残業時間の上限 - 法律で100時間未満へ規制 | 残業代の計算方法
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残業時間の法改正とは
平成30年7月6日に公布された働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律で、残業が45時間を超える月であっても次の要件は最低限満たすよう規定されました。
- 年720時間以内の残業
- 月45時間を上回った月の残業が平均80時間以内
- 月100時間未満の残業
これにより、いままでは残業を青天井に課せられていた職場でも、上記規定の範囲内にて残業するよう制限されます。
残業時間の上限
法定労働時間の上限
労働基準法第32条では、法定労働時間は1日8時間かつ1週間40時間が上限であると定めています。ただし同じ残業であっても法廷労働時間を増やす残業と、法定労働時間をこえて働く残業があるので注意しましょう。
たとえば、1日の労働時間が7時間と定められている会社の場合、1日8時間を超えない残業は法定時間内労働とされ、法定時間外労働にはカウントされません。
36協定(サブロク協定)での上限
労働基準法36条では、労使協定の締結と労働局への届出を行えば法定労働時間を超える残業を許可すると認めています。ちなみに36協定とは、労働基準法36条で定められた協定の略称です。
36協定では、法定時間外労働の上限を1か月45時間、1年360時間と定めています。具体的には次表のとおりです。
期間 | 残業の上限(一般の労働者) |
---|---|
1週間 | 15時間 |
2週間 | 27時間 |
4週間 | 43時間 |
1か月 | 45時間 |
2か月 | 81時間 |
3か月 | 120時間 |
1年間 | 360時間 |
※ 時間外労働・休日労働に関する協定届 労使協定締結と届出の手引をもとに編集
さらに、特別条項を36協定へ追加することで、年6回を限度として、月45時間の上限を上回り、協定で設定した時間まで残業時間を延長可能です。従来は特別条項次第で6か月は無制限に残業できたものの、後述の働き方改革関連法案により残業時間に規制がかかっています。
働き方改革関連法案での上限
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律により、36協定の特別条項であっても次の条件を満たす必要が出てきました。
- 年720時間以内の残業
- 月45時間を上回った月の残業が平均80時間以内
- 月100時間未満の残業
いままでは、年6回は無制限に残業時間を伸ばしても問題ない規則であったのに対し、この規定では残業時間を拡大した場合においても上限が存在します。
法改正前の制度
法改正後の制度
2024年まで猶予のある事業
これらの規制は大企業で2019年4月から、中小企業で2020年3月から施行されています。ただし次の事業は上限の規制が2024年まで猶予されています。詳しくは「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」にて確認してください。
- 建設事業
- 自動車運転の業務
- 医師
- 鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業
残業時間による基準
残業時間別にどのような基準があり、どの法律と照らし合わせるべきなのか解説します。
45時間:36協定の上限
月45時間の残業は、36協定における上限と重なります。企業は原則45時間以上の残業をさせてはいけません。ただし、特別条項に特定の事項を記載している場合は、1年のうち6か月だけは下記の80時間や100時間にまで延長できます。
80時間:働き方改革関連法案の上限平均(過労死ライン)
月80時間の残業は、45時間を上回る月の年平均が超えてはいけない数値です。36協定の特別条項を記載したとしても、平均して月80時間以上働かせることは禁止されています。また、月80時間を超える労働は過労死ラインと呼ばれることもあり、注意したい残業時間だといえるでしょう。
厚生労働省によると、脳・心臓疾患にかかる労災認定基準において発症前2か月間、ないし6か月間にわたって1か月あたり80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合、業務と発症の関連性が高いとしています。
100時間:働き方改革関連法案の上限
月100時間以上の残業は、36協定の特別条項をもってしても規制されます。そのため月100時間以上を残業している場合は、管理職をはじめとした特殊なケースを除き違法だと考えて差し支えないでしょう。
残業代の計算方法
1. 法定時間内労働と法廷時間外労働に仕分け
法定時間内労働と法廷時間外労働では、残業代の計算方法が異なるためいずれに該当するのか分類が必要です。1日8時間か1週間40時間に収まる残業は法定時間内労働、収まらない残業は法定時間内労働として分類します。
2. 月給を時給に換算
つづいて月給を時給に換算します。時給は次の式にて計算されます。ここにおける月の基本給とは、通勤手当や家賃手当といった控除を考慮しない場合の金額です。
たとえば、月の基本給が40万円、所定労働時間が160時間の場合は時給が2,500円となります。
3. 法定時間内労働の残業代を計算
法定時間内労働の残業代は、次の式で計算されます。法定時間内労働は、法定時間外労働と異なり割増賃金が発生しません。
時給2,500円相当の方が法定時間内労働を40時間した場合、5万円が残業代です。
4. 法定時間外労働の残業代を計算
法定時間外労働は次の式によって計算されます。
ただしどのような残業かによって割増賃金が異なるため、まずは法定時間外労働の中でもどれに該当するのか確認しましょう。
残業の種類 | 倍率 |
---|---|
通常の残業 | ×1.25 |
月60時間を超えた分の残業 | ×1.50(※) |
法定休日の残業 | ×1.35 |
(※中小企業では2023年まで適用に猶予があります)
深夜の残業はこれらの倍率に1.25倍を加算します。たとえば通常の残業が深夜に行われていた場合は、1.25+1.25で1.50倍の割増賃金が発生します。これらをまとめて計算すると、次のように計算されます。
例:通常の残業20時間、深夜の残業が10時間の場合
= 2,500円 × 20時間 × 1.25 + 2,500円 × 10時間 × (1.25 + 1.25)
=62,500円 + 37,500円
=100,000円
5. 残業代の合計
最後に法定時間内労働と法定時間外労働の金額を足し合わせます。
みなし残業の計算
みなし残業を支給している会社や、別の手当ての名目で残業代が含まれている会社は別途計算が必要です。そのような場合には、そのみなし残業代が法定時間外労働のどれくらいに相当するのかを把握しておきましょう。
10時間の残業に相当するみなし残業を規定していれば、残業の有無にかかわらず10時間の残業代をもらえます。また、10時間を越えた残業については別途時間外手当が支給されます。
みなし残業について詳しく確認したい方は、次の記事を参考にするとよいでしょう。
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