンピュータ&コミュニケーション)」と定義しました。その後本業だった通信事業から、コンピュータや半導体事業に進出しました。

この判断が功を奏し、NECは情報社会の発展とともに、ネットワークコンピューティングの重要企業として認知され、大きな躍進を遂げました。どこよりも早く事業ドメインを明確にしたことで大きな利益を得たわけです。

事業ドメインを決める「CFT分析」

事業ドメインの事例について説明しましたが、実際に企業が正しく事業ドメインを設定するには、どうすればよいのでしょうか?

有名な手法として知られているのは、CFT分析というフレームワークです。これは経営学者のデレック・エイベルによって提唱されたものです。彼は、事業ドメインの定義を、「顧客(Customer)」「機能(Function)」「技術(Technology)」の3つの要素が重なった範囲であるとしました。

簡単にいえば、事業ドメインとは「誰に(顧客)」「何を(機能)」「どんな方法で(技術)」提供するか定義したものとのことです。以下でそれぞれの要素について解説します。

SWOT分析も事業ドメインを決める際に用いられることがあります。

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顧客(Customer)

誰に対して価値を提供するのかを、年齢や性別、志向などに基づき分析し、規定します。言い換えれば、自社にとってふさわしい顧客を明確にすることです。

自社の商品で問題を解決できる人々はどういう層か、どんな人々のニーズを満たせるのかなど、市場を客観的に分析して把握します。

機能(Function)

顧客に提供する価値は何かを規定します。つまり、自社商品を使って顧客にどんなベネフィットを与えられるか明確にします。

「機能」はドメイン定義にあたってもっとも重要であるといわれています。自社の強みを活かしつつ差別化された機能を選択しましょう。

技術(Technology)

最後に、「機能」の実現方法について規定します。どんな独自技術によって、その商品やサービスを提供するのか分析し、特定します。

「技術」は強みを発揮しやすい部分です。たとえば、他社に真似できない配送インフラをもっているならば、商品を顧客に早く届けるサービスで差別化できます。

事業ドメイン設定のポイント2つ

続いて、実際に事業ドメインの設定で意識すべきこと2つについて解説します。

強みを生かす

事業ドメインは、強みを生かせる領域に定義することが重要です。得意とする分野を理解し、選択しましょう。ただし、他社と差別化できるかはしっかり検討してください。

事業には相応の経営資源が必要なので、資源を効率的に運用でき、高いリターンの期待できる領域でなくてはいけません。

狭すぎず広すぎず

事業ドメインを適度な範囲に設定することも重要です。広すぎると経営資源の不足につながり、経営できなくなります。逆に狭すぎると、すぐに市場の発展が止まり、長期的な成長が難しくなります。

また、現在の視点からだけでなく、3~5年後を見越したドメイン設定が重要です。将来を見越して、複数の事業ドメインで経営が必要なケースもありますが、それでも過度な多角化は避けましょう。また、展開する事業同士はシナジーをもつよう心がける必要があります。

事業ドメインの適切な設定

企業成長のカギともいわれる事業ドメインについて、基本的な点を解説しました。

事業ドメインを的確に設定することで、なすべき事業を正しく認識できます。社員も強みを生かしやすく、生産性の高い仕事ができます。現在の状況とともに、将来の展望を見据え、じっくり検討しましょう。

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