「ワークルール研修」が新入社員の早期戦力化に役立つワケ

「ミスを繰り返したので強い口調で注意したら、パワハラだと言われた・・」春は、新入社員の扱いに苦慮する企業から、そんな話をよく耳にする時期です。今回は、ワークルール研修を通じて新入社員の働く基盤をつくり、早期に"戦力化"するためのポイントをまとめました。

「ワークルール研修」が新入社員の早期戦力化に役立つワケ

ワークルールをどのくらい知っているのか?

2018年11月に日本労働組合総連合会が行った「20代のワークルールに関する意識・認識調査」によると、20代社員の60%以上が働くときに必要な法律や決まりごと(ワークルール)について学ぶ機会がなかったと回答しています。

会社の規模によって、ワークルールを学ぶ環境に違いはあるものの、多くの企業がなんらかの形で新入社員研修を行っています。ビジネスマナーや社会人の心得を学ぶ機会を設けている、会社の組織や就業規則についても数時間の時間を割いて説明しているというケースは多いように見受けられます。

パワハラに対する正確な理解度も低い

それにも関わらず、調査結果を見ると、例えばパワハラに対する理解度はかなり低いことが分かります。「パワハラやセクハラなどのハラスメント行為は法律で禁止されているか?」という問いの正答率はたった7.3%でした。

「こういう行為がパワハラに該当する」という例示はあっても、どこまでが業務上の指導にあたるのか一概に判断できるものではなく、ハラスメント行為を直接禁止する法律はまだありません。このことについて、20代の大多数が認知しておらず、背景や理由を問わず、「強く叱責された=パワハラ」といった誤った理解を生んでいます。

ほかにも、「働くときに必要な法律や決まりごとについて、どのようなことを知りたいと思うか」という質問への回答では、「給料に関すること」が最も多く65.5%にものぼりました。自分の給与についてわからないことを抱えている20代が思いのほか多いようです。

ワークルールを知らない弊害とは?

働くときに必要な法律や決まりごとを知らないままでは、仕事で壁にあたったときに自己成長から目をそらしたり、他責に逃げてしまうことにつながりやすいと感じています。安易な転職もそのひとつ。「もっと待遇がよい会社に勤めたいから」と退職を考える方は多いですが、ワークルールを知らないことは多くの危うさをはらんでいます。

(1)近親者の情報にとらわれてしまう

「姉は子供が3歳になるまで育休をとっていたのに、なぜ自分の会社は2歳までしかとれないの?」など、近親者や友人の会社と比較して、自分が勤める会社の待遇に不満を持ち、もっといい会社があると安易に気持ちが外に向いてしまう可能性があります。

(2)ネットやニュースの偏った情報にとらわれてしまう

世の中には、“休日も働かせる会社はブラック” “定額残業手当は悪”といった誇張された情報が溢れています。ブラック/ホワイトなどの言葉に敏感になりすぎて誤った認識に陥り、会社に対してネガティブな印象を抱き、無意味にモチベーションを下げてしまう場合があります。

(3)うわべの待遇にとらわれてしまう

「子供も生まれるし、もっと稼ぎたいので知人がはじめた会社に転職します!給料も5万円上がります!」と嬉しそうに話す20代の方の話をよくよく聞いてみると、個人事業主の会社で社会保険はなく、退職金制度もないということがありました。それを理解したうえでチャレンジしたいと思っているなら良いのですが、今の会社より待遇がよい!とうわべの待遇に飛びついてしまうのは考えものです。

ワークルールを知ることは、客観的な自己理解につながる

30代、40代と転職や経験を重ねて、新卒で入った会社の待遇がいかに恵まれていたかを客観視できるようになったという話はよく耳にします。実際のところ、小さな会社でもあっても魅力的な待遇の確保や働く環境の整備に力を入れている会社はたくさんあります。ですが、基本のワークルールを知らないために、社員にはその魅力や価値が伝わっていないケースが意外と多いのです。

自分の勤める会社、つまり自分に与えられた環境や待遇が、法律や世の中の常識と比較してどうなのか客観視できると、自分の市場価値を客観的に評価したり、自分が本当に求めている就労条件を明確に把握できるようになるのではないでしょうか。自律的な働き方、キャリア構築を促すためにも、ワークルールを知る機会を設けることは効果的なのです。

ワークルール研修で不足しがちな観点とは

多くの会社で新入社員研修の機会を設けているにも関わらず、ワークルールを学ぶ機会がなかったと回答する20代が多いのは、必要な観点がすっぽり抜けてしまっているからだと考えます。

社会人の基礎といった外部研修を通じてビジネスマナーや働く意義について学び、自社の就業規則を説明する機会を通じて会社のルールについて学んでいても、ワークルールについて学んだとは言えません。新入社員の多くは、いきなり労働条件通知書や就業規則の中身の説明をされ、会社が守ってほしいことや会社の福利厚生について話を聞いても、ただなんとなく聞いているに過ぎないようです。

それは、会社のルールが世の中のルールと比較してどうか?という、客観的な視点が抜け落ちているためです。

ワークルールのすべてを教えることは難しいですが、例えば自社が適用している変形労働時間制のしくみについて説明する、社会保険のしくみについて説明するだけでも視野が広がり、法律や決まりごとと自社のルールとの関係性も見えてきます。

社会一般的なルール全体のなかで、自社のルールはどういう特長があるのか(あるいは無いのか)を、新入社員が自分の頭で考えて評価できることをゴールとして、研修を実施してみてはいかがでしょうか。

ワークルールの理解を促進するコツ

ワークルールに対する理解を深めるためには、新入社員にとって自分事になるきっかけが必要です。

私は毎年、新入社員を対象に給与明細を通じて自分の待遇を知るための講座を実施しています。同じ初任給でも、手当や交通費などによって手取りは異なるので、講座ではひとりひとりに社会保険料や税金を引いた自分の手取りがいくらになるのか試算してもらっています。

これは非常に有効です。試算を通じて、自分の額面給与と手取り金額との差分にあるものを実感することができるため、そこではじめて社会保険や税金の中身に興味を持つことができ、どんなときにいくら残業代がでるのかも興味をもって話を聞いてくれるようになります。

また、せっかく2年目で昇給しても、6月から住民税の徴収が始まって手取りが下がった=給料が下がったと短絡的にとらえてしまう、あるいはそこに疑問を感じつつも聞けずにもやもやしているという20代社員は多いものです。早い段階から社会保険や税金のしくみをざっくりとでも知っていれば、余計な雑念にとらわれず、もっと評価されるにはどうしたらよいのか?と、自律的な働き方やキャリア構築に目を向けることができます。

また、これはワークルールの研修に限らずですが、配属先の上司や先輩社員にも新入社員研修でどんなことを教えたのか資料やスケジュールを共有しておくことも忘れてはなりません。人事と現場の情報共有がなされていないと、せっかく学んだこともリセットされまぼろしの研修期間になってしまう恐れがあります。人事と現場で上手にパスを回し、研修を通じて学んだことを、現場の仕事と重ね合わせてもう一度伝えることで、研修で学んだことはようやく活きてくるのです。

新入社員の早期戦力化を目指して

ワークルール研修は、新入社員研修の段階から職種を問わず実施することができ、研修を通じて自立型人材を育てる一歩としても期待できるものです。

法律や就業規則はコロコロと変わることがない分、毎年ルーティンの内容になってしまっているという会社は少なからずありますし、新入社員の印象を聞くと「受け身の若手が多い」と言われることも多いのですが、会社が一方的な研修を提供し、その姿勢を助長してしまっているケースもあるのです。

ワークルール研修が新入社員の早期戦力化に役立つという点に着目して、人材育成ツールのひとつとして活用することをおすすめします。特に2019年4月、有給休暇取得の義務化残業時間の上限規制高度プロフェッショナル制度などの働き方改革関連法が施行されました。ワークルール研修を見直す、よいタイミングではないでしょうか。

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