3大キャリア8割、格安SIM頭打ち - 5Gと楽天はモバイル市場を動かすか

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記事の情報は2019-01-28時点のものです。

2018年の日本モバイル通信市場は、ドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクをあわせた3大キャリアがシェア約8割。MVNO(格安SIM)は微増も比率は昨年と大きく変わらない。ところが2019年は激動の年になりそうだ。5Gによる超高速通信が始まるほか、楽天が携帯キャリア事業をスタートし3大キャリアに切り込む。ユーザーはキャリアに何を期待し選択するのだろう。デロイトが発表した「世界モバイル利用動向調査2018」から現状を読み解く。
3大キャリア8割、格安SIM頭打ち - 5Gと楽天はモバイル市場を動かすか

2019年、5Gと楽天がモバイル通信市場を変える?

日本のモバイル通信市場は、長らくNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクという移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)、いわゆる3大キャリアの寡占状態にあった。最近は、自社ネットワーク設備を持たずMNOの通信網を借りてサービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)が増え、3大キャリア以外の「格安スマホ」を利用する消費者も珍しくなくなり、市場の環境が変化しつつある。

2019年は、秋に次世代の5G通信サービスが開始され、10月に「楽天モバイル」ブランドでMVNOサービスを展開している楽天がMNO市場へ参入するなど、日本のモバイル通信市場が大きく変化する年だ。特に5Gは、現在のLTEと比べケタ違いに高速、低遅延、大容量な通信技術であり、我々の生活を一変させる可能性を持っている。

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これから数年でどう変わるかを予想して備えるには、現状を把握することが大切だ。そこで、デロイト トウシュ トーマツが公開した「世界モバイル利用動向調査 2018」から、日本のモバイル通信市場に関する結果をピックアップしよう。

世界と日本のモバイル通信市場

デロイトは、2018年7月から8月にかけて35の国と地域でオンライン・アンケートを実施し、その結果をまとめた。日本はほかの国より各スマートデバイスへの関心が薄く、従来型携帯端末、いわゆるガラケーやフューチャーフォンの利用率も高めだった。

ガラケーユーザー多い日本

日本におけるモバイル機器ユーザーの割合は、スマートフォンが61%、従来型の携帯電話が17%で、携帯電話ユーザーの減少分がスマートフォン利用者の増加につながったという。

ただし、ほかの国々に比べてスマートフォン利用率が低く、携帯電話の利用率が高い。英国、中国、オーストラリアのスマートフォン利用率は8割から9割程度ある。モバイル機器全体の利用率も、日本は85%と高くない。

日本

  • スマートフォン:61%
  • 従来型の携帯電話:17%
  • 両方:7%
  • 84%合計:85%

英国

  • スマートフォン:80%
  • 従来型の携帯電話:7%
  • 両方:8%
  • 合計:95%

中国

  • スマートフォン:89%
  • 従来型の携帯電話:1%
  • 両方:7%
  • 合計:96%

オーストラリア

  • スマートフォン:84%
  • 従来型の携帯電話:7%
  • 両方:5%
  • 合計:96%

カナダ

  • スマートフォン:73%
  • 従来型の携帯電話:9%
  • 両方:5%
  • 合計:87%

出典:デロイト トウシュ トーマツ / 世界モバイル利用動向調査 2018

スマートデバイスへの感度も低い

デロイトは、PCやタブレット、電子書籍リーダー、スマートウォッチ、仮想現実(VR)ヘッドセットなどについても調べており、日本の使用率はおしなべて低い。携帯型ゲーム機の利用率がやや高い程度で、デロイトは「(日本は)スマートデバイスに対する感度が低い状況が続く」と指摘した。

こうした状況は、ますます高速にICT化の進む世界で足かせとなる。たとえば、利便性向上や経済発展などの面で期待されているスマートシティでは、スマートフォンに代表されるスマートデバイスがインターフェースになる。そうしたデバイスの普及度が低く、慣れていない消費者が多いと、スマートシティ導入の足を引っ張りかねない。

格安スマホ(MVNO)を選ぶ若者たち

楽天の参入を見据え、国内MNO/MVNOサービスについて状況を確認しておこう。

各サービスの利用シェアは、ドコモが34%でもっとも多く、KDDI(au)の25%、ソフトバンクの18%と続く。これら3キャリアが全体の77%を占め、各キャリアのシェアは前年と大差ない。

3大キャリアに続くのは、ソフトバンクのサブブランドである「ワイモバイル」の6%だ。また、MVNOの利用シェアは15%で前年の12%から増えているが、デロイトは「MVNO事業者の成長も踊り場を迎えている」とした。

出典:デロイト トウシュ トーマツ / 世界モバイル利用動向調査 2018

3大キャリアの牙城を崩しきれないMVNOサービスだが、「若年層での存在感を示している」そうだ。全体で15%にとどまっているMVNO利用率が、18歳から24歳に限ると24%あり、若年層の他年代との違いが目につく。3大キャリアでなくMVNOを選ぶ現在の若年層が年齢を重ねて行くと、モバイル通信事業者の力関係に影響を及ぼすだろう。

出典:デロイト トウシュ トーマツ / 世界モバイル利用動向調査 2018

消費者がキャリアに期待すること

消費者が各モバイル事業者を選ぶ際に重視しているサービスは何だろうか。MVNOなどを選ぶ人はキャリアに何を期待するのだろうか。

MVNOユーザーは月額料金重視

3大キャリア利用者とその他ユーザーとのあいだで目立つ相違は、その他ユーザーは月額料金とネットワーク品質を重視し、追加サービスへの関心が低いこと。

具体的には、「自分にとって非常に重要」な項目として「月額料金」を選んだ人はその他ユーザーが76%、3大キャリア利用者が65%、「4G/LTEネットワークが利用できること/その品質」を選んだ人はその他ユーザーが32%、3大キャリア利用者が23%といった具合だ。「追加サービスが利用できること」については、その他ユーザーの76%、3大キャリア利用者の66%が「自分にとって重要でない」とした。

MVNOユーザーは端末にこだわらない

またその他ユーザーは、3大キャリア利用者に比べ使用する端末にあまりこだわらないらしい。「希望する携帯電話が入手できること」を「自分にとって非常に重要」とした人の割合は、その他ユーザーが25%、3大キャリア利用者が32%だった。MVNOなどを選ぶ消費者は、事業者側から提供される端末に限定されず、自分でSIMロックフリー端末を入手して利用するという人が多いのかもしれない。

出典:デロイト トウシュ トーマツ / 世界モバイル利用動向調査 2018

実際に端末の入手方法をみると、3大キャリア利用者とその他ユーザーの違いが際立つ。使用しているスマートフォンの入手方法を尋ねたところ、「店舗」という回答は3大キャリア利用者が多く、「オンライン」はその他ユーザーが多かった。

<店舗で入手>

  • 3大キャリア利用者:77%
  • その他ユーザー:45%

<オンラインで入手>

  • 3大キャリア利用者:12%
  • その他ユーザー:47%

出典:デロイト トウシュ トーマツ / 世界モバイル利用動向調査 2018

3大キャリアユーザーは店舗を好む

3大キャリア利用者が店舗を好む傾向は、ほかの調査項目にも現れている。3大キャリア利用者の多くは契約更新や端末購入などで店舗を訪れる割合が高く、この種の目的でウェブサイトを利用することが少ない。新しい端末の情報入手も、店頭で行う人が比較的多かった。

何らかの問い合わせはウェブサイトで済ます3大キャリア利用者が多いものの、3大キャリアにとって店舗が重要なタッチポイントである状態は当分続きそうだ。

5Gへの関心はMVNOユーザーの方が高い

さて、2019年にも始まる5Gへの関心の高さは、3大キャリア利用者とその他ユーザーで異なるだろうか。

5G導入の重要度を質問したところ、「非常に重要」と「ある程度重要」の合計は、3大キャリア利用者が56%、その他ユーザーが57%で大きな差はない。

そして、5G利用時に追加料金が必要だとしたら、3大キャリア利用者の47%、その他ユーザーの45%が「支払いたいと思わない」と答えた。逆に追加料金を支払ってもよいと考える人の割合は、3大キャリア利用者が44%、その他ユーザーが49%で、5Gに対する関心は後者の方がやや高い。

ただし、その他ユーザーが追加して支払っても構わないとする料金は、3大キャリア利用者より安い価格帯に寄っており、デロイトは「MVNO等の契約者の価格感度は高いが3キャリア契約者よりも積極的」と分析した。

出典:デロイト トウシュ トーマツ / 世界モバイル利用動向調査 2018

今後、消費者向け5Gサービスの展開方法や料金体系を決める際には、このようなユーザーの特性を十分考慮する必要があるだろう。

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