厚労省の「労働基準法改正案」を読み解く、2019年残業や休日の働き方はどう変わる?

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2019年の法改正実施を目指して審議が進められている「労働基準法改正案」。2017年秋の臨時国会に提出される予定だったが衆議院解散の波にのまれて一時的に議論が中断していたのだが、2018年の通常国会で本格審議が再開している。労働基準法改正案の概要とポイントをおさらいしておこう。

働き方改革案その4:同一労働同一賃金実現へ

正社員と非正規の賃金格差も、隠れた問題となっていた。労働契約法が改正され、職務内容が同一の場合は、賃金に差をつけないことも明記された。

ただし、これは、雇用の流動化とセットでなければ意味がないと考えられる。企業が非正規雇用を雇うのは、景気に業績が左右された場合の雇用調整弁としての役割を非正規従業員に押し付けているという現状があるからだ。

解雇規制の緩和と雇用の流動化を伴わない同一労働同一賃金は、職務内容に差をつけ、正社員にはキャリアアップになる仕事を、非正規労働者には単純労働を与えることにつながり、根本的な格差の是正にはつながらないと考えられる。大切なのは、労働者全般のスキルアップと賃金上昇だ。

同一労働同一賃金についてはすでにガイドライン案が発表されている。これをもとに以下の記事では、正社員と非正規との待遇差がどこまで容認されるのか、給与、賞与、福利厚生のポイントをまとめた。

働き方改革案その5:パートなどの非正規労働者も労働法改正へ

パートタイム従業員には、パートタイム労働法がある。そちらも一部改正され、正社員とパートタイム従業員の間における合理性に欠けた待遇差が是正されることとなる。

賃金が見直され、非正規労働者の賃金が仮に2%以上アップした場合、キャリアアップ助成金などを受給できる可能性があるため、パートタイム労働者が従業員の要である中小企業にも、効果的だと考えられる。

2018年春には、有期雇用契約で通算5年働いた方が無期雇用への申込が可能となる、「無期転換」が始まります。企業からすると申し込みがあったら断ることができない一方で、申し込みがなければそのまま有期雇用の継続も可能。改めて、パートタイムやアルバイト、派遣といった非正規雇用労働者の在り方が問われる。

2017年12月頃より、「派遣切り」「非正規切り」の話題がにわかに増え始めた。企業とパートタイマーや派遣など非正規、お互いに良い関係を無期転換ルールについては労使ともに知っておくべきだ。

一方で、非正規の「正社員化」に戦略的に取り組む企業も増えている。ライザップ、クレディセゾン、アクセンチュア、イケア、モロゾフなど業態もさまざま。非正規雇用の在り方は、そもそも企業や事業の背景によって異なるものなのだ。そして働く側も、非正規雇用の在り方についての企業の考えを知り、働く条件を選べることが理想的ではないだろうか。

働き方改革、施行および今後の流れは?

これらの改正案は、2017年9月下旬に臨時国会に提出される予定だった。臨時国会開幕前に衆議院解散が発表されて宙に浮いた形となってはいるが、人口減が続く日本において働き方改革は待ったなしだ。

一方で法案が提出されたとしても、一筋縄では進まない。連合会長は特に高度プロフェッショナル制度に対して反対しており、同一労働同一賃金は良いが、専門職で残業規制が撤廃され残業代がゼロになるということを強く批判している。

中小企業の同一労働同一賃金は、今回の改正では盛り込まれないことが決まっている。労務に関して中小企業は追いついていないところがあり、一斉に適用するのは難しいとの判断からだ。

働き方改革はまだまだ難航が予想されるが、今回の労働基準法改正は、日本型雇用の大きな問題点であった生産性の低さ、すなわち長時間労働の是正につながる点では大きな一歩だ。罰則が設けられたことで、抑止力が働くことだろう。従来は議題にも上がらなかったことなので、一定の評価に値するものだと考えられる。

しかし、同一労働同一賃金で格差是正といっても、正社員と非正規社員の身分格差がある以上、根本的な解決にはならない懸念がある。日本型雇用では、日本人であること、男性であること、新卒から勤め勤続年数が長くなることなど、「本人の能力とは関係ない部分で、雇用の安定をはかってきた」といっても過言ではない。だがこれらは、グローバル経済の中では通用しない慣行なことはあきらかだろう。

ダイバーシティを実現し、高度な専門職を養成していくためにも、ここから一歩進んで、雇用の流動化にも踏み込む必要性がある。改革ののろしは上がったばかりだ。

(編集:藤川理絵)