日本の有休取得率、有休取得日数「世界19か国で最下位」がやばい本当の理由

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記事の情報は2018-12-13時点のものです。

12月10日、エクスペディアが発表した【世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018】 によると、日本の有休取得率、有休取得日数ともに世界19か国で最下位だった。特に有給取得率の世界最下位は3年連続。2019年4月に有給休暇取得の義務化を控えて、日本人が休まない本質的な課題を探ってみた。
 日本の有休取得率、有休取得日数「世界19か国で最下位」がやばい本当の理由

日本の有休取得率は3年連続で世界最下位

引用:プレスリリース

12月10日、エクスペディアが【世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018】を発表した。同調査は、2018年9月にインターネットで計11,144名/19ヶ国を対象に実施。毎年実施されており、昨年も有給休暇取得率が2年連続で世界最下位だったと話題になった。しかし、今年は3年連続で最下位を更新。世界19ヶ国の中で3年連続最下位の50%という結果だった。

有給休暇取得率は、有給支給日数を取得日数で割ったもの。ワースト2位のオーストラリアでも70%で、日本の50%は世界的にみても圧倒的に低いことがわかる。

日本の有休取得日数も世界最少の10日間

引用:プレスリリース

日本は有給休暇取得日数も、世界最少だった。1年間で10日しか有給休暇を取得していない。しかも過去5年間、ほぼ横ばいだ。グローバルで注目されつつある、出張に合わせた休暇取得「ブレジャー(ビジネス+レジャー)旅行」など、はるか遠くの話なのだ。

ちなみに、1年間で有給休暇取得日数が10日という世界最少は、日本とアメリカとタイの3か国だった。とはいえタイは、そもそも支給日数が10日で取得率は100%なのだから、日本とは事情が全く異なるだろう。

対して、フランス、スペイン、ドイツ、ブラジルは年間30日支給される有給休暇を、きっちり30日取得している。全体的にヨーロッパ諸国は有休取得日数、有休取得率が高い傾向にあることが改めて確認された。

日本は、有休取得日数が低い傾向にあるアジア諸国のなかでも、日本は他のアジア諸国と比べても「休みを欲していない傾向」が浮き彫りになったという。詳しく見てみよう。

日本人は有給休暇を取得したくないのだろうか?

引用プレスリリース

「自分は今より多くの有給休暇をもらう権利がある」と考える人は54%だ。これは世界で最も低い結果だった。有給休暇をもらっていないにも関わらず、もっともらえるはずだと主張していない点は、特筆すべき日本の特徴といえる。

引用プレスリリース

また、休み不足を感じるかという質問に対しても、休み不足を感じていると回答したのは53%にとどまっている。各国と比べるとこの割合は低めだ。日本人は休みを取れていないにも関わらず、休みたがってはいないようだ。

なぜ、日本人は有給休暇を取得できないのか

引用:プレスリリース

日本人は、なぜこんなにも休みたがらないのだろうか。最大の理由は昨年までと同様、人手不足だ。それから、急な用事や病気などの緊急時のためにも取っておくという。今年は、「仕事する気がないと思われたくない」という理由もランクインした。

引用:プレスリリース

また、有給休暇の取得に罪悪感があるかどうかの質問では、日本人の58%が「ある」と回答。日本は、有給休暇の取得に対して最も罪悪感を感じる国なのだ。

他国を見ても、有給休暇を取得していない国ほど罪悪感を感じている傾向にあるという。しかし、周りの目が気になって、みんなが休まないから自分も休まない。そんな負のスパイラルが懸念されるのは、日本独特の状況といえそうだ。

日本の有給休暇取得率「世界最下位」がやばい本当の理由

同調査によると、40代以下がもっと休みたいと感じているのに対して、50歳以上の役員・管理職クラスが休みたがっていないのだ。しかも、部下の有休取得に協力的ではない。

引用:プレスリリース


引用:プレスリリース

いま50代以上の方といえば、バブル崩壊前に働き始めた、"滅私奉公"が美徳とされる若者時代を送っている。かの有名なキャッチコピー「24時間戦えますか」の1991年頃には、脂ののった戦士として活躍していただろう。

上司(おそらく社長や役員クラス)が率先して有給休暇を取得しない、休もうとするといい顔をされないために、部下が休みたくても休めない、そんな現状は一目瞭然だ。

けれども、犯人探しをしても、いくら上司を批判しても、仕方がないのではないだろうか。大切なのは、有給休暇取得に対する世代間の意識のズレを、まずは認識することだ。なぜ有給休暇の取得に協力的ではないのか、上司の立場にも立って考えてみることも必要だ。そのうえで、そうはいっても絶対に休みたいときには計画的に休めるよう、まずは合理的に自助努力をすべきなのだ。

2019年4月には、有給休暇取得の義務化がスタートする。従業員(対象者)が全員、有給休暇を1年で5日取得できるよう企業側には時季指定が義務付けられる。違反した場合、会社には30万円以下の罰金が科せられる可能性もある。

ぜひ、これを"好機"ととらえ、50代以上の方々は有給休暇取得を好意的に捉え直してみてほしい。それ以下の年代の方々も、どうすれば休めるのかを上司も含めてチームで協働し、現実的に考えるきっかけとして活用してみてはいかがだろうか。

そして最後に、日本の有休取得率・有休取得日数「世界最下位」が示す、日本企業の本当の"やばさ"とは、世代間の溝が企業の成長をも阻んでいるのではないかという点を指摘したい。

50代以上と40代以下との間には、明らかに「溝」があると考えられる。(もちろん、40代以下の世代においても、ゆとり世代、ミレニアル世代、などさまざまな世代特性およびジェネレーションギャップはある。)

この世代間の認識のズレ、下の世代の意見や希望が通らない壁が、有給休暇取得にとどまらず、新たなツールの導入、業務の進め方や業務の削減、会議の在り方から、ダイバーシティの推進、デジタルトランスフォーメーション、ビジネスモデルの転換に至るまで、企業の新陳代謝と成長を阻んでいるとしたら、有給休暇なり残業削減なりの具体的な課題に向き合うことで、世代間のジェネレーションギャップを埋めていくことが最も重要といえるのではないだろうか。